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日本粉体工業技術協会 23年度事業計画
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会場内でのセミナーにも多くの聴講者が集まった(国際粉体工業展東京2022)
重点目標ベースに展開
23年度は長引くロシアのウクライナ侵攻、原材料やエネルギーコスト、物価上昇などの懸念材料がある一方、約3年半にわたったコロナ禍からアフターコロナへ移行しつつあり、前向きな投資やインバウンド(訪日外国人)需要の持ち直しなど明るい兆しが出てきつつある中、事業活動を本格化させる。
22年度から24年度までの「第3期中期運営計画」の中間年に当たる23年度は、引き続き①分科会活動の活性化②展示会の新しい展開③広報の改革④国際化の推進⑤組織の強化―の重点目標をベースに活動を展開する考えだ。
活動の中核を担う分科会は、産学官が協力し産業界に貢献する活動を進める。分科会を所管する分科会運営委員会では、分科会が将来の順調な発展につながる体制づくりを行い、組織や運営に関する充実化を支援する。
技術委員会関連では、3年目に入るAI技術利用委員会が引き続き粉体プロセスへの活用などを議論を重ね、収集した情報は国際粉体工業展でのセミナーで公開する。AIソフトウエア実習講座も開催し、会員企業へのAI技術導入を促していく。
広報・普及事業関連では、月刊誌「粉体技術」に会員のニーズを一層反映させるとともに、粉体関連分野に関わる一般読者に対しても幅広い情報提供を目指す考え。そのため、最新技術をテーマにした座談会や、現場で使える粉体入門講座などの新企画を立ち上げる。併せて、協会ホームページ(HP)の会員専用サイトでPDF版を閲覧可能にするなど、これまで以上に情報発信を強化する。さらに、サービス向上を目的にHPやメールマガジンの活用・改善、22年度に発行した「粉体技術総覧2022/2023」のウェブ版の活用なども進める。
人材育成・教育事業関連では粉体入門セミナー(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)のほか、粉体技術者養成講座を8講座開講する。粉体技術専門講座は晶析分科会が企画し、粉じん爆発・火災安全研修(初級基礎編)はウェブで開催する。
規格・標準化事業では、まず標準粉体委員会が4部構成のJIS(日本産業規格)原案骨子を作成するほか、MBP粒子(粒子径分布検定用粒子)の粒子径分布および不確かさを決定し、現状データとの比較検討を行う。また新旧の沈降天秤粒子径測定機の相関性が多くの粉体で確認されつつある中、1―16種(重質炭酸カルシウム)のみ合致していないため、再度確認し新たな測定装置への移行を完了する計画にある。
規格委員会は2件の継続JIS原案(Z 8827―2、Z 8831)を日本規格協会へ提出するとともに、3件のJIS原案作成委員会を立ち上げる。粒子特性評価委員会では米国での第64回ISO/TC24/SC4国際会議に出席し、国際規格作成に参画。10月には京都で第65回国際会議を開く。
集じん技術委員会は22年度に引き続き、「ろ布の帯電性能・難燃性能評価試験法」など3件の国際規格開発を進める。粉じん爆発委員会は粉じん爆発・火災安全研修(初級)および国際粉体工業展大阪2023の併催行事の「粉じん爆発情報セミナー」のプログラムを決め、実施に移す。
海外交流事業は相互協力契約に基づき、韓国での「KOREA CHEM」、米国・シカゴでの「iPBS」、中国・上海の「IPB」、ドイツ・ニュルンベルクの「POWTECH」に交換ブースを出展する。また国際粉体工業展大阪2023で海外情報セミナーを開く。
協会収益の一端を担う標準粉体製造頒布事業は22年度後半以降、コロナ禍からの回復が見られる。また22年度に委託加工企業からの要請を受け販売価格を平均15%値上げし、会員向け優遇価格を定価の20%に改定したことなどが反映し、23年度はコロナ以前の水準の売り上げを計画する。また新たな受発注販売システムの導入を予定し、より一層、顧客へのサービス向上や業務の効率化につなげる。
こうした各種事業に加え、23年度は10月11―13日の3日間、大阪市住之江区のインテックス大阪4、5号館で「POWTEX2023(国際粉体工業展大阪2023)」を開く。大阪開催は今回が15回目で、200社、600小間の出展規模を予定する。「未来をつくるPX(Powder-Technology Transformation)」をテーマに掲げる。21年の大阪、22年の東京に続きリアル展示会とともに会期前(9月27日)から会期後(11月10日)にかけてオンライン展示会を併設するハイブリッド方式となる。また今回初の試みとして会場内に設ける「PXステーション」を通じ、情報発信を強化する。
これまでの最新情報フォーラムを「PXフォーラム」に模様替えするほか、粉体機器ガイダンス、粉体工学入門セミナー、出展者が自社の製品・技術をアピールする製品技術説明会、シーズとニーズの出会いの場となるAPPIE産学連携フェア2023など多彩な併催行事も注目される。現在、大阪粉体工業展委員会を中心に内容の検討や準備を進めている。コロナ禍からの回復が進む中での開催となるだけに、盛り上がりを見せそうだ。
23年度 協会活動を語る/日本粉体工業技術協会 代表理事会長 牧野 尚夫 氏
「参加し活動できる雰囲気醸成」
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日本粉体工業技術協会代表理事会長 牧野 尚夫 氏
新型コロナウイルスの影響で活動には制約を受けてはいるものの、最近数年間では最も活気ある1年だったと思う。コロナ対策が進むとともに収束傾向にある中、例えば国際粉体工業展もリアルとオンラインのハイブリッド方式により、出展者はコロナ以前の約90%まで戻り、来場者数も回復した。展示会と並ぶ活動の柱である分科会や各種セミナーも従来の状況に戻りつつある。
本年度は22年からスタートした「第3期中期運営計画」の中間年に当たり、引き続き重点項目の分科会活動の活性化、展示会の新しい展開、広報の改革、国際化の推進、組織の強化を中心に活動を展開する。
21ある分科会はそれぞれの特徴を生かし、さらに参加者を増やしたい。現在の分科会の分野構成に対し、分野横断的な技術も重要になる。今後、合同開催を今以上に積極的に進め、幅広い活動につなげていきたい。
展示会は実績を上げてきたハイブリッド方式を10月の「POWTEX2023(国際粉体工業展大阪2023)」でも継続する。本方式は3回目となり要領も熟知したので、これまでの経験を基にさらに活性化したい。
国際化に関してはコロナの影響で本格的に動けなかったが、海外機関からは従来に戻したいとの意向が出始めた。一気には難しいが、徐々に回復させていく。その上で、さらなる関係強化を考えたい。
こうした状況下でも幸い会員数は着実に増加するなど堅調に推移しているが、本来ならもっと増えていいと思う。産業界で粉体が関連する分野は多いが、粉体の重要性が十分に伝わっていないことを痛感する。会員の主体は粉体機器・装置メーカーだが、すそ野の広い粉体ユーザーの加入を増やしたい。機器・装置開発はユーザーからの要望がベースになることも多く、取り組みを強化していく。
協会の今後の発展には、粉体の重要性を広く伝えることが大事だ。重要と思われる分野では分科会新設や技術委員会での検討なども必要になる。新たな分野開拓は会員増につながるだけに、さまざまな観点から情報収集に力を入れる。
組織の強化には、個々の会員の活動も重要となる。多くの会員に積極的に協会活動に参加してもらいたい。特に企画や運営までの深い関わりを期待する。活動内容の価値を知っていただくことで、より参加への意義は高まる。積極的に意見を出してほしい。全てを実現できるわけではないが、一つでも実現すれば距離感が縮まる。そうした雰囲気の醸成に努め、“より参加しやすい、参加した上で活動したくなる協会”を目指す。
広報の改革もその一環で、ホームページやメールマガジンの刷新に加え、月刊誌「粉体技術」も重要なツールである。入門レベルの記事掲載や高校生の自由研究を紹介する企画も始まった。次代の担い手育成も今後の発展に向け積極的に進めたい。
10月に大阪で開くPOWTEX2023は、ハイブリッド方式をさらに工夫し、出展者、来場者ともに一層有効に使える方法を考えた上で、効果的なPRにつながる取り組みを進めたい。展示会は粉体をより広く世の中に知らせる好適な場なので、粉体技術のすそ野拡大に向け、粉体を知ってもらえる機会になるよう努めていく。