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粉体プロセス 活躍の場広がる
粉体プロセスが次世代電池製造分野で注目が集まっている。特に全固体電池は電気自動車(EV)時代の到来から、開発・実用化への取り組みが続く中、固体化した電解質に優れた界面を生成するため、微小粒子をコーティングする際に表面改質技術が必要になる。
その上で、粉体層を積層するだけに、三層構造をどう作製するかが重要だが、乾式粉体では粒子径分布が影響するほか、圧力によって粉体の均質化に差が生じる。技術だけではなく、扱う材料の開発、検討も今後の展開のカギを握ることになる。
一方、粒子スケールの微小化が進んで久しく、ナノスケール(ナノは10億分の1)粒子の実用化も著しい。もともと粉体自体の粒子挙動は多様・複雑であったが、微小化によってさらに扱いの難易度が高まっている。
それだけにモデル化が難しいとされてきたが、ここに来てコンピューターやソフトウエアの進展からシミュレーション技術が向上したことを受け、複雑な現象解明につながり始めている。今では装置設計にまで応用範囲は拡大しており、周辺技術の開発と相まって、今後も利活用が進むと思われる。
機器・装置の動きでは、自動化・ロボット化のほか、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の採用・導入も活発化しつつある。また粉体プロセスのベースとなる粉砕や分級、乾燥工程を担う装置でも、粉砕と分級の間に分散ゾーンを設けて装置内での粉体の凝集による“詰まり”を防止し、しかも1台で3工程をカバーすることで省スペース化につなげた乾式ビーズミルが登場している。
乾燥工程では無風オーブンを活用して粉体が風で舞わないようにしたり、分級でのふるい網に無機ナノ粒子を基材表面に化学的に固定化する技術を応用、ふるい網への付着や目詰まり抑制で性能向上を図ったりするなど、技術開発は盛んだ。
こうした動きは粉体プロセスの活躍の場の広さを裏付けているが、一端でしかない。日常生活から最先端産業、環境関連など、カバーする領域は広いだけに、技術・研究開発の余地はまだ残されている。今後の成果が期待される。
日本粉体工業技術協会 展示会、分科会活気戻る
日本粉体工業技術協会(京都市下京区、牧野尚夫代表理事会長)は5月23日、第42回定時総会を開き、2022年度の事業および決算報告、23年度の事業計画ならびに予算案を決議した。23年度は牧野会長体制となって2年目、22年度からスタートした「第3期中期運営計画」の中間年に当たる。同計画で掲げる重点項目を柱に各種事業を展開、さらなる発展を目指していく。
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5月23日に開かれた日本粉体工業技術協会「第42回定時総会」(東京・東京ガーデンパレス) -
コロナ禍から回復しつつある中で開かれた「国際粉体工業展東京2022」
初年度となった「第3期中期運営計画」に沿って精力的に活動した。主な事業は22年12月の「国際粉体工業展東京2022」や分科会活動だが、いずれもそれまでの新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が顕著で、コロナ禍前の水準に近づくなど、活気を取り戻したことが特筆される。以下に主な事業を振り返る。
国際粉体工業展東京2022は22年12月7―9日の3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開いた。開催規模は253社・団体、995小間だったが、これはコロナ禍の影響を受けた前回の東京開催(20年)の152社・団体、457小間を大幅に上回り、コロナ禍以前に匹敵するレベルまで回復した。また21年10月の「国際粉体工業展大阪2021」に続き、リアルとオンラインを併用したハイブリッド方式を採用。両方を合わせた来場者も約1万8000人に及び、活気を取り戻すだけではなく、展示会の新たな展開への足がかりをつかんだといえる。
単位操作・常置型14と目的指向・プロジェクト型7の合計21で構成される分科会は、合同6回を含む延べ60回の本会合を開いた。コロナ禍から年度初めは開催が鈍ったものの、夏以降には各分科会が工夫を凝らして精力的に活動、開催回数や参加者総数も前年度比ほぼ倍増、コロナ以前の水準を確保した。海外でも「ACHEMA2022」の会期中に晶析、微粒子ナノテクノロジー、粒子加工、粉体シミュレーション技術利用の各分科会が合同でハイブリッド式の講演会を実施した。粉砕も日台ワークショップおよび見学会を行うなど、ここにもコロナ禍からの回復ぶりがうかがえた。
技術者養成講座6回開催
教育部門では、単位操作・常置型分科会が中心となり、粉体技術者養成講座を6回開催したほか、専門講座は23年2月に粉体ハンドリング分科会が企画した「粉体ハンドリング技術~粉体物性・供給・輸送・粉体プロセス~」をテーマに開いた。
各種委員会活動は、AI技術利用委員会が21年度と同様に2回の委員会を実施、いずれも「粉体プロセスとデータサイエンス」をテーマに講演を行った。同時開催のAIソフトウエア実習講座も22年度で3回目となり、充実しつつある。併せて、国際粉体工業展東京2022でもセミナーを開催した。