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クリーンエネルギー 技術開発進む
4月に開かれた主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で採択された共同声明では、水素やアンモニアを活用した発電が多様な道筋として認められた。ウクライナ情勢により脱ロシアの代替エネルギーとして国際的に水素への期待が高まる中、政府は6日に「水素基本戦略」を改定し、供給拡大や需要創出を進める。また洋上風力を再生可能エネルギーの主電源化の切り札と位置付け、導入を推進している。
水素・アンモニア―エネ自給率向上に貢献 再エネ―出力変動に対応
水素やアンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないため、脱炭素に貢献するクリーンエネルギーとして期待されている。自給率の向上や再エネの出力変動対応などに貢献することから脱炭素社会を実現する手段の一つとされる。
化石燃料との混焼が可能で、エネルギー安定供給を確保しつつ火力発電からのCO2排出量を削減するなど、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けたエネルギー転換を支える役割も期待される。国は水素・アンモニアの導入拡大が産業振興や雇用創出など、日本経済への貢献につながるよう、戦略的に制度構築やインフラ整備を進めている。
日本は世界に先駆けて17年に水素の国家戦略「水素基本戦略」を打ち立てた。燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池の普及で世界をリード、水素の運搬や発電分野での実証も進めてきた。ロシアのウクライナ侵攻により脱ロシア産エネルギーが進み、代替として水素への期待が一層高まる。
政府は今月6日の閣僚会議で水素基本戦略の改定を決定。今後15年間で官民合わせて15兆円を投資する計画をまとめた。サプライチェーン(供給網)の整備を推進し、次世代エネルギーとしての早期普及を目指す。
水素の供給量を40年に現状の200万トンから6倍の1200万トン程度に拡大する方針で調整する。脱炭素社会に向けて水素エネルギーの普及を後押しするとともに、国際競争力を高めていく。
洋上風力―世界の設備容量5718万kWに急拡大
世界風力会議の「グローバルウインドレポート2021」によると、世界の風力発電設備容量は年々増加し、21年には約8・4億キロワットとなっている。特に洋上風力発電の市場は近年急速に拡大しており、世界の設備容量は21年末時点で5718万キロワットとなっている。
国内では再エネを主力電源化するエネルギー源として全国で洋上風力の実証実験が進む。海上に風車を設置して発電するため、国土が海で囲まれた日本では洋上風力発電に適した場所が多い。陸上よりも安定した風が吹くため、効率的に発電できるメリットがある。また、輸送制約などが小さく、大型風車の設置が可能で再エネコスト競争力に優れている。
政府は洋上風力のさらなる導入拡大に向け、競争力の強化やコストの低減を図る。足元では欧州で技術が確立した「着床式」の洋上風力の導入を着実に進めることが重要としている。一方で、遠浅な海が広がる欧州に比べて、急深な地形・複雑な地層である日本では、深い海域でも利用可能な「浮体式」の洋上風力の導入拡大が不可欠とされる。
浮体式洋上風力の商用化を早期に実現するため、グリーンイノベーション基金の「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」に1195億円を割り当て、21年に風車・浮体・電気システム・メンテナンスの4項目で採択を行い、要素技術開発を進めている。
今後、最速で23年から行う実海域での実証を通じて、コスト低減や量産化に向けて取り組んでいく。風車はグローバルなコスト競争や開発競争が激化しており、大規模化が加速している。
政府は浮体式洋上風力の導入目標を掲げ、その実現に向け、引き続き技術開発・大規模実証を実施するとともに、風車や関連部品、浮体基礎などの洋上風力関連産業における大規模かつ強靱(きょうじん)なサプライチェーン形成、人材育成の取り組みなどを進めている。