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石油―安定供給・脱炭素 両立を目指す
国内で一次エネルギー供給における石油の占める割合は約4割を占め、主要なエネルギー源と位置付けられる。一方でロシアによるウクライナ侵攻は石油や天然ガス価格の急騰を招いた。日本はエネルギーの安定供給と、気候変動対策のバランスを考慮したかじ取りが求められる。こうした中、航空分野では脱炭素化が待ったなしの状況で、官民一体となった取り組みが進む。
調達先の多角化 急務
経済産業省が6日に発表した「エネルギー白書」によると、世界の石油確認埋蔵量は20年末時点で1兆7324億バレル、これを20年の石油生産量で除した可採年数は53・5年となった。世界の石油生産量は石油消費の増加とともに拡大し、21年には1日当たり8988万バレルとなり50年間で約1・5倍に拡大している。
日本の原油自給率は1970年頃から2019年度まで継続して0・5%未満の水準にあり、エネルギー資源の大部分を海外に依存している。ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、欧米を中心にロシアへの経済制裁が拡大。代替エネルギーの確保が求められている。日本は原油輸入量に占めるロシア産の割合が1・5%(22年速報値)にとどまるとはいえ、ロシア産エネルギーへの依存からは徐々に脱却していくとしている。
日本の石油製品の国内需要は緩やかな減少傾向にあり、石油精製各社は生産設備の集約化を進めている。燃料油生産は00年度2億2510万5000キロリットルから21年度には1億4204万4000キロリットルとなった。
原油の大半を蒸留・精製してガソリンや軽油、灯油などの石油製品に展開し、国内販売や輸入をしている。国内消費向けに石油製品の輸入も行っている。21年度の石油製品販売量は燃料油合計で1億5394万キロリットルとなり、油種別販売量のシェアはガソリン29%、ナフサ27・1%、軽油20・9%となっている。
また21年度の燃料油の輸出量は1億4204万キロリットルだった。油種別輸出の比率はジェット燃料が23・9%、B・C重油は31・2%となった。
ジェット燃料には海外を往復する航空機への燃料供給が輸出量として計上され、21年度は新型コロナ禍からの経済回復により、海外を往復する航空機の運航が増加したため、ジェット燃料の輸出量は前年比29・5%増となった。
航空分野―「SAF」官民で着々
こうした中、国際的に航空分野の脱炭素化が進められている。国際民間航空機関(ICAO)は、国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム「CORSIA(コルシア)」を21年に設置。22年の総会では航空会社は24年以降に19年の二酸化炭素(CO2)排出量を基準として15%の削減またはオフセットすることが合意された。国内で22年末に改正された航空法は、こうした脱炭素化の流れをくんだものとなっている。
コルシアで認められているCO2排出削減の手段は①省燃費機体の導入②運行方式の改善③持続可能航空燃料(SAF)の利用④航空会社によるクレジットの調達―がある。
SAFの導入に向けて、インフラの整備や生産体制の構築など官民一体となった取り組みが加速しており、輸入したSAFの原液(ニートSAF)をジェット燃料と混合してSAFを調達する取り組みが進められている。
CO2削減率50―80%のニートSAFを混合率30―40%で利用した場合、通常の燃料と比較して約2割から3割のCO2削減が見込め、日本の大手航空会社はカーボンニュートラル実現に向けた中核の手法と位置付けている。
ニートSAF 始動
富士石油は伊藤忠商事と国土交通省航空局が進める「輸入ニートSAFモデル実証事業」に参画し、3月に中部国際空港へのSAFの出荷を完了した。このSAFは世界大手のネステ(フィンランド)から輸入されたニートSAFを原料に化石由来のジェット燃料と混合したもの。製造には富士石油袖ケ浦製油所(千葉県袖ケ浦市)の既存設備を活用した。ニートSAFは混合後のSAFと比べて、輸送時の物量が少なくなるためCO2排出量削減や輸送コストの低減につながる。
また富士石油は5月、同製油所でSAFを目的生産物とするバイオ燃料製造事業化に向け、製造プラントの基本設計を開始。27年度のSAF供給開始を目指し、年間18万キロリットルの製造を想定する。
同社は24年度までの第3次中期事業計画において「脱炭素社会実現に向けた取組」を基本方針の一つと位置付けており、同製油所内で副生したアンモニアに加えて、サウジアラビアから調達した低炭素アンモニアも混焼実験に使用するなどの取り組みも進めている。