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成長する ちば企業 伴走支援 ―1―
千葉県事業継承・引継ぎ支援センター 活用事例
2023年度の中小企業白書によると、中小企業の経営者の年齢層は20年前に比べ分散が進んでいる。中小企業庁は、これを事業承継が進んでいる可能性と見ており、白書の中でM&A(合併・買収)が事業成長につながる有効手段と分析している。白書の内容を裏付けるように、千葉県でも事業承継は活発であり、事業承継型M&Aも増加傾向だ。事業承継型M&Aを経験したアキテック(千葉市花見川区)の大田嘉之社長を訪ね、経緯や成果について聞いた。
事業継承M&Aで事業拡大
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アキテック社長 大田 嘉之
-アキテックの事業内容は。
「当社は産業機械に使われている変圧器のメーカーだ。創業当時から日立製作所(現日立産機システム)の協力工場として活動し、モーター部品の生産も請け負っている」
-2020年に、同じ県内の変圧器メーカーであるティアール・スズクラ(千葉県山武市)を買収した。
「ティアール・スズクラの鈴木正明社長が大病を患い、M&Aによる事業承継を千葉県事業承継・引継ぎ支援センターに相談したことがきっかけだった。当社も事業拡大を考えており、マッチングに至った。ちなみにその後、鈴木社長の病気は完治し、現在は当社の顧問として活動している」
-M&Aの決め手となったのは。
「同じ変圧器メーカーだが、アキテックにない販路と技術力を持つのが魅力だった。工場が2カ所になることで、災害時に事業の継続性が高まることもプラスと考えた。千葉県事業承継・引継ぎ支援センターの担当者が、親身に相談に乗ってくれたこともありがたかった」
-買収後の事業統合(PMI)で気をつけたことは。
「無理に一体化を強いないようにした。現在はアキテック山武工場となったティアール・スズクラには独自の文化があり、給与や福利厚生もアキテックとは違った。そこを無理やり一緒にすると社員にストレスがかかる。どちらも独立採算で成長をし、徐々に融合を目指していくのが理想と考えた」
-成果は。今後の展望は。
「正直なところ、M&A直後にコロナ禍がおこり、2年間は大変だった。ただ、直前の決算では、山武工場の売上高がM&A前の20%増となり、アキテック全体の業績を大きく押し上げてくれた」
「変圧器の世界は決してハイテクではなく、仕事も事業者も減少していくと予想している。ビジネスチャンスは多いと思うので、M&Aは継続的に検討していく」
昨年度、新規相談先数31%増
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千葉県事業承継・引継ぎ支援センター 統括責任者 河崎 昌浩 氏
2022年度の新規相談先数は、776先で前年度比31%増と大幅に増加した。譲受相談先は209先で15%増、親族承継相談先は249先で18%増。特にM&A相談先は304先と、63%増と前年比118先も増加した。譲渡相談先で売上高1億円未満の先は71%、債務超過先は40%と業績不芳先からのご相談が増加している。近年、新聞やテレビなどで、中小M&Aが取り上げられることも多くなり、M&Aに対する高齢事業者の機運の変化が起きてきたのかと思われる。成約件数は親族内承継が30先。第三者承継は58件で、うち20先は債務超過先だった。業績の厳しい事業者でも、技術やノウハウ、資格保有従業員の有無、大手・公共機関との取引の有無など決算者に表れない知的資産などの魅力で成約に至るケースがある。
調査会社によると、22年に千葉県内で休廃業・解散を行った企業は1978件と4年ぶりに増加に転じた。また、55・7%が黒字先とのこと。後継者の確保・育成難などにより休廃業・解散が増加し、これに伴い雇用や技術の承継が難しくなることが懸念されることから少しでも休廃業・解散する事業者を減らし、事業者が培った経営資源の引継ぎに取組んでいく。