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南海トラフ、東日本の16倍
災害廃棄物3・2億トン 自治体の連携カギ
南海トラフ巨大地震は今後30年以内の発生確率が70―80%とされている。環境省によると、南海トラフ巨大地震が起こった場合、推定マグニチュードは9・1、最大震度7、発生する災害廃棄物は最大で東日本大震災と比べて約16倍の約3・2億トンが想定されている。
また、南海トラフ巨大地震は被害が広範囲に及び、処理すべき量に対する既存施設の年間処理可能量として環境省が試算した処理相当年数は焼却処分で6―8年、埋め立て処分で8―20年が見込まれている。東日本大震災で行われた災害廃棄物の処理は、2011年の災害発生から14年3月までの3年間。福島県を除く12道県、231市町村で処理が完了している。
広域処理/仮設施設/民間委託 自治体以外に3方法
このような災害廃棄物は一般廃棄物に分類され、処理責任は災害が発生したそれぞれの市町村にある。大規模災害の発生時は自治体の処理能力だけで処理するのは難しい。その場合、災害廃棄物を処理する方法は主に三つある。
被災した県域以外の場所で災害廃棄物を廃棄物処理施設に受け入れて処理・処分を行う「広域処理」と、既存の処理施設では処理しきれない災害廃棄物を処理するために一時的に設置する「仮設処理施設」、民間企業の廃棄物処理施設の処理能力に着目し委託する「民間企業への委託」がある。
広域処理は平時から近隣の自治体と災害支援協定などを締結すると、災害時の連携がスムーズに行える。一般廃棄物処理施設で処理できれば運搬距離が短く、さまざまな調整もしやすいメリットがある。
仮設処理施設は広域処理でも処理しきれない場合に設置される。南海トラフ巨大地震で想定される災害廃棄物量は東日本大震災時を大きく上回るため、破砕・選別・焼却などの中間処理の徹底が不可欠となる。自治体は設置や運営について具体的な検討が求められている。
民間企業への委託は法令適合性や選定手続きの正当性、価格、技術的信頼性など確認すべき点が多い。委託をしても処理の責任は被災した自治体にあるため、広域処理と同じく平時から企業と協定を結ぶことが重要になる。
災害廃棄物の種類は大きく分けて選別前と選別後の二つ。選別前は可燃物や不燃物、木質廃材、コンクリート塊、金属類、土砂、津波堆積物など、さまざまな種類の災害廃棄物が混ざった状態にあるものを指す。
木質系混合物やコンクリート系混合物をリサイクル先に搬出するためには、クギや金具、鉄筋などの除去が求められる。選別後は再資源化できるものはリサイクル業者へ、そうでないものは中間処理ののち、埋め立て処分が施される。
被災地の早期処理 公衆衛生に貢献
災害廃棄物の処理業務が開始されるのは、災害発生後数日から数週間。人命救助や避難所の開設などを完了させた「初動段階」の後に行われる「応急対応」に当たる。
被災地における廃棄物の1日も早い処理は、ハエや蚊などの衛生害虫の発生を抑えるほか、可燃物の腐敗・発酵で内部の温度が上がって起きる火災などを防げるため、被災地での生活環境や公衆衛生への貢献が期待できる。