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アフターコロナ ―成長への布石―
イシダ、周年機に新たな歩み
パンデミック明けの5月、創業130周年を迎えた計量・包装機器大手のイシダ(京都市左京区)は、記念事業として本社社屋を建て替えた。石田隆英社長は「130年続けてこられたのは”三方よし”の理念を大切にしてきたから。新社屋にも三方よしのコンセプトを盛り込んだ」とし、社員や来客、地域にとってより良い本社を目指した。
まず目を引くのが1階エントランス奥にある庭園だ。創業家の石田家が代々引き継いできた庭で、既存の池を拡張し色鮮やかなコイが泳ぐ「水の庭」と、紅葉や桜の木々などで四季を感じられる「芝生の庭」から成る。訪れた人たちは散策しながら風情を楽しめる。
2階はワンフロアの執務エリアや集中ブース、会議室などを設けた。個人の集中作業も社員間の連携もできる多様な働き方に対応。3階のラウンジは昼食や休憩などリフレッシュの場として活用する。テラスからは五山の送り火で有名な「大文字」が一望でき、京都らしさも感じられる。
松風、100周年で新社屋建設
ユニークなデザインを新社屋に取り入れたのは松風。22年5月に迎えた創立100周年事業の一環で、本社敷地内(京都市東山区)に新社屋を整備した。歯科用機器などを手がける事業に関連させ、歯を模した白いタイルで緩やかなカーブを描く外壁や、歯をイメージした造形物をショールームにしつらえるなど、遊び心満載だ。
このほか、伝統的な屋根の形である入母屋造りを採用し、鴨川が望めるテラスを設置。京都の景観や環境との調和も図った外観デザインとした。ネーミングにもこだわり、「これまでの100年と、これからの100年の歩みを照らす」との願いを込めて「あゆみテラス」と名付けた。
若返り図り積極投資推進 カンケンテクノ
コロナ禍は落ち着きを見せるものの、変化の激しい時代は続いている。周年を機にトップ交代して若返りを図ったカンケンテクノ(京都府長岡京市)も、次の成長を狙う。同社は12月の創業45周年を控え、4月に就任した今村浩一新社長は「スピード感が必要だ」と強調する。50周年に照準を定め、積極投資を進める方針だ。
同社が手がける除害・脱臭装置は、長期的に高成長が見込まれる半導体市場向けや脱炭素化の加速が追い風となり、需要が急増。国内外の工場拡張や熊本県での新工場建設といった能力増強を急ぎ、次のステップへ進む準備を整える。
インタビュー/ホリゾン社長 堀 英二郎氏
―製本関連機器の足元の状況は。
「欧米を中心に海外は回復が顕著だ。北米ではハードカバーの上製本で多品種少量生産のニーズが高く、それに伴って上製本を作る前段階の工程を担う機械『下がため製本機』が伸びている。停滞していた中国は、再開に向けて動き出した。中国人スタッフの採用を増やし、現地販売店への営業支援などを行っている。日本はコロナ禍で落ち込んだ分の戻りは鈍いものの、プリンターベンダーとの協業を進めている」
―5月にドイツで開かれた包装関連の展示会に出展しました。
「製本機器で培った技術を応用したシステムとして、食品向けの軟包装袋を自動でまとめる機械を紹介した。自動化への強いニーズがあるためか、パッケージング業界全体で制御技術が高くなっていた。当社も商品レベルをさらに向上させていくための意識付けができた。包装市場ははるかに大きく、軟包装の後処理機を足がかりに、すそ野を広げていく」
―軟包装以外の新規事業の展開は。
「社内で活用している無人搬送車(AGV)やロボットアームを使った自動化システムが、製本業界向けに実績が出てきた。他業界からも引き合いがあるので、売り込みに力を入れていく」
インタビュー/NKE社長 中村 道一氏
―コロナ禍の行動制限解除で経済活動が活発化しています。
「電気自動車やバッテリー、電装品関連の大型案件や大口受注など、比較的大きな自動化設備が好調。延期されていた案件も動き出した。ただ、標準的案件の受注回復が弱い。顧客とのリアルコミニケーションが増える中、営業現場からの”パワフルなツールが欲しい”との声に応え、キャラバンカーを作った。展示会の中止などでPRできない期間があったので、フル活動で技術提案とニーズヒアリングを進めている」
―企業の環境への取り組みに対する注目度が高まっています。
「事業について、環境側面からの評価を始めた。客観的に把握し、省エネや長寿命、耐久性、安全性などの差別化軸に環境への貢献度も加えることで競争力を高めていく。部品供給などの自動化・省人化対応で開発中の無人搬送車(AGV)向け独自アプリケーションは、まず自社工場で運用し、顧客にも実際に見てもらい提案する」
―海外での展開は。
「主要の中国はにぎやかさが戻っており、積極展開していく。タイもビジネス基盤ができたので、設計者を増強し本格展開する。月内に成長著しいベトナムで出張所を新設し、市場調査に乗り出す」