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モノづくり現場 クリーン&安全に
健康被害・汚染防ぐ
集塵機は作業者の健康被害や汚染を防止するため、空気中の粉塵量や溶接ヒュームを減らす装置としてモノづくりの現場で欠かすことができない。
粉塵は破砕、研磨、解体などにより大気中に飛散し、粒子の大きさはさまざまである。呼吸により体内に侵入した粉塵が大きい粒子であれば鼻や咽頭部に付着するが、非常に細かい粒子は呼吸器の深部である肺胞まで到達する。
トンネル建設工事や金属などの研磨作業、鋳物業など、多量の粉塵を長時間吸い込むような環境では、体外へ粉塵をうまく排出できず、肺の中に蓄積され続ける。そのため呼吸機能の低下や、じん肺や肺腫瘍、ぜんそくといった健康障害が発生する。
自動車など幅広い分野の金属加工に使われている金属アーク溶接は、作業時に溶接ヒュームが発生するため適正な作業環境が必要となる。溶接ヒュームはアーク放電の熱により溶かされた金属が蒸気となり、冷却され細かな粒子となったもので、塩基性酸化マンガンや酸化鉄などさまざまな有害物質が含まれており、がんや神経機能障害などの原因になる。2021年4月に労働安全衛生法施行令が改正され、マンガンの濃度を測定し基準値以下に抑えることが義務付けられた。
換気が難しい作業場では工作機械や圧縮機などの油から生じるオイルミストは、視界の不良や床面の汚染などで転倒災害につながる。切削加工で発生する切りくずは電子機器に付着し続けることで短絡火災を起こす原因となる。また、可燃性物質である引火性液体の蒸気やミスト、可燃性ガスが存在する場合、着火源となる電気火花などで爆発火災につながるリスクも生じる。
用途に応じ処理6方法
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さまざまな分野で活躍する集塵機(山本工作所提供)
集塵機は集塵対象物の粒径や必要とされる捕集率に応じて処理方法が異なる。粒子を分離する原理によって重力式、慣性式、遠心式(サイクロン)、洗浄式(湿式)、濾過式、電気式の6種類がある。
重力式集塵機は粒子の沈降速度(粒子径の2乗に比例する)を利用し、沈降室内で100マイクロ―50マイクロメートル程度の粒子を捕集する。
慣性式集塵機は粒子の慣性力(粒子の質量が大きいと直進性が高くなる)を利用し、室内の遮断板に衝突させて20マイクロメートル程度までの粒子を分離する。重力式と慣性式は径の大きな粒子を捕集する一次処理に用いられる。
遠心式集塵機は下部に向けて細くなる円筒形構造で、粉塵は上部から下部へ旋回して流れる。空気は装置下部から反転上昇し、粒子を遠心分離してダクトから排気される。粒子は装置下部に沈殿し、3マイクロメートル程度までの粒子を捕集できる。
洗浄式集塵機は粉塵を含んだ空気に加圧水を噴射、あるいは貯留水に通過させて粒子を捕集する。湿式のため高温の粉塵にも使用でき、数マイクロメートルのオイルミストも除去できる。
濾過式集塵機は数十、数百の円筒形のバグフィルターで粉塵を捕集する。濾材は不織布や、金属、セラミックスなどの焼結体を用いる。濾布の表面に粉塵が堆積すると圧力損失が増大するため、機械的に振動させるか、連続的に清浄な空気やガスを逆流させて払い落とす。0・2マイクロメートル程度の粒子を捕集できるため、大型のボイラや焼却炉など、大気汚染防止法で定める厳しい排出基準に応えている。
電気式集塵機は高圧直流電圧を放電極(マイナス)に流し、集塵極(プラス)との間にコロナ放電を発生させる。電極間を通過する粒子はマイナス帯電し、集塵極へ引き寄せられる。20マイクロ―0・05マイクロメートルの微細粒子を捕集できる。
乾式は電極をつち打ちして、堆積した粉塵を剥離し、ホッパーへ落下させて回収する。湿式は粘性や可燃性の高いオイルミストも水で流してドレン回収できる。運転終了後に電極を自動洗浄でき、メンテナンスが容易になる。