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Accelerate FOOMA 変革期の食品産業界―迅速に対応
インタビュー/FOOMA JAPAN 2023 展示会実行委員会委員長 南 常之氏(なんつね社長)
「食」多様化―安全・おいしく・楽しく
―今回は出展社数が過去最大となります。展示会テーマ「Accelerate FOOMA」に込めた思いについて教えてください。
「我々はFOOMAが“来場者から選ばれる展示会”になることを目指している。食品関係の展示会は国内で30前後あり、これからは展示会同士の競争になる。食品業界は労働人口の減少で機械化、自動化需要が高まる一方、食の多様化も広がりつつある。安全性やおいしさに加えて、皆で楽しく食べたいという消費者も増えている。これらの課題にこたえるには機械単体ではなく、工場の生産ラインやシステム全体で考えるソリューション提案を加速する必要がある」
―スタートアップゾーンには前回の19社を大幅に上回る29社が出展します。
「ソリューションとソリューションを掛け合わせることで新たな製品が生まれると考える。日本の食品機械メーカーは技術力がある企業が多く、ベンチャー企業の技術を融合することで、いろいろな可能性が創出できる」
―海外への発信強化も重要です。
「ラーメンは中国発祥だが、日本で独自に発展。今では海外で好んで食されている。インド生まれのカレーも然り。メード・イン・ジャパンの食品文化は和食だけでなく海外発祥の料理をも取り込んで世界全体に浸透し、ビジネスチャンスも増している。世界人口は新興国を中心に増え続けており、食品製造の機械化需要が見込まれる。機械単体の輸出ではなく、付加価値を高めるためにも日本企業やベンチャーが5社10社と連携し、海外に向けて製造工程やサービスなどのシステム提案ができるようになれば和食文化の市場の可能性は広がる」
―新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」になり、展示会の開催が楽しみです。
「FOOMAは世界最大級の食品製造の総合展をうたっている。リアル展の醍醐味は、展示会で機械を目の前で見られる臨場感と高揚感にある。機械の動作やサイズの確認に加え、同業他社のマシンと比較もできる。オンライン上のプラットフォーム『FOOD TOWN』を通じて、課題を解決する相談サービスや、リアル会場のブース内を遠隔地から体験できる360度バーチャルツアーを用意した。さらにリアル会場に来場者が交流できる食の広場を設けるなど、新たな取り組みにチャレンジしている。展示会の実力と価値を、存分に味わっていただきたい」
世界最大級「食の技術」総合展
「FOOMA JAPAN」は今年で46回目を迎える世界最大級の「食の技術」の総合トレードショー。食品機械・装置および関連機器を中心に、原料から製造、物流に至るまで食品製造プロセスに関わるあらゆる分野の企業が集結し、最先端テクノロジーを披露する。
今回のテーマは「Accelerate FOOMA」。“Accelerate”は「加速する」を意味する。食文化が多様化し、変革期にある食品産業界のニーズに迅速に応えるため、展示会を通してさまざまな課題解決につながるソリューションの提案を加速させる。
出展社数は過去最多の953社。そのうち新規企業は107社。
展示分野は大きく分けて、原料処理、食品製造・加工、エンジニアリング、ロボット・IT・IoT・フードテック、鮮度管理・品質保持、包装・充填、保管・搬送・移動、計測・分析・検査、衛生対策・管理、環境対策・省エネ・リサイクル、設備機器・技術・部品、コンサルタント・特許、情報サービス・団体の13分野と、スタートアップゾーンの1ゾーン。「食品製造・加工」はさらに細かく9分野に分けられる。
出展社数の割合を分野ごとに見てみると「食品製造・加工」が全体の28・2%で最も多く、次いで「包装・充填」が13・0%、「設備機器・技術・部品」が11・4%と続く。
スタートアップゾーン 新ビジネスの期待
スタートアップゾーンは、出展社数が昨年の19社から29社に増え、東7ホールに出展企業を集める。新しいビジネス成長を目指す設立9年以内の企業が出展対象で、出展製品は現在商品化している製品、または3年以内に商用開始見込みがある製品を対象としている。新技術との出会いの場となり、予想外の発想から新たなビジネスが生まれることが期待される。
同ゾーンでは25社が連日、イノベーティブな製品やテクノロジーを紹介するピッチプレゼンが行われる。
食品を扱う現場では衛生管理が厳しく求められるため、食品衛生管理基準「HACCP」に基づく機械の出展が多いと予測される。
また二酸化炭素(CO2)削減や省エネルギーを意識した、環境負荷低減を実現する機械の出展にも注目が高まる。
同展はオンラインコンテンツも充実しており、会期初日の14時頃から公開される「展示会ブース360度バーチャルツアー」では、離れた場所から会場の様子を仮想現実(VR)体験できる。
ビジネス・開発のヒント発信―研究発表・セミナー開催
FOOMA JAPANは多くの併催プログラムも見どころだ。ビジネスや研究開発のヒントとなる情報が発信される。
7―9日に行われる「出展社プレゼンテーションセミナー」では、45社・45件の講演が行われる。このうち22セミナーは、会期終了後に会場に来られなかった人でも聴講できる「アーカイブセミナー」を公開する。国連の持続可能な開発目標(SDGs)など、話題のテーマのものが多数予定される。
産学官で共同研究開発のきっかけとなる「アカデミックプラザ」は、今回で31回目を迎える。国内外28の研究室の研究者が、食品製造機器開発や食品開発に役立つ研究を、幅広いテーマで発表する「ポスターセッション」が行われる。会期中、合計15件の口頭発表も行われる。
8日13時半から行われる「フードテックセッション」では、「加速する食の進化~フードテック先端トレンド~」をテーマに二つのセッションが行われる。一つ目は「食に起因する社会課題解決に向けて~食×宇宙を起点とした地上の課題解決に向けた取り組み」、二つ目は「食とWellbeing~食の多様な価値と事業機会を考える」。
7日10時半からは立命館大学グローバル・イノベーション研究機構の特別招聘研究教授の川村貞夫氏がモデレーターとなり、食品製造ラインの省人化・自動化に必要なことや、進め方などを来場者とともに討論する。
6日16時からは、タレントのIMALUさんをゲストに招き、日本食品機械工業会の機関誌「ふーま」の連載企画「テーブルトーク」の公開取材をおこなう。東京と奄美大島の2拠点での生活について、食の観点から話しを聞く。
連日、東1ホールロータリーで参加者が交流できる食の広場として「FOOMA東京バル」が開催される。東京ビッグサイトがある江東区の食事や、東京諸島11島の名産品が楽しめる。FOOMA JAPANの来場者だけでなく、一般来場者も参加可能。東京諸島船の旅が当たる「東京諸島島旅じゃんけん大会」や、投票者の中から抽選でAmazonギフト券が当たる「キッチンカーグランプリ」なども行われる。
このほかにも多彩なセミナーやシンポジウムが行われる。各種セミナーやシンポジウムの受講には事前登録が必要。また各回定員があるため早めの登録がおすすめだ。
「FOOMAアワード」開催―最優秀賞7日発表
昨年創設された、日本食品機械工業会主催の顕彰事業「FOOMAアワード」が今年も開催される。
食品機械の技術研究・開発の促進や、技術の普及を図るため、優秀な食品機械・装置を広く食品産業界に周知し、さまざまな課題の解決や新たな食品開発への貢献、食文化・食品安全の一層の向上に資することが目的。
応募資格はFOOMA JAPAN出展社で、応募製品を製造し、かつ同展で製品(事情によってはパネル、動画などでも可)を展示する企業。応募対象製品は①食品を製造・加工する機械・装置および製造ライン②食品製造ラインに組み込まれる関連機械(包装機械、自動搬送システムなど)③食品製造プロセスに使用される計装・付属機器④食品製造を支援する各種システム(通信、管理システムなど)。
有識者によって構成されたFOOMAアワード審査委員会で、最優秀賞、優秀賞、FOOMAアワード審査委員会賞の3賞が決められる。応募総数41件の中から、真空冷却装置や飯盛り機など7社の製品が最優秀賞にノミネートされている。最優秀賞は6日に決定し、7日午前中に発表される。