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昨年生産13%増 1.3兆円
日本「QCD」高評価
経済産業省の生産動態統計(確報値)に基づき、日本航空宇宙工業会(SJAC)がまとめた資料によると、2022年の航空機生産額は前年比13.6%増の1兆3165億円となった。生産額の内訳は、民間機が8653億円、防衛機が4512億円となっている。
新型コロナウイルス感染症による世界的な渡航制限などで20年、21年は民間機の生産額が大きく落ち込んだが、22年は旅客需要に回復感が見られ、増勢に転じた。国土交通省の「国土交通月例経済」によると、22年の国際線輸送人員は前年比約5倍となる679万3000人となった。経済活動が回復基調にある23年においても、旅客需要増に期待が高まる。
世界の航空機生産サプライチェーン(部品供給網)の中で日本の航空機産業は重要な役割を担っている。特に航空エンジンの開発には長い年月と多額の資金を要し、さらに高性能化に伴う開発リスクもある。そのため、単独メーカーによる開発は難しくなっており、国際共同開発が進展している。
民間用エンジン開発において、日本は国際共同開発に積極的に参加している。参加形態には開発費を分担した比率に応じて収益を分配する「リスク・アンド・レベニュー・シェアリング・パートナー(RSP)」や、加えて事業運営にも参画する「プログラムパートナー」などがある。
IHIの22年度通期連結業績によると、航空・宇宙・防衛部門の売上高は、前年度比989億円増の3641億円だった。民間向け航空エンジン本体とスペアパーツの販売が増加したことなどによる。川崎重工業の航空宇宙システム部門の売上高は前年度比506億円増の3488億円だった。民間機向け航空エンジンの受注が増加したことが要因。両社とも航空エンジンの生産増加が見込め、23年度の売上高も伸びると予測している。
SJACによると「航空エンジン製造において、中小企業を中心とする日本の企業は、勤勉さや製品の精密さから、QCD(品質・コスト・納期)の高さを評価されており、世界の航空機産業を支える重要な役割を担っている」という。
”SAF&”で脱炭素化―ボーイング
日本の航空機産業の成長に密接に関係してきた米ボーイング。787型機における日本企業の製造割合は35%を占める。同社は日本に拠点を構え、今年で70周年を迎えた。ボーイングジャパンのウィル・シェイファー社長は「日本における長きにわたるパートナーシップは、大変大切なもの」とし「さまざまな部署の人材を増やす予定。特に航空自衛隊が運用する航空機を支援する人員や、持続可能な航空技術を推進するため、研究開発人材の採用を強化したい」と話す。
品質や業績、パートナーとしての重要度などにおいて傑出した企業を、ボーイングが評価・選定する「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した企業数は、日本が国別で37%の割合を占めており(米国を除く)、他国と圧倒的な差をつけて首位を維持している。
シェイファー社長は「技術的に卓越していることはもちろん、プロセス管理や人材が大切にされており、目の前のタスクをやり遂げるという強い意志があるという部分が、持続的なパートナーシップの根源になっている」と評価した。
また各国のパートナーとともに、今後より強固な体勢をつくるためには「製品の設計と製造の革命的な方法の導入が中心的な課題となってくる」と指摘し「デジタル変革(DX)や新技術の導入が大きな柱。品質管理の手法や生産システムにもまだ改善できる点が多く、新技術で効率化を進め、よりよい製品づくりにつなげていきたい」(シェイファー社長)と抱負を語る。
さらに「SAFの利用は普及拡大が重要だが、長い目で見るとSAFの利用だけでは足りない。”SAF&(アンド)”の部分も開発を進めていきたい」(同)と脱炭素化促進に意欲を見せる。