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モビリティー 電動化で新たなチャンス
モビリティーのさまざまな進化が見られる中、電気自動車(EV)など電動化対応が化学メーカーにとっての新たな商機となっている。電動化の進展で需要が拡大するリチウムイオン電池(LiB)向け材料の増産や、新たな樹脂部品などの採用も増えている。今後EVなど電動化シフトをより鮮明にする日系自動車メーカーの動きを見据えた取り組みが加速しそうだ。
リチウムイオン電池材料を増産
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三菱ケミカルグループのMUアイオニックソリューションズ四日市工場
三菱ケミカルグループはLiB用電解液の製造技術ライセンス供与を決めた。三菱ケミカルとUBEが出資するMUアイオニックソリューションズ(MUIS、東京都千代田区)が、インドのネオジェン・ケミカルズと同ライセンス契約を締結した。ネオジェン・ケミカルズは電解液について今後、MUISと協議し、年間3万トンの生産能力を構築する計画。
三菱ケミカルグループはグローバルで電解液の生産増強を進めているほか、製造技術ライセンス供与や委託製造にも取り組む。2025年には一連の施策で電解液の世界シェアを25%(21年は13%)に引き上げる。
23年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して発足したレゾナック・ホールディングス(HD)は、負極材などを手がけLiB向け材料に力を入れる。特に正負極用導電助剤「VGCF(気相法炭素繊維)」は、川崎事業所(川崎市川崎区)での生産能力を従来比33%増の年産400トンに引き上げる。23年10月に稼働開始の予定。EVなど電動車(xEV)向けの需要が急速に拡大している状況に対応する。
VGCFは分散性が高い繊維のため、少量を添加するだけで、リチウムイオンの行き来が保たれ、電池の高容量化、長寿命化につながる。熱伝導性も高く、電極からの放熱を促進することで熱マネジメントにも貢献する。ライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)排出量の削減が期待できる。
LiBは充放電を繰り返すことで徐々にリチウムイオンの行き来が難しくなる性質があり、充電量が低下するなど性能が劣化する点が課題だった。
樹脂部品関連では独BASFが自動車内装・高光沢部品用に展開する特殊ポリアミド樹脂「ウルトラミッドディープグロス」が、トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)新型「プリウス」に採用された。
同社の樹脂は東海理化に納入し、シフトレバー周辺の加飾部品に使われる。
同樹脂を使うことで溶剤を使用した塗装工程を省略でき、CO2排出削減に寄与する。高光沢の外観品質を実現するほか、耐薬品性に優れている耐久性も特徴だ。
自動車―EVシフト加速
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新型プリウスのシフトレバー加飾部品にBASFのポリアミド樹脂が採用
日系自動車メーカーはEVシフトを明確に打ち出している。トヨタ自動車は26年までに新たにEV10車種を投入し、EV世界販売を年間150万台に引き上げる新たな目標を設定した。30年までに年間350万台にする目標に向けて取り組みを加速する。
ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と電池やプラットフォーム(車台)を共通化したEVを開発し、24年に北米で発売する計画だ。さらに量販価格帯のEVシリーズの共同開発も進め、27年以降に世界展開する。
スズキも30年度までにEVを日本で6モデル、欧州で5モデル、インドで6モデルを投入する。まず日本で23年度に軽商用EVの発売を計画するほか、欧州、インドでは24年度にEVの投入を予定している。
日産自動車は26年までにHVの車両コストを、30年をめどにEVの車両コストをエンジン車と同等にする計画だ。HVとEVでインバーターなどの主要部品を共通化するなど、EVを含めた電動車の価格競争力を高めていく。
こうした自動車各社のEV対応の加速を背景に、化学メーカーも電池を含めた次世代への投資や提案を積極化している。モビリティーの環境対応などに資する化学製品として新たな需要開拓を促進していく構えだ。