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石川県・富山県/機械産業“成長の芽”
コラボ商品共同開発
箔座(金沢市、高岡美奈社長)はハイディワイナリー(石川県輪島市、高作正樹社長)と金箔入りワイン「能登の風2022」を共同開発し、2月に発売した。奥能登地区で育まれた白ワインに「伝統金箔・縁付」を振り入れて仕上げる両社のコラボレーション商品は、これで4回目となる。
両社によれば原材料名に「金箔」と表示できる珍しいワイン。3月に金沢市の箔座ひかり蔵で行われたお披露目会では、10人ずつの2部構成と少人数ながら事前の抽選予約がすぐに埋まるなど、その仕上がりを心待ちにしている愛飲家も多い。
11年3月に設立したハイディワイナリーは、醸造用のブドウを18年ごろからは自社の畑で賄えるようになり、高作社長は「真の意味でコラボレーション商品になった」と喜ぶ。加賀の伝統を能登の新しい薫風とともに届ける融合に、これからも注目だ。
木工製品ブランド立ち上げ
バンテクニカ(富山県魚津市、長村勝社長)は、希少木材を使用した木工製品ブランド「Quaint(クイント)」を立ち上げた。稀少性が高く高価な材料を使用するが、製造工程を木工職人による手作業ではなく、完全機械化することで製造コストを抑制。市販されている同様の製品に比べ、低価格で商品を提供する。同事業で初年度1000万円、5年後に5000万円の売り上げを目指す。
同ブランドのコンセプトは「希少木材×デザイナー×木材加工技術」のコラボレーション。国内外の稀少木材をウオータージェット(WJ)カッターで加工し、木製品を製造する。今まで主力の金属加工で培ってきたノウハウを生かし、製造工程を完全機械化することに成功した。
例えば、コースターやキーホルダーなどは同規格の製品を大量に製造可能で、コストを抑制でき、手頃な価格で商品を提供できる。また、高価なものが多い知育玩具なども、既存の市販品より安価で提供できる。同社は主に製造を行う。現在、販売協力会社を募集している。
同社は、各種金属の板金や溶接加工、焼き付け塗装、機械ユニットの設計から製造、販売まで手がける。22年2月、スギノマシン製のWJカッターを導入。現在も「なんでも切れる」を発想の原点に、さまざまな素材で試作を継続し、自社の可能性を広げている。同ブランド立ち上げのきっかけもその一環。
高専・大学など国際人材育成
国際高等専門学校(国際高専)は、1962年4月に設立した金沢工業高等専門学校から始まり、18年4月に現在の校名に改称した、日本では珍しい私立の高等専門学校だ。金沢工業大学(金沢工大)とは運営が同じことから連携を図り、「グローバルイノベーター」と称したグローバル社会、高度情報化社会、高度知識社会という大きな変革期に活躍できる人材育成に大きくかじを切った。
国際高専は15歳からの高等教育機関として、数学や物理、コンピューターや人工知能(AI)、ロボット工学などのテクノロジーを、5年にわたり英語で学んでいく。5年間の内訳は1―2年生は白山麓キャンパス(石川県白山市)での全寮制教育、3年生は1年間のニュージーランド留学、4―5年生は併設している金沢工大の施設を共有し、金沢キャンパス(金沢市)で大学生とともに学ぶ。
特に4―5年生時は科目によっては同大の教員が兼任して授業を行う強みを生かして、学生各自に学びなどへの積極性を育てている。さらに、大学への編入学を視野に入れる学生のために、同大指定の専門科目を履修し専門性を深められ、習得した内容はそのまま「先取り」として、編入後の単位として認められる。
一方で、1年生から培ってきた英語を活用し、企業で報酬を得ながら自身の専門に従事する「コーオプ教育」も実施。タイのスタートアップ企業支援施設で4カ月ほどの長期で携わった5年生の勝又舜介さんは、「日常の一部に働きが加わり、あらためてワークライフバランスが大切だと実感した」という。
「実社会では扱う情報の交通整理や(母国語ではない)英語を使っての仕事は、今まで以上にコミュニケーションが重要だ」(勝又さん)と身に付けた知識や技能を生かすために、実務経験の場が良い機会として今後の自身の成長に大きくつなげる。
そして22年3月2日、勝又さんなど国際高専第1期生9人が卒業を迎え、進路は金沢工大への編入や就職などさまざまだ。新型コロナウイルス感染症の影響で留学できないなどの困難もあったが、これらを乗り越えてきた彼らは、引き続き「国際高専」の名をワールドワイドに広める活躍が期待される。
地域課題とアイデアつなぐ
北陸先端科学技術大学院大学が主催する産学官金連携マッチングイベント「マッチングハブ北陸」は、14年から毎年開催する。地域の大学・企業のシーズやニーズ、行政や金融機関の支援を集約しマッチングさせることで、新製品・新事業の「種」を生み出すことを目的にしている。
2日間の開催中は、特別講演や北陸地域の産学官金を中心にパネル展示などを行う。22年11月の開催で9回目を迎え、今回は1634人(オンライン含む)と前回比180人増、パネル展示は203ブースと前回比で40ブース程度増やした。増加の要因には同時開催の学生ビジネスアイデアコンテスト「M―BIP」の存在もある。
M-BIPはアントレプレナーシップ教育が始まりだした、16年の第3回から開催されている。当時からコンテストの先駆けとして評価も高く、ほかのコンテストが収益性などを評価するのとは違い、北陸先端大の地域イノベーション推進センター長を務める中田泰子准教授は「自由な発想や研究開発・成果、地元にある気付きを評価する」と話す。参加者は北海道から九州地域の大学生と幅広く、近年では女性の参加者も増えているという。
入選者はイベント内でポスターセッションに参加する。自らのプランを実現してくれる企業との出会いの場ともなっている。この期待値もイベント全体の認知度向上につながっている。
今秋、マッチングハブ北陸は10回目を迎える。「一つの節目ではなく、これまで継続して開催できた価値を、『M―BIP』など同時開催の内容を含めて、これからも地域同士の連携が全国に広がるきっかけになれば」(中田准教授)と期待を込める。