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自動車部品/CASE事業 確かな一歩
自動車部品メーカーの次世代事業が徐々に芽吹き始めている。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(乗り物のサービス化)の進展を踏まえ、各社は既存事業で培ったノウハウを活用し、新たな製品や技術の開発に踏み込む。製品・サービス化だけでなく量産やアフターなど越えるべきハードルは少なくないが、中長期目線で新たな収益の柱とするため確かな一歩を積み重ねる。
新潮流見据え電動化対応 モノづくり・適合技術 両輪で
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セキソーのバッテリークーリングダクト -
ファインシンターのリアクトルコア
各社が次世代事業として開発を進める最も大きな要因は、電動化が加速していることに他ならない。欧州連合では合成燃料(eフューエル)に限り内燃機関車の販売を認める方向ではあるものの、自動車メーカーは電気自動車(EV)の展開を本格化するなど、電動化は避けて通ることができない新潮流となっている。
愛三工業は、主力の燃料ポンプモジュールやキャニスターに加え、電動車向けに電池(バッテリー)ケースやDC/DCコンバーター(電圧変換器)の開発に乗り出している。既存の自動車部品事業で培ってきたアルミニウムのダイカスト、樹脂の成形、金型などの技術を応用する。電池セルケースでは23年に、DC/DCコンバーターは25年の開発完了を目指す。野村得之社長は「現在持っている深絞りのプレス技術を利用できる。モノづくりだけでなく、性能を引き出すための適合技術を活用する。制御やコントロールも併せて担い、付加価値を高める」と語る。
中央発條でも電動化へのバネ製品の拡販戦略を練っている。電動化をチャンスと捉え、バッテリー異常時のパック内圧上昇を防ぎ安全性を確保するEV向け「バッテリーパック用減圧弁」や、水素タンクと車体との締結帯のジョイント部に使用する「水素タンク固定用バネ」などの開発を進める。バネを主力とする同社は、既存の内装や車体用に続き、電動部品用を新たな事業の柱に成長させる方針だ。
バッテリーの普及に着目しているのはセキソー(愛知県岡崎市、山田昌也社長)も同じだ。防音性能を高めた車載バッテリーの冷却用配管部品「バッテリークーリングダクト」を開発した。バッテリー冷却のために空気を送り込む際の反響音を低減する。音の大きさとして、従来品に比べて4デシベル程度下げられるという。エンジン音がなく、車室内により静粛性が求められるEV向けも視野に電動車への採用拡大を目指す。
車載用バッテリーは駆動時に発熱するが、そのままでは航続距離が短くなるなど性能低下を起こすため、冷却する必要がある。従来のダクトは樹脂製だったが、一部を不織布製に変えることで吸音性能を高めた。素材の構成や成形方法、構造などを独自開発する。
電動化はEVだけでなく、ハイブリッド(HV)車やプラグインハイブリッド車(PHV)も含まれる公算が大きい。これらの需要に対応し、ファインシンターは投資を加速させている。春日井工場(愛知県春日井市)とファインシンター東北(岩手県奥州市)にラインを追加するなどして、電動車向け部品の「リアクトルコア」の生産能力を増強する。
同社は国内では滋賀工場(滋賀県愛荘町)と春日井工場でリアクトルコアを生産する。19年に生産を始めた春日井工場では21年にラインを増設したばかりだが、23年12月にさらに1ラインを追加する。24年1―3月ごろにはファインシンター東北でも同部品の生産を始める。新設ラインでは他ラインと同様、生産・検査・梱包などの工程を全自動で行う。
採用範囲拡大、投資加速
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東海理化はアルコールチェックとエンジン始動を連携するサービスを開始 -
林テレンプの駐車予約などが可能な駐車場用のデジタルロック板
東海理化はMaaSを進めている。特にスマートフォンを鍵の代わりに使う「デジタルキー」の事業は拡大傾向にある。社用車管理を効率化するサービス「ビーキー」や、レンタカーマッチングアプリケーション(応用ソフト)「ユーキー」は、実サービスも開始しており、アルコールチェックとエンジン始動の連携を実現するなど顧客ニーズを取り込みながらサービスのアップグレードを加速している。佐藤雅彦副社長は「30年に新規事業では売上高150億円が目標。そのうち、ユーキーやビーキーなどデジタルキービジネスでは100億円を目指す」と語る。
林テレンプ(名古屋市中区、林貴夫社長)は、駐車予約などが可能な駐車場用のデジタルロック板を発売した。スマートフォンからオンライン予約やキャッシュレス決済などが可能で、バッテリー駆動タイプでは大がかりな配線工事が不要。名古屋市営駐車場に採用され、23年4月から3カ所の駐車場の優先駐車スペースで運用する。
同社が販売を始めた「オートスタンド」は、通常時はバーが立った状態で他車の入庫を防ぐ。オンライン上で駐車予約するとバーが下がり、車を止められる。優先駐車スペースの不正利用防止や、EV用充電ステーションの予約管理、イベント会場付近など混雑する駐車場での事前予約などに活用できる。
ITシステムを手がけるグループ会社の知見を活用して開発した。駐車管理システムを事業化するのは、同社として初めて。主力の自動車用内装部品に加えて新たな事業の育成を目指す。