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自転車の街 堺の現在
競争力のある技術に可能性
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アサヒサイクルは、堺市内で唯一の完成車組み立てラインを保有する
自転車の街としても知られる堺。その中心にあるのが世界的な自転車部品メーカーのシマノだ。同社も精密冷間鍛造の技術を基盤に事業を拡大させた。変速機やギアを核とした同社のシステムコンポーネンツなくしては自転車を作れない。
かつて市内には多くの自転車部品メーカーが誕生し、鉄砲や刃物同様の分業体制が成立していた。各メーカーが専門分野を持ち、競い合って技術を磨いたことで、競争力の底上げにつながった。
戦前から戦後の高度成長期にかけて、市内には200を超える部品メーカーが集積し、最盛期には260を数えた。部品メーカーを支える協力工場も多くあり、複数の完成車メーカーを頂点にピラミッドが重なり合うようなサプライチェーンが存在。注文に即応できるモノづくりを特色にしたが、輸入車のコスト競争力に押されて衰退の一途をたどった。
市内には今も完成車工場が一件残る。1986年に創業したアサヒサイクル(美原区)は、輸入自転車を取り扱うが、組み立てラインを保有して一部車種に限定して〝国内生産〟している。星原正彦社長は「安全な自転車を販売し続けるには、モノづくりを知らなければならない」と理由を明かす。
安価に自転車を作るには、部品の多くを海外からの輸入に頼らざるを得ない。しかし、海外のモノづくりには部品の安全性や品質維持の面で不安も残る。「組み立てラインで部品に触れることで、不良を未然に防げる」(星原社長)と言い、その知見は輸入自転車の販売にも生かされている。
一方で、世界市場を相手にするシマノがなぜ、堺をマザー工場としてモノづくりを続けているのか。島野泰三社長は「日本にまだ埋もれている技術を発掘し、世界に打って出るためだ」と説明する。
南大阪に多くあるサプライヤーとともに、国際競争力の向上を目指す姿勢だ。島野社長は「メード・イン・ジャパンにこだわっている所に頑張ってもらえるようサポートしていきたい」と意気込む。
南大阪7会議所が連携 万博に向けて魅力訴求
堺では今秋、主要7カ国(G7)貿易相会合が開かれる。実務会議は大阪市内だが、歓迎行事などを堺で開催する計画だ。世界遺産の仁徳天皇陵、中世の自由貿易など歴史的背景や当地の魅力を世界に発信する好機に、官民挙げて準備が進む。
仁徳天皇陵は、巨大さが故に、地上から全体像を一望することができない。そのため、近隣の大仙公園で、地上100メートルの高さまで垂直に上昇して、観覧できる「ガス気球」の運航を計画。ヘリウムガスの調達難などで延期されてきたが、ようやく5月25日からの試験運航が決まった。
地上100メートルでも陵全体を見るには高さが足りない。永藤英機市長によると「(前方後円墳の)くびれ部分は確認でき、鍵穴状であることが分かる」という。料金は大人3600円で、年間2万人の体験を想定する。
一方、堺、高石、泉大津、和泉、岸和田、貝塚、泉佐野の南大阪7商工会議所は、2024年に開く「全国商工会議所観光振興大会」の共同誘致に乗り出した。全国から1000人超の会議所役職員が集まり、観光地づくりの先進事例を紹介して意見交換する会議。エクスカーション(体験型見学会)も設定され、翌年の大阪・関西万博開催を前に、南大阪をアピールする絶好の機会となりそうだ。
空の玄関・関西空港を擁するも、降り立った客は南大阪を素通りして、大阪や京都へと向かってしまう。地域の魅力を訴求して立ち寄り客を増やすのが地域の共通課題だ。
66社が関心、11月開催 さかいオープンファクトリー
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説明会会場には約100人の参加者が訪れ、オープンファクトリーへの理解を深めた(19日、堺商工会議所会館)
堺商工会議所が19日に開いた「さかいオープンファクトリー推進事業〝ファクトリズム〟参加説明会・交流会」には、会場とオンライン合わせて110人が参加した。自社の工場での開催に関心を寄せている企業は計66社。昨年度のイベント成功や実施効果が注目を集め、自社での開催に興味を持った経営者が増えているようだ。
説明会ではオープンファクトリーの概要を講演するとともに、昨年初参加の企業が、体験談を交えて魅力や開催効果などを解説。参加検討中の企業社員らは熱心に聞き入り、ミニ体験でイベント当日の雰囲気を味わった。
堺地域では昨年21社が参加したが、今年はこれを上回る規模に拡大しそうだ。開催は11月2ー4日。堺市での主要7カ国(G7)貿易大臣会合と重なるため、同じファクトリズムとして同日に開いていた八尾・東大阪・門真とは別日程となる。