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石川県・富山県/産学官金連携で育成
生産活動の回復に合わせて石川県・富山県産業界では機械メーカー各社が新機種開発に意欲的に取り組み、モノづくりの高度化を支えている。高い技術力を持つ機械加工、金属加工分野では積極的な設備投資を行い、生産能力の増強を図っている。持続的な成長を目指す上で欠かせない人材の育成、イノベーションの創出への取り組みなどに産学官金が連携して取り組んでおり、将来の発展につながる成長シーズが芽生えている。
各社、高い加工技術生かす
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渋谷工業のファイバーレーザー溶接機「FWL1500SH」昇圧トランス付き -
スギノマシンの「セルフィーダデュオ」シリーズの高速回転タップ機。1分間に100穴を加工できる -
ミズノマシナリーが導入した牧野フライス製5軸制御横型MC
渋谷工業は3月にメカトロ事業部(金沢市)工場内でプライベートショーを開催し、2日間で130人の来場者が訪れた。会場では展示実演を行い、ファイバーレーザー溶接機の新モデル「FWL1500SH」は、定格出力を1500ワットまで上げ、溶接する部材の板厚3ミリメートルに対する仕上がりの安定性を確保し、さらに同5ミリメートルまで対応可能にした。
同機はハンドトーチ仕様で、振り幅0ミリ―10ミリメートルのスイング機構を搭載し、隙間や角度のある部材が精度良く溶接可能。経験の浅い作業者でもアルミニウムの溶接作業が行える。このほか、新機種として展示したダイボード市場向けの炭酸ガスレーザー加工機「SPL3821D/SFL30C」は、3キロワットの二酸化炭素(CO2)レーザー発振器を搭載し、高速加工を実現した。
スギノマシン(富山県滑川市、杉野良暁社長)は、小型・汎用ドリリング・タッピングユニット「セルフィーダデュオ」シリーズに高速回転タップ機を追加し、発売した。1分間に100穴のタップ加工が可能。主軸の最高回転速度は毎分1万回転で、微小伸縮フロート機構を内蔵。同機構がタップ回転と送り切り替え時のわずかな誤差を吸収し、ネジ立て精度を高める。また、誤差の吸収により工具にかかる切削抵抗が減少し、タップ工具の寿命も向上する。
最大ネジ立て能力はアルミニウムでM6、炭素鋼材のS45CでM4まで対応する。シンプルな構造で導入後のメンテナンスも容易だ。小型化や精密化が進む半導体関連部品や電子機器部品などの製造において、高い精度が求められる小径タップ加工に適している。さらに、モーターやスピンドルの交換で加工能力が変えられ、加工プログラムの変更で加工条件や加工サイクルの変更ができるなど汎用性が高い。
ミズノマシナリー(富山市、水野文政社長)は、牧野フライス製作所製の5軸制御横型マシニングセンター(MC)を添島第二工場(同)に導入した。投資額は約1億6000万円。横型の導入は2台目。今まで主に立型MCを使い、主力のアルミニウム部品の加工を行ってきたが、加工対象物(ワーク)に合わせて切粉の排出性能の高い横型を活用し、さらなる生産性の向上を図る。
導入した横型MCは「T1」。2パレット、自動工具交換装置(ATC)137本の特別仕様。主軸回転速度は最大毎分1万2000回転。ワークの最大直径は1500ミリメートル、最大積載質量は3トン。加工面の品質向上や工具寿命延長、切粉の排出性能を向上させる「アクティブダンプニングシステム」を搭載する。
ミズノマシナリーは半導体製造装置向け真空チャンバーの加工が増加傾向にある。ワークも大型化しており、立型MCで加工すると多くの切粉がワーク内に堆積。加工の途中で機械を止めて外に排出する必要があり、無人運転の妨げになっていた。
一方、横型MCで同部品を加工すると、切粉の排出性能が高いためワーク内にたまらない。排出のために機械を止める必要がなくなり、無人運転の時間が延び、生産性の向上につながった。夜間も切粉を受けるタンクをあらかじめ空にしておけば、朝まで無人で加工できるようになった。
現在、半導体製造装置向けの設備は小康状態にある。ただ、同社は2024年度の大手半導体メーカーの工場稼働に向け今後も需要は増えると見ており、生産性の向上で対応していく。
樹脂窓の生産能力向上
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YKK APは滑川製造所(富山県滑川市)の敷地内に低放射複層ガラス加工棟を新設する
YKK APは滑川製造所(富山県滑川市)で、住宅用窓などに使われる断熱・遮熱性能の高いLow―E(低放射)ガラスの加工を始める。省エネルギー効果がある高断熱の樹脂窓など住宅用窓の需要増に対応する。
同製造所の敷地に建屋を新設し、同社最大のLow―Eガラス加工能力を持つ埼玉窓工場(埼玉県久喜市)と同等の生産能力のガラス加工設備を導入する。投資額は34億円。2月に建屋を着工し、24年の稼働を目指す。
YKK APはAGCなどからガラス板を購入し、自社で複層ガラスに加工している。ガラス加工設備としてガラス表面に金属の薄膜を施すスパッタリング装置を導入する。同設備は埼玉窓工場、北海道工場(北海道石狩市)、富山婦中工場(富山市)に導入済み。だが老朽化から富山婦中工場では稼働率が低いため、滑川製造所に設備を新設して集約する。
Low―E複層ガラスは断熱・遮熱性の高い複層ガラスで、樹脂窓のほか、樹脂とアルミの複合窓、アルミサッシの窓にも使用される。一つの設備で断熱、遮熱の両タイプを製造できる。同社は住宅用に販売する窓の7―8割に同ガラスを使用し、今後も省エネ製品として需要の伸びが見込まれるため、関連ガラス加工設備を増強する。
また、樹脂窓の生産は23年10月に滑川製造所内の自社製製造ラインを1ライン増設し、3ライン体制にする。同製造所の樹脂窓の生産能力は現行比1・5倍になる。投資額は15億円。21年秋には樹脂窓の生産能力が限界となり、今後は樹脂窓を新築分譲住宅にも展開するため生産能力を高める。