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機械・工具/脱炭素向け製品開発加速
モノづくりでもカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)が課題となる中、自動車業界はCNを端に発した電動化の激流にもまれ、「100年に一度」ともいわれる変革期に入った。この動きに対応した戦略的な製品開発が急がれる機械・工具メーカー。CNや電気自動車(EV)拡大に対応した製品の開発の強化や、生産や営業体制の見直しによる成長分野の取り込みに力が入る。
精度の安定・省エネ 両立
「寸法精度の安定性」と「エネルギー消費量の削減」。オークマはこのふたつのテーマを両立する工作機械を「グリーンスマートマシン」と定義し、市場展開を始めた。
その中核となるのは、新型のコンピューター数値制御(CNC)装置「OSP―P500」だ。旧来の装置からハードウエア、ソフトウエアとも一新し、10年ぶりにフルモデルチェンジした。装置内のデジタル空間に最新の実機データと3次元(3D)モデルを活用して、仮想機械を再現でき、加工スケジュールの策定や、迅速で正確な納期、コスト見積もりに寄与する。
また、加工動作作成から段取り、加工、検査まで、一連の作業を一つの画面で、ガイドに従いながら図面情報の入力をするだけで加工準備ができる。加工用のプログラム言語を知らない初心者でも簡単に扱えるようにした。
3月には同CNCを搭載した2つのグリーンスマートマシンを発売。「LB3000EXⅢ」と立型マシニングセンター(MC)「MB―46VⅡ」で、いずれも同社を代表するベストセラー機の新モデルだ。消費電力は一般的な機械よりLBが14%、MBが15%削減。精度と省エネ性能を高め、「一段と競争力強化を図った」と家城淳社長は胸を張る。今後、同社はグリーンスマートマシンを軸に製造現場のCN対応をけん引する構えだ。
自動化・省人化 高生産性実現
MC専業のキタムラ機械(富山県高岡市、北村彰浩社長)は労働生産性を高める自動化・省人化に重点を置いた提案を行う。同時5軸制御立型MC「メドセンター5AX 24APC/120ATC」は多面パレットと大容量工具収納マガジンをアップグレードで取り付け可能。初期投資を抑えつつ、工程集約と自動運転、無人化や変種変量生産に対応できる。
また、同社製マシンの全てに搭載されている独自のCNC装置「Arumatik―Mi」で利用可能な機能「Auto―Part―Producer」は、初心者でもCADデータさえあれば、人工知能(AI)で機械加工の自動運転ができる。さらに、この機能を進化させた「同5G」は遠隔操作が可能で、複数機械の制御を1人で賄えるようになり、省人化も実現する。
同CNCはアップグレードで機能追加が可能なため陳腐化せず、常に最新の状態で使用できる。
稼働が急停止するリスクが少ない「止まらないマシン」を標榜する豊和工業は、主軸30番の横型MC「HMP―350HC1」を展開。切り粉で機械が止まるトラブルを一切排除しただけでなく、モジュール構造で多様な加工形態に対応する。シリンダーヘッドなどの従来のエンジン部品からバッテリーケースなどのEV部品まで、幅広い加工対象物(ワーク)を作れるようにした。塚本高広社長は「得意とするエンジンや変速機の量産ラインに加え、増えているEV向けの部品の両方に対応できる」と用途拡大に期待している。
高効率ライン構築支援
キラ・コーポレーション(愛知県西尾市、大竹良彦社長)は旋削加工を加えて工程集約による多種少量生産に対応する立型マシニングセンター(MC)「PCV―40a」を投入し、効率的な生産ライン構築を支援する。同MCは高速、高剛性で省スペース化を図ったテーブル移動型マシン。鉄、鋳物などの高精度に加工する。
旋削、穴あけなど複数工程にワンチャッキングで対応。テーブル作業面のサイズは800ミリ×400ミリメートル。工具収納本数は標準15本。主軸回転数毎分6000―2万回転で4種類のスピンドルから選べ、加工目的に合わせて最適な条件設定をサポートする。切削能力の向上に伴い、切りくずの排出が容易な工夫を施した。
機械本体は幅1800ミリメートルとコンパクトな設計で、省スペース化に貢献。自社開発の簡易型ロボット、本機一体型ガントリーローダーを搭載可能としており、自動化ライン構築に柔軟に対応する。
一方、得意先であった自動車産業の加工需要が電動化で縮減する見込みの中、工具メーカーは他分野に狙いを定めている。
砥石やダイヤモンド工具の製造販売を手がけるジェイテクトグラインディングツール(同豊田市、望月美樹社長)は、半導体材料のウエハー研削用のビトダイヤモンド砥石「nanoVi(ナノブイアイ)」を発売した。組織構造の最適化による高気孔率化と組織強度の両立を実現する。次世代パワー半導体とされる炭化ケイ素(SiC)のウエハー表面をラッピング(研磨)するラップ工程向けの砥石。成長分野である半導体市場の伸長に伴い、拡販に注力する。
微細精密加工を成長分野と捉え、その需要の取り込みに力を入れるのはOSG。24年に大池工場(愛知県豊川市)のリニューアル工事を着工する計画で、微細精密加工に必要な超硬エンドミルを量産しやすい体制を整える。併せてグループ会社のエスデイ製作所(茨城県常総市)は超硬エンドミルの小ロット向けの新工場の建設を23年内に始める予定だ。グループ内をまたいだ生産分業で供給力を高め、成長分野を切り拓く。