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静岡県/車産業 ノウハウ生かし成長
静岡県の企業が、さまざまな事業環境の不透明感が続く中でも新たな成長を狙う動きが活発化している。自動車業界が盛んな地域であり、電動化対応やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への取り組みを加速する。またロボット関連など自動化や新分野開拓にも積極的に取り組む動きがある。
EV・自動運転ニーズ対応
スズキは2030年度に向けた長期成長戦略を公表した。電動化などに向けた投資を上積みし、売上高を30年度に21年度比2倍となる7兆円規模まで高める計画だ。30年度までに電気自動車(EV)を日本で6モデル、欧州で5モデル、インドで6モデルを投入する。電動化の潮流に対応する構えだ。
ヤマハは電動化の動きに対応して車載オーディオ製品を提案する。自動車業界がEVや自動運転といった変革期を迎えて車室環境のニーズにも変化が訪れている。楽器で培った強みの音響に関する技術やノウハウなどの強みを生かし、車内で映画館のような臨場感のある立体音響を体感できる車載オーディオの開発、提案にも取り組む。
木村鋳造所(静岡県清水町、木村寿利社長)は24年に低圧砂型鋳造技術によるアルミニウム構造部品の本格生産に乗り出す。部品の軽量化ニーズの高いEV向けなどに供給を見込む。新たな事業の柱に育成し、年間10億円の売上高を目指す。27年に創業100周年を迎えるにあたり、持続的成長ができる事業基盤の確立を目指す。
再エネ活用、脱炭素推進
またカーボンニュートラルへの対応も加速する動きがある。スズキは2輪車生産の浜松工場(浜松市北区)での達成を27年度に3年ほど前倒しする。35年度には国内全工場のカーボンニュートラル化を目指す。
ヤマハ発動機は2輪車用のアルミニウム部品の原材料として、二酸化炭素(CO2)排出量の少ない再生可能エネルギーを用いて製錬された「グリーンアルミ」の採用を始める。2輪車製品でのグリーンアルミの採用は国内初という。順次、適用範囲を拡大していく計画だ。2輪車は車両重量の約12―31%をアルミ部品で構成する。グリーンアルミの採用は製品ライフサイクルの一部である原材料製造時のCO2排出量(スコープ3)を低減する上で有効な手段の一つとなる。
スター精密は全面刷新を計画している工作機械の国内生産拠点の菊川工場(静岡県菊川市)で、最新の省エネルギー、創エネルギー技術を取り入れたネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)を目指す。ZEB実現に向けて、22年度中に着工を予定していた当初の計画を見直す。着工時期は24年めどの見通し。太陽光発電を中心にした再生可能エネルギーを100%利用し、工場全体の省エネ性能を高める。CO2排出量の削減効果が大きい工場ZEB化に積極的に取り組む。
菊川工場は主軸移動型(スイス型)自動旋盤に搭載するスピンドルの生産能力増強に合わせ、建屋・設備の老朽化対応、デジタル変革(DX)推進に向けて全面刷新工事を計画していた。カーボンニュートラルが待ったなしとなり、ESG(環境・社会・企業統治)経営を加速する一環で、同工場のZEB化も決めた。
ロボット導入 中小に提案
ロボットなどを活用した、自動化支援や新分野開拓の動きも活発だ。協立電機はグループ各社の工場自動化(FA)関連技術と連携し、自動化ラインの一貫受注体制を強化する。ロボット活用や制御技術など得意分野を融合し、人手不足が顕著な中堅・中小企業に自動化推進を提案する。経済成長が続くインドなどアジアにある現地拠点を通じて海外需要も掘り起こす。生産が回復傾向にある自動車、半導体関連を中心にFA投資のニーズをとらえ、26年6月期に連結売上高500億円を目指す。
地域でロボット活用の開拓を目指すのが静岡県西部地域。浜松商工会議所は22年11月に産業用・協働ロボの展示会「ハマロボ展」を開催し、地元のロボット関連7社などが出展。地元の中小モノづくり企業にアピールした。
また浜松地域イノベーション推進機構(浜松市中区)は、松下工業(静岡県磐田市)の工場で地元企業向けの協働ロボットの見学・操作体験会を2月に開いた。松下工業がロボットに関する取り組みを説明したり、参加者に松下工業が所有する協働ロボットを操作してもらったりした。同機構ではイベントを通じ、人手不足の課題を抱える地元企業のロボット導入への理解促進につなげる。
また自動化支援では、ティーアールシィー高田(TRC高田、浜松市西区、高田修平社長)が中小企業向けに価格を抑えて小型化したロウ付け溶接を自動化する装置を提案する。価格は200万円(消費税抜き)からで同社の従来装置の5分の1程度。サイズは同6分の1程度で設置をしやすくする。
TRC高田は主力の自動車部品で培ったロウ付け溶接のノウハウを生かし、高品質で効率的に加工できる機械として訴求する。ロウ付け溶接は熟練の技が必要だが、特に中小では職人の高齢化が進み、技術継承も進んでいない現状でロウ付け溶接自動化装置に需要があるとみる。
外国人労働者が働きやすい工夫を機械づくりに取り入れたのはフジ産業(静岡市駿河区、池田義彦社長)。多言語対応のコントロールパネルを搭載した長尺加工機「FB―5000―12ATC―S」を開発、受注を開始した。製造現場で働く外国人労働者が言葉の壁によって工作機械の操作で苦労している状況に対応した。まず日本語とともに英語、ベトナム語、韓国語に対応。今後も対応言語を随時増やしていく。
新領域の本格開拓では、レント(同、岡田朗社長)が首都圏で産業機械・建設機械などを扱うレンタル事業を拡大する。営業強化に向けて、東京都港区に東京支社を開設した。都内を中心に活発化している大型開発プロジェクトでのレンタル需要の取り込みを狙う。