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三重県/コロナ後、持続的成長へ攻勢
新型コロナウイルスの感染が収束に向かう中、三重県内の企業は、新工場の建設や新製品の発売などで攻勢を強めている。一方、県の行政や大学では、半導体を将来の県の主要産業にすることを狙い、人材育成などの支援策を拡充させている。アフターコロナを見据え、地域産業の持続的な成長を図る取り組みに余念がない。
開発・増産見据え設備増強
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井村屋の新工場「あのつFACTORY」 -
松澤精工の丸鋸全自動研削盤
井村屋は3月1日、津市の中勢北部サイエンスシティ内に新工場「あのつFACTORY」を完成、稼働させた。同社のグループで国内5番目の生産拠点となる。豆腐、カステラ、スイーツなどの生産を強化し、海外輸出やネット通販への対応も充実させる方針だ。総投資額は約16億円。
新工場は平屋建てで約7100平方メートル。豆腐の鮮度を長く保てるように短時間で殺菌、冷却できるレトルト製法の設備を増強した。カステラは新しいオーブンを導入し、新商品の開発にも対応できるよう設備を充実した。
伊藤製作所(三重県四日市市、伊藤竜平社長)は、インドネシア・ジャカルタ郊外のGIIC工業団地で新工場の建設に着手した。合弁相手先の所有地(ブカシ県)にある従来工場の設備を移設、規模を拡大し、主力生産品である自動車用の精密プレス部品の増産に対応できるようにする。
同社は2013年に現地財閥ニュー・アルマダのグループ企業であるメカルアルマダジャヤ(MAJ)と合弁会社「イトウセイサクショ アルマダ」を設立。日系自動車メーカーの1次サプライヤーとの取引が中心で、東南アジアの発展とともに売り上げを伸ばしてきた。
ここ数年、新型コロナウイルス感染拡大で東南アジアの経済が混乱をきたしたため影響を受けたが、22年12月期の売上高は前年同期比35%増の700億ルピアを見込んでいる。こうした背景から、将来の増産を見込んで新工場を建設することをMAJ側と合意した。
新工場は24年9月に完成する予定。工場用地は約1万4000平方メートル。中型プレス機、ワイヤカット放電加工機、マシニングセンター、研削盤などを移設。最新鋭の設備も新たに導入する計画だ。
安永はシリコンや石英ガラスなどの難加工材料をムダなく高精度に切断するシングルワイヤソー「DW―600S」を4月1日に発売した。現在、広く用いられているバンドソー(帯鋸)と比べ切断時間が大幅に短縮できる。最大で600ミリメートル角のワーク(加工対象物)の切断が可能。ダイヤモンドワイヤを採用したことで、バンドソー以上の切れ味と切断面品位を実現した。それにより、研削工程の削減にも寄与できるという。
ワイヤを送る線速を従来機の2倍に高め、加工時間を短縮。歩留まりの改善が期待できるほか、材料ロスが約10%低減するとみられる。これらメリットを生かし、国内外の半導体製造装置や材料メーカーなどへの拡販を目指す。
松沢精工(津市、松沢健二社長)も、ハンドリングロボットを採用した「丸鋸全自動研削盤」を同日に発売した。ワークの取り出し作業や洗浄作業を完全自動化したことで、生産効率が30%以上アップするという。これまでの丸鋸の再研削加工では、厚みを調整する研削盤と外周を調整する研削盤がそれぞれ必要だった。これを一体化させたことで、段取り回数を大幅に削減できる。
直径300ミリメートルまで、厚み10ミリメートルまでの丸鋸に対応。従来は1枚の丸鋸を加工するのに約5分かかっていたが、約3分まで短縮できる。ワークは50枚までストック可能。機械全体の寸法は幅4000ミリ×奥行き3000ミリ×高さ3000ミリメートル。洗浄装置など個々の機械をシステム化することで、設置面積が約半分となる省スペースを実現した。
次世代半導体の人材育成支援
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みえ半導体ネットワークは産学官で設立
世界的な需要の高まりから半導体産業の成長が見込まれている中、三重県は地域の産学官と共同で専門的なセミナーや研究を増やすことで、地域ネットワークを支える人材の供給を目指す。
主要産業としての成長が期待できる次世代半導体の生産技術に対応できる人材育成に重点を置き、産業競争力の強化を狙う。
その一環として、3月2日に県内における半導体産業の振興を目的とした産学官連携組織「みえ半導体ネットワーク」を立ち上げた。
会員は三重県、四日市市、桑名市のほか、三重大学、鈴鹿工業高等専門学校(鈴鹿市)、鳥羽商船高等専門学校(鳥羽市)、近畿大学工業高等専門学校(名張市)。三重県内に工場を構える半導体大手のキオクシア(東京都港区、早坂伸夫社長)、ウエスタンデジタル合同会社(同)、ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(横浜市神奈川区、河野通有社長)、ジャパンマテリアルで構成している。
同ネットワークが手がける事業支援として、まず23年度中に「人材育成部」を設ける。三重大学や高専で半導体関連の授業を増やすため、企業から招いた講師らが特別講義を実施する。また企業向けにリカレント(学び直し)教育の機会を提供していく。
また、三重大学は4月1日、半導体分野に関する技術者の育成や研究推進のため、「半導体・デジタル未来創造センター」を学内に設置した。今後、三重県の「みえ半導体ネットワーク」と連携を取りながら社会的ニーズに対応した教育課程を整え、実践的な高度技術者の輩出を目指す。