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愛知県/近未来のまちづくり着々
製造品出荷額は全国1位、県内総生産は全国3位を誇る愛知県では次世代に向けた産業構造の構築とまちづくりが進んでいる。コロナ禍が収束に向かうことで、海外企業とのビジネスマッチングによるイノベーションも盛んになりそうだ。大村秀章知事の4期目の県政運営も始まった。大村知事は「日本の未来をつくる大型プロジェクトを丹念に進める」と意気込む。
5G技術をエリア内実装
愛知県は中部国際空港周辺のデジタル化に乗り出した。中部国際空港島(愛知県常滑市)と、その対岸にある常滑市りんくう町の一帯に第5世代通信(5G)の基地局を整備した上で、2025年度までに5Gを使うデジタル技術をエリア内で実装する計画だ。実証実験の場として国内外の企業も誘致する考えで、近未来のまちづくりに挑戦する。
アバター(分身)ロボットによるバーチャル観光・会議や人流データを使って運行制御する自動運転バスの導入を検討している。県以外の第三者にも、実証実験の場として空港周辺を開放。空港や物流、商業施設などが集まるエリア全体で5G技術の実証ができる点を訴求する。
23年2月下旬には、ホログラムや分身ロボットを使って会議や展示会に参加する実証実験が開かれた。実証を視察した大村知事は「我々はどんどん使い、(活用できる)可能性を広げる」と意欲を示した。
常滑市では新たな展示会も始まる。フランスの展示会運営会社GLイベンツ(リヨン市)が開催する欧州最大級の産業展示会「グローバル・インダストリー」の日本版となる「スマート・マニュファクチャリング・サミット・バイ・グローバル・インダストリー(SMS)」が24年3月13日から15日まで愛知県国際展示場(同常滑市)で開かれる。国内外から約250社の出展を見込んでおり、想定来場者数は1万5000人。テーマは「未来の移動」で、日本と欧州企業のビジネスマッチングを促し、イノベーションの創出を図る。
成長分野の研究開発や実証実験を支援する「新あいち創造研究開発補助金」を活用した成果を披露する展示会「あいちモノづくりエキスポ2023」も23年10月5日から6日に同展示場で開催。次世代自動車や航空宇宙、環境・新エネルギーなどの分野で成果を展示し、ビジネスマッチングを図る。展示会の意義について大村知事は「研究開発成果の事業化や商品化、販路拡大を促進する」と説明している。
県が重点施策として掲げる、スタートアップの創出・誘致では、29年までに国内外から1000社を集める計画だ。県とソフトバンクが組んで資金調達や人材確保を支援する拠点「ステーションAi」のメンバーとなるスタートアップは176社(4月時点)に増えた。大村知事は「スタートアップの盛り上がりを大いに感じている」と語る。
23年2月には、日本進出を狙う海外スタートアップと国内企業の商談会が開かれた。米国や欧州、アジアから16社の最高経営責任者(CEO)らが来日し、自動車部品や電機メーカーの担当者と商談。サービスロボットを開発するROBOPRENEUR(マレーシア)のハナフィア・ユソフCEOは「日本は産業ロボットで先行するが、サービスロボットの市場は開拓の余地がある」と商機を狙っている。愛知県のモノづくり産業とスタートアップの融合が着々と進んでいる。
スタジオジブリの世界観を楽しめるテーマパーク「ジブリパーク」(同長久手市)では、今秋に『もののけ姫』をイメージした「もののけの里」エリアと『ハウルの動く城』や『魔女の宅急便』の世界観を体験できる「魔女の谷エリア」がオープンし、全面開業する。県は年間180万人の来場者と480億円の経済効果を見込んでいる。
スマートシティー構想実現
“産学官金”の連携促進
県内市町村はスマートシティーの実現に挑んでいる。NHKの大河ドラマ「どうする家康」で観光客の増加が期待されている岡崎市は、次世代モビリティーを使った市街地の渋滞緩和に取り組んでいる。「どうする家康 岡崎 大河ドラマ館」への移動に、トヨタ自動車の1人用立ち乗り型電気自動車(EV)「C+Walk(シーウォーク)」を期間限定で貸し出す実証実験を22年11月から2月の間に取り組んだ。
刈谷市はスマートシティー構想を策定した。「子どもの未来」と「将来への備え」をテーマに、若者の転入促進や脱炭素化、インフラの維持管理などの課題解決に取り組む。25年までに推進体制を構築し、31年までに新たなサービスを段階的に実装する計画だ。市は新技術ありきの姿勢ではなく、課題解決につながる実効的な取り組みを産学官連携で行う考えだ。
幸田町は中部電力ミライズ(名古屋市東区)、NTT西日本と「まちづくり包括連携協定」を締結した。防災や農業、医療、地域交通などの課題解決に向け、3者が連携して事業モデルの構築を進める。両社が“産学官金”の連携役となり、企業間連携を促す構えだ。
持続可能な経済好循環へ
さまざまな業種で課題となっている物価の高騰や原材料・エネルギー価格の上昇。上昇分の適切な価格転嫁の実現に向け、行政や経済団体の動きも活発だ。嶋尾正名古屋商工会議所会頭は22年12月、大村秀章愛知県知事に対し、中小企業の価格転嫁の現状を報告し物価上昇分に見合った賃上げを訴えた。
23年2月には愛知県経営者協会と連合愛知が、「パートナーシップ構築宣言への参画拡大と実効性確保に向けた労使共同宣言」を締結。経営者と労働者が連携して、より多くの企業の参画を促し持続可能な経済の好循環を図る。
また同月、愛知県と中部経済産業局や愛知県商工会議所連合会、連合愛知など県内の行政、労使、金融の計12の組織・団体が「適正な取引・価格転嫁を促し地域経済の活性化に取り組む共同宣言」を発出した。中小企業や小規模事業者が燃料や原材料の価格高騰を価格に転嫁できるよう、相談や施策の周知、状況把握と発信などに取り組む。