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インタビュー キタムラ機械社長 北村 彰浩氏/富士精工会長 森 誠氏
会社全体で生産性向上/キタムラ機械社長 北村 彰浩氏
キタムラ機械(富山県高岡市)はマシニングセンター(MC)の専業メーカー。国内はもとより世界52ヵ国に展開し、独創的な技術で高い評価を得ている。11月に創業90周年を迎えるが、その歩を緩めることはない。さらなる労働生産性向上のため、省人化・自動化設備への投資を推進。同時に今後の成長に不可欠な優秀な“人財”を確保するため、社員の待遇改善にも取り組む。北村彰浩社長にその概要を聞いた。(林昭孝)
―現在の受注状況は。
「1年くらい先まで注文が入っているが、相変わらず生産に必要な部品が入らない状況に苦労している。ウクライナ問題が収まる気配が見えないことから、引き続き油断できない状況が続くだろう」
―創業90周年を迎えます。
「節目の年に合わせ、当社の機械を海外で販売している現地ディーラーの訪問団が当社を訪れる。4月は欧州から十数人が来訪。6月には米国から来ることが決まっており、対応の準備を進めている。当社の機械の販売先は7割以上が海外のお客さま。この機会に現地ディーラーとの関係強化を進め、さらなる販売促進の道筋をつけたい」
待遇改善で”人財”確保
―人への投資を進めています。
「持続的に成長していく上で人財の確保は不可欠だ。しかし、本当に必要なのは数ではなく質だと思う。やみくもに社員の数を増やすのではなく、やる気のある人財や優秀な人財を確保し、育てていきたい。そのための待遇改善策の一つとして、4月から1万3000円の給与ベースアップを行った。また、賞与はすでに年3回にしており、一般社員の平均で一回あたり74万円を支給している。北陸新幹線が富山・金沢まで開業してからは、すぐに東京に出られるようになったため、人財の確保は東京圏の企業との競争とも言える。そう考えれば、こうした対応は必要だ」
―省人化・自動化を進めています。
「今後も労働生産性を高めるため、生産現場の省人化、自動化を進める。3月までに約8億円をかけて関連する装置を導入しており、今後も継続的に同程度の投資を続けていきたい。生産現場だけでなく、それを支える事務方の働く環境の整備も行っている。3月までに事務所の改築が終了し、全てOAフロア化した。以前は社員がやっていた床掃除はロボットに任せている。工場から事務所まで、会社全体でIoT(モノのインターネット)機器の導入やDX(デジタル変革)を推進し、省人化、自動化を進めていく」
新規分野の開拓に力/富士精工会長 森 誠氏
富士精工は自動車エンジンや変速機の加工用精密工具を主力とする。電動化など自動車業界の変革に対応するための新技術や新製品の開発、さらには新規分野の開拓に力を入れる。2020年にはギアスカイビング用チャックに参入、21年には電気自動車(EV)関連部品用も視野に入れ、切削加工の切りくずを従来の4分の1以下に細かくできる「パラパラドリル」を開発した。電動化の激流を乗り越えるために取り組むことは何か。森誠会長に現状と戦略を聞いた。(名古屋・津島はるか)
―半導体不足の影響が長引いています。
「半導体不足による自動車生産調整の影響でリピート品は予想の30%減となった。一方で、3月あたりから米国向けのモーター関係の需要が増えたこともあり受注は回復傾向。設備投資需要による受注は当初の想定より多く、積み増しはできたが一段落した印象だ」
―電動化への対応は。
「今後どのような変化が起きるか分からないため、3月に車載用バッテリーメーカーに技術者を派遣した。チャックや治具も手がける工具メーカーとして、新しい観点での技術的な提案など一緒になってやっている。何かしらで携わることができればと考えている。まずは人を送っていろいろなことを教えてもらう」
自動化設備に積極投資
―新規分野に挑戦するための土壌作りに注力しています。
「新しいことを始める時に、人が採れる保証がない。現状の人員で新しいことに挑戦できるよう、生産工程の省人化や自動化を進める。自動化のための機械などには積極的に設備投資している」
―具体的には。
「5月には自動化ラインが完成する予定だ。従来はそれぞれ人手が必要だった工程を集約し、工程間の段取りを自動化した。70%の製品が自動で加工できる。今後は残りの30%をどう自動化するかに注力する。ほかにも、ワイヤ加工を4分の1の時間で加工できるレーザー加工へ変更するなど高効率な加工方法を検討したり、既存設備では複数の工程が必要だった加工を、一台で完結できる機械を新規に導入するなどして省人化を図っていく」
―カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた取り組みは。
「省エネ設備への設備投資は必要。オーバーホールしようとしていた設備も、最新の省エネの設備へ入れ替えることを進めている。また、機械ひとつひとつの消費電力を“見える化”した。ここから細かく分析する」