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インタビュー ソフトピアジャパン理事長 松島 桂樹氏/兼房取締役常務執行役員 磯谷 岳摩氏
中小のDX導入支援/ソフトピアジャパン理事長 松島 桂樹氏
デジタル変革(DX)は業務の効率化や高度化だけでなく、経営や社会も変えるとされる。しかし実際にどう取り組んだらよいのか。特に中小企業では大きな課題だ。そんな中、岐阜県内産業のデジタル化を支援する公益財団法人のソフトピア・ジャパンは共同体「岐阜県DX推進コンソーシアム」を立ち上げた。クラウドサービス推進機構の代表理事なども兼務する松島桂樹理事長に話を聞いた。(編集委員・村国哲也)
―ソフトピア・ジャパンの役割とは。
「1990年代に京都市や神奈川県横須賀市とともに岐阜県大垣市で情報産業の拠点としてスタートした。ITバブル後に大手が撤退しても地元企業が一定育った。15年頃からは県内産業へのデジタル化支援に県の方針が変わった。経済団体や中小企業を支援し、関連の専門家やITベンダーも育成してきた」
―活用支援組織「岐阜県IoT(モノのインターネット)ソーシアム」を「岐阜県DX推進コンソーシアム」に改称しました。
「IoTとDXはつながっている。生産現場を改善するIoTが根付き、それをバックオフィス(総務・経理などの管理部門)などにステップアップするのがDX。DXの名でバックオフィスをデジタル化し効率化する」
―岐阜県の現状は。
「進捗は一概には言いにくい。岐阜県には社員のために経営をすると考える優れた経営者が多い。経営効率化による賃上げや働き方改革に意欲的だ。デジタル化にフィットし、DXの下地になる」
ニーズ対応、専門家派遣
―中小企業のDXの導入方法は。
「岐阜県DX推進コンソーシアムで、デジタルインボイス(電子データ化し構造化・標準化された適格請求書)が簡単に発行できる岐阜モデルを構築し実証する。請求書発行で会計のデジタルデータが取り込める。これをDXの入り口に、データを活用してみて、効果を実感してほしい」
―DXの活用法は。
「人手不足が深刻で物価も高騰する中、賃上げや価格転嫁ができるよう中小企業は競争力を強化すべきだ。バックオフィスのデータ化で個々の事業や製品の競争力を見直し、DXにより事業や人員構成を再構築してほしい」
―支援策は。
「うちのスタッフがニーズを聞き、組織化したデジタル化支援の専門家を派遣し、県内のIT企業がシステムやソリューションに仕立てる。IT企業と一緒にシステム稼働後も支援を続ける。投資が県内で循環する地産地消の支援体制を強化したい」
開発スピードアップ/兼房取締役常務執行役員 磯谷 岳摩氏
兼房は木工用の丸鋸からアルミや樹脂の加工用ドリルまで切削工具を幅広く手がける。2021年に発売したヘッド交換式アルミ加工用フェースミルは着実に受注を増やしており、22年には鋳鉄用も発売。鋳鉄用のフライス工具は同社では初めてだ。また、23年ぶりの社長交代を発表。インドネシアの現地法人社長や本社工場長を経験し、6月28日に社長に就任予定の磯谷岳摩取締役常務執行役員に課題と注力する取り組みを聞いた。(名古屋・津島はるか)
―景況感は。
「良くはないが一時的な落ち込みと見ている。原材料、エネルギーコストなどの高騰の影響が大きく苦しく、売り上げが上がっても利益がついていかない状況だ。価格転嫁への協力を求めるのに加え、工具がデフレになる地域が出てきたら一時的なものか継続するのかを見極めた上で、戦略的に取り組みたい」
―現状の課題は。
「コロナ禍で営業と技術の両面でリアルな打ち合わせが減ったことで、新しい製品や改良製品のテーマアップやスピードアップができていない。また、当社が年間の目標などで掲げることが多い『改革』だが、改善止まりで改革にまで到達していない」
現場へ足を運び現状把握
―どう解決しますか。
「開発のスピードアップのためには顧客の立場に立って考える。ニーズも変化しているので、実際に工具を使用している現場へ足を運び現状を把握、顧客の刃物に対する要求を聞くことが重要だ。また、改革については、より一層社内の風通しを良くすることが必要と感じる。優秀な社員達が、持っている力をあと5%ずつ出せる環境になれば全体的なレベルが上がる。当社に合った風通しの良い環境作りを検討する」
―鋳鉄用ヘッド交換式フェースミルを発売しました。
「アルミ加工用でスタートしたが、破損率の高い鋳鉄用のニーズも出てきた。鋳鉄用のフライス工具の開発は初めてだったが、鋳鉄用の丸鋸製造で培った技術を生かして開発した。ようやくニーズと課題が見えてきたので、今後は製品のブラッシュアップや生産能力と納期対応の向上に取り組む」
―中期経営計画に「製造4拠点の生産分業」を新たに加えました。新しい拠点のベトナムの能力増強が狙いです。
「海外3拠点の中でも一番大きな敷地面積を誇るベトナム工場へ積極的に投資する。丸鋸の海外市場は需要増の見込み。丸鋸の生産能力増強と、新たに平刃の生産にも取り組みたい」