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インタビュー 愛知県知事 大村 秀章氏/中部経済連合会会長 水野 明久氏
人づくりで産業を元気に/愛知県知事 大村 秀章氏
愛知県の大村秀章知事による4期目の県政運営が始まった。初就任の2010年度から12年間で県内総生産は21%増の約41兆円に拡大した。しかし、好調な経済を支える県内産業は岐路に立つ。自動車の電動化や三菱重工業による小型ジェット旅客機開発の撤退など乗り越えるべき壁は多い。愛知のモノづくり産業が培った強みを継承し、次代に向けた県の産業構造に刷新することはできるか。大村知事に聞いた。(名古屋・永原尚大)
―「日本一元気な愛知をつくり、日本の未来をつくる!」を柱に政策展開しています。
「愛知に住む人、働く人が輝き、みんな笑顔で楽しく過ごせることを目的に『日本一元気な愛知をつくる』と主張している。若者や女性、高齢者、障がい者の雇用を作り、人づくりを進める。彼らが活躍して地域が元気になり、産業経済が元気になる循環を作る」
―自動車産業では電動化に向けた動きが盛んになってきました。
「ガソリンエンジンの時代が終焉を迎えつつあると言っても過言ではない。ピンチだが、未来を切り拓くチャンスだ。人材を集め、研究開発で新たな商品、技術、ビジネスモデルを作り出せば勝てる。我々は各企業が研究開発拠点を作ることを応援する。『産業空洞化対策減税基金』で毎年50件ほどの研究開発や実証事業を補助している。研究開発力をアップすれば、100年に1度のピンチをチャンスに変えられる」
―県内の航空宇宙産業の先行きは。
「中長期的には成長産業であることには変わりない。完成旅客機を作ることは諦めない。絶対にやる。どこで作るかとなれば、ここしかない。当面はボーイングの航空機部品(をつくる)事業をやりながら、苦い経験を活かしていろんな形でトライしたい」
―スタートアップの創出・誘致に注力しています。
「全国に先駆け、“産官学金”でスタートアップを盛り上げようという戦略を18年に作り着々と進めてきた。中核となるステーションAi(24年に名古屋市昭和区で開業)に1000社の企業を集め、世界を目指してもらう。東京ではなく、いきなりグローバルだ。我々は世界中を網羅するネットワークを作り、世界に類例のないスタートアップのコミュニティーを形成して創出・誘致を加速する」
脱炭素へ再生可能エネルギーに挑戦
―県内の脱炭素化は。
「県内総生産当たりの温室効果ガス排出量は全国38位。経済規模が大きいため排出量は日本一となっている。我々が脱炭素化を進めれば、日本に与える効果は大きい。洋上風力など再生可能エネルギーに挑戦していきたい」
産学で人材育成支援/中部経済連合会会長 水野 明久氏
経済団体として、さまざまな課題に対し産学官の繋ぎ役を担う中部経済連合会。「付加価値」「人財」「魅力溢れる圏域」それぞれを創造することを掲げた中期活動指針「ACTION2025」は、折り返し地点を迎え実行フェーズに移行した。厳しい経営状況で中部地域が抱える課題と解決に向けた取り組みを水野明久会長に聞いた。(名古屋・津島はるか)
―中部圏の景況感は。
「経営難に陥ったスイス金融大手のクレディ・スイスや米シリコンバレーバンクの破綻など金融面で新たな不透明感が出てきた。輸出産業が多い中部は海外経済の減速に影響を受ける。また、中小企業の価格転嫁の課題もある。転嫁が追いついていておらず中小企業が身を削っている厳しい状態。賃上げにも踏み切れず、大手と中小の格差が広がってしまう。経済団体としては声を上げ続けることしかできないが、大手企業は理解してもらいたい」
―産学連携による人材育成の現状と課題は。
「当事者同士での認識のズレについての議論が不足している。学生が博士号を取得後に企業へ就職したり、就職後に大学へ行ったりする流れが増えるといい。また、企業側から社員を大学に派遣することは多いが、企業の研究所が学生を受け入れるのは少ないなど双方の動きに偏りがある。もっと流動性があっていい。中経連としては、きめ細かいマッチングの場を作って支援する」
起業マインドを醸成
―コワーキングスペース「ナゴヤイノベーターズガレージアネックス」を名古屋市中区に開設しました。
「エリアを拡張したことで登録人数も増えた。企業の新規事業担当者などさまざまな業種の人のたまり場となった。一方で“わいわいがやがや”といった雰囲気がまだない。本年度は利用者が“わいがや”できる仕組みを作る。Z世代(20歳前後)まで利用者の幅も広がっており、若い世代の起業マインド醸成の場としたい」
―次世代モビリティーやカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)をテーマに中部5県(長野、静岡、岐阜、愛知、三重)の産学官広域連携に力を入れています。
「次世代モビリティーでは、既存のインフラを使った社会実装に取り組んでいる。また、カーボンニュートラルは、これから永遠のテーマにもなるため、基礎研究が重要。名古屋大学を中心とし、自治体にも参画してもらっているが、今後も輪を広げ、ギアアップしていく」