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省エネを追求 オイル式をクリーン環境で
空気品質を安価に向上 生産環境を改善
圧縮室内部に潤滑油を用いるオイル式コンプレッサーは、価格が安く、省エネ性が高いという特徴があるため、多くの産業で主要な動力源として幅広く用いられている。しかし、このオイル式コンプレッサーから供給される圧縮空気には、環境や生産品質の観点から好ましくない霧状の潤滑油(オイルミスト)が含まれている。これを解決することができるオイルフリーコンプレッサーの出荷台数は増加傾向にあり、日本市場ではまもなく50%を超えようとしている(0・2キロ-90キロワットレンジ)。しかしオイルフリーコンプレッサーはオイル式に比べて省エネ性では劣り、生産コストがかさむ原因となってしまうため、圧縮空気を多く消費する用途ではあまり適さないという判断をされるケースも多い。ここでは、コスト面で優れたオイル式コンプレッサーを用いながら、圧縮空気品質を安価に向上させる方法を紹介する。
オイルミスト対策
工場の主要なユーティリティーである圧縮空気を供給するエアコンプレッサーでは、その圧縮室の内部で潤滑油を使用することが一般的であり、その潤滑油の一部は圧縮空気中にオイルミストとなって混入している。潤滑油が含まれるだけならば困らないと思われがちだが、このオイルミストはコンプレッサー本体内部で高圧・高温にさらされているため、変性し潤滑油としての性能が低下していることが多い。
そればかりか、自動機械内部で多く使用されている空圧機器の位置決め制御の精度不良など、生産機器の作動不良につながる恐れがある。さらに圧縮空気は消費された後、工場内に排出されるが、その際にオイルミストを含んだ状態で放出されるため、工場内および従業員の作業環境の悪化を招くことになる。
このように圧縮空気に含まれるオイルミストは、工場内の環境悪化と生産性低下の原因となることから、一般的にはオイルフリーコンプレッサーを導入し対策することが多い。それにより確実にオイルミストを含まない圧縮空気が供給され、さらにオイル管理やフィルター交換など日常管理の手間を省くこともできる。
しかしオイルフリーコンプレッサーは初期投資が高くつく上、省エネ性に劣ることから、中・小規模の工場でよく使われている22キロ-37キロワットクラスでは、まだまだオイル式が選択されることが多い。
そこでフクハラが製造・販売する「オイル・バスター」を紹介する。フクハラはこの製品で、圧縮空気の品質等級で最高レベルの清浄度を示す「ISO8573-1 クラス0」の認証を取得した。このオイル・バスターと、高い省エネ性と耐久性を持つ当社のオイル式スクリューコンプレッサーを組み合わせることで、オイルミストを含まない圧縮空気を安価かつ安定して利用できるようになる。
海外の動向
一方、海外市場ではオイルフリーコンプレッサーの普及が遅れている地域や、より高い省エネを求めてオイル式が優先される地域も多い。そのため当社とフクハラは、国内で展開していた前述の販売を海外に広げることとした。
例えば東南アジアでは、オイルフリーコンプレッサーは限られた一部の用途にしか用いられておらず、一般的な工場エアはオイル式のコンプレッサーにより供給されていることが多い。しかも塵や油分を除去するフィルター類が十分に設置されていないことが多く、圧縮空気の品質が良好に保たれていないケースが散見される。
しかし、そのような状態でも配管内部を流れる圧縮空気の品質は外から見えない。そのため生産機械の動作不良などのトラブルが圧縮空気の品質に起因しているということは認識されづらく、改善の検討が進みにくい状況にある。
そこで当社ではタイ国内の製造業を対象として、フクハラ製のオイル検知管を用いた圧縮空気中の水分・油分測定サービスを実施している。この検知管を用いた測定では、数十分程度の測定で圧縮空気中の水分・油分濃度を検出することができる。一般的なエア品質測定サービスと比べて期間と費用を大幅に抑えられるため、現状を簡易的に把握するための検査方法としては最適といえる。
また欧州においても、オイルフリーコンプレッサーの普及率は日本より低い。東南アジアとは異なり圧縮空気品質の重要性は認知されているが、省エネ意識の高さなどから通常の用途ではオイル式が採用されることが一般的で、適切なドライヤーとフィルターを用いて圧縮空気の品質を確保することが多い。しかしオイルミストフィルターは二次側へのオイルミストの持ち出しが微量ではあるが発生する。
本来、オイル式を用いることが好ましくない用途でもオイル式が用いられているケースは少なくない。そこで当社では、オイル式の圧縮空気の品質を手軽かつ確実にオイルフリー水準に高めることができるツールとして、フクハラ製のオイル・バスターの販売を欧州でも開始する予定となっている。併せてこの4月17日からドイツのハノーバー国際見本市会場で開催される「Comvac展」にフクハラと共同出展し、圧縮空気の品質向上の重要性と対策手法についてPRを行うことを計画している。
工場のユーティリティーとして古くから幅広く使用されている圧縮空気を供給するコンプレッサーでは、省エネ性の面では早くから改善の取り組みが行われており、インバーター式コンプレッサーの普及などが進んできた。最近ではそれに加えて、環境の観点から圧縮空気の品質向上が求められるようになってきている。そのような需要に応えるため、当社はフクハラとともに、日本および海外市場において圧縮空気改善の提案活動を進めていきたい。
【執筆者】
アネスト岩田
エアエナジー事業部
竹脇 邦幸