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事業への強い思い、息づく独創性
優秀経営者賞
A-TRUCK 代表取締役社長 守屋 慶隆氏
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A-TRUCK 代表取締役社長 守屋 慶隆氏
冷凍トラックレンタルでトップシェア
A-TRUCKは、コンテナに冷凍機能を搭載したトラックのレンタル会社だ。取引先は物流企業、イベント会社から町の商店などで、トラックを貸し出すだけでなく、レンタルで使っていた中古トラックの販売も手がけている。
守屋慶隆社長は、元々輸送用冷凍機の販売会社に勤めていた。そのなかで冷凍トラックの代車ニーズが高いことに着目し、2007年に起業。ニッチな業態ながら国内ではトップクラスのシェアを誇り、創業2年目には売上高6億円、10年目には同50億円とトラック保有台数800台を達成した。2035年にはトラック保有台数3500台、トラックレンタル事業として日本一を目指している。
A-TRUCKの強みは“専業”であることだ。競合は大手リース会社のトラック部門だが、同社の冷凍トラックの方が最新型で高性能である。「冷凍庫が急に壊れてしまった」など、緊急のニーズにも土日を含めて対応していることや、代車で事業用ナンバーの車を短期リースするサービスも実施。専業だからできるきめ細かい対応が、顧客から高い評価を得ている。
独立系ゆえ、外部とも積極的に連携している。大手損害保険会社とタッグを組み、冷凍トラックの代車ニーズを取り込んだ。19年には東証プライム上場の物流会社CREと資本業務提携。独立性は維持しつつ、他者連携で事業網を拡大している。
女性活躍にも積極的で、取締役9人(3人が社外取締役)のうち2人が女性である。社員も約半数が女性だ。産休・育休・時短勤務など、結婚・出産に伴う女性の働き方の変化をサポートする体制を備えているのはもちろん、パウダールームも設けるなど、女性の働きやすさを追求している。
優秀経営者賞
小湊館 代表取締役社長 稲葉 靖氏
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小湊館 代表取締役社長 稲葉 靖氏
“おもてなし”の旅館経営
千葉県鴨川市、勝浦市で3軒の旅館を経営している。祖業であり1967年に開業した「海の庭」、静かな山間にたたずむ純和風造りの「緑水亭」、勝浦市にあった東芝の保養所を2014年に購入改修した「翠海」だ。宿泊客は夫婦が中心で、特に幼児をつれた夫婦が多いという。
同エリアの旅館は、客室から海が見えるオーシャンビューの部屋がほとんどだ。だが同社の「緑水亭」は山間部に立地し、海が見えない。そのハンディを克服するために稲葉靖社長は「施設・サービス・料理」のクオリティーを徹底して追求した。特に施設の清潔感にはこだわっており、畳にはほつれひとつない。トイレの衛生陶器やエアコン、給湯器などは、突然の故障に備えて常に10台近く在庫を保有している。これは、修理対応で顧客に不便な思いをさせないためだ。
20年春は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、旅館業界全体が大きな痛手を被った。小湊館も休業を余儀なくされたが、夏から「Go to Travel」キャンペーンが始まったことで売り上げが急回復。21年8月期は、コロナ前以上の売上高、利益を実現し、22年8月期は過去最高の業績となった。今後は、超貴賓室(仮)という高価格帯の客室を新築し、さらなるサービス追求。事業成長を目指していく考え。
「従業員が気持ちよく働けないと、真の顧客サービスはできない」との考えから、旅館業界では珍しい休業日制度を導入している。月6日、休業日を設けることで労働環境が改善し、従業員が余裕を持って働けるようになった。従業員の定着率がアップし、宿泊客へのサービスも向上したことで、売上・利益ともに休業日導入前に比べ増進。〝働き方改革〟が収益拡大に結びついた。
優秀経営者賞
ミヤコシ 代表取締役社長 宮腰 亨氏
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ミヤコシ 代表取締役社長 宮腰 亨氏
トップクラスの特殊印刷機メーカー
印刷機械メーカー。主に帳票類(ビジネスフォーム)の印刷機械、印刷物の宛名などを印刷するデータプリント用印刷機械、ラベル用印刷機械や包装用印刷機械を手がける。
さまざまな機能や素材、加工に対応した印刷機械をオーダーメードで製造している。設計から製造、販売、保守メンテナンスまで一貫して行うことで、スピーディーな対応が可能となっており、取引先の利用状況や細かなニーズを把握して良好な関係を築いている。
従来はビジネスフォーム、データプリント用の印刷機械を主に製造していたが、宮腰亨社長に交代した2013年以降、ラベル用印刷機械と包装用印刷機械を伸ばしてきた。将来はラベル用印刷機械と包装用印刷機械の事業規模をビジネスフォーム、データプリントと同等の事業規模に育てる方針だ。
15年にはスペイン・マドリードに現地合弁会社を設立し、ヨーロッパでの市場拡大を行った。スペイン、ポルトガルを中心にヨーロッパ各国で販売実績があり、着実に海外展開を進めている。
22年には世界初となる、人工知能(AI)を搭載した印刷機を開発した。印刷状態をカメラやセンサーで監視し、異常が発生するとオペレーターに助言するシステムを搭載している。印刷会社では熟練のオペレーターが不足しており、その人手不足、教育不足を補う機械として期待が寄せられている。なお、本プロジェクトの推進には、内閣府のプロフェッショナル人材戦略事業を活用。同社の長年の技術力と外部の専門知識を組み合わせ、イノベーションを創出した。
地元採用に積極的。千葉、県内大学などによる産学官連携協議会を通じ、地域社会の発展に貢献している。
ひまわりベンチャー育成基金賞
BEAUTE DE LABO 代表取締役 渡辺 政彦氏
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BEAUTE DE LABO 代表取締役 渡辺 政彦氏
エステ化粧品 SNSでPR 急成長
兵庫県・淡路島出身の渡辺政彦社長は、医薬品の営業やコンサルタント会社で企画などを担当。それらで得た営業力・企画力を武器にエステ業界向けの化粧品(美容液、クリーム、洗顔料など)の企画・製造・販売を行う「BEAUTE DE LABO(ボーテデラボ)」を2017年に立ち上げた。ボーテデラボは、フランス語で「美の研究所」という意味だ。
エステ業界はパイが限られており、市場に大きな変動が少ない。そんな凪(なぎ)の世界でありながら、ボーテデラボは創業から5年足らずで中小のエステサロンや美容室など7700店舗以上と契約。その規模はエステ業界用化粧品として5本の指に入る位置に達しているといわれている。
化粧品会社は多額の広告宣伝費がかかるのが常だが、同社はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を駆使し広告宣伝費を抑えている。
さらに同社製品は作用面が高く評価されており、エステオーナーは勿論、インフルエンサーや芸能人も日常的に愛用。彼らがSNSで発信することでさらに評判が高まるという循環だ。渡辺社長自身も、インスタグラムのフォロワー数3万人である。
中小の化粧品会社は、企画のみ、商品開発のみ、販売のみ行う会社がほとんど。ボーテデラボは企画から成分開発、処方、製造、営業まで一貫して担うビジネスモデルを構築しており、健全かつ発展的な成長を遂げている。
香取市を拠点とするのは、社長の妻の故郷だから。渡辺社長は、将来はグループ全体で100人の雇用を創出し、千葉を美容業界の最先端エリアにしたいという夢を描いている。地域への寄付活動にも熱心で、22年に紺綬褒章を受章した。