-
業種・地域から探す
知事賞など受賞者5人決定
革新性・挑戦意欲に富む経営手腕評価
千葉県優秀企業経営者表彰は、1996年に「千葉県ベンチャー企業経営者表彰」として創設された。主催は千葉産業人クラブ(白鳥豊会長=白鳥製薬会長)。千葉銀行とひまわりベンチャー育成基金の協力を得て、千葉県と日刊工業新聞社の後援で運営している。
同表彰は、アントレプレーナーシップ(企業家精神)を発揮して事業を伸ばし、あるいは生み出す経営者を表彰することで、千葉県経済の活性化を後押しするとともに、経営に関する新しい考え方や意思決定のヒントとなる情報を広く発信するのが目的だ。これまでに26回開催し、延べ200人の経営者を表彰してきた。最も優れた経営者に「知事賞(最優秀経営者賞)」(副賞50万円)を贈り、「優秀経営者賞」(同10万円)は3人に贈呈。同時に創業10年未満の経営者を対象とした「ひまわりベンチャー育成基金賞」(同10万円)も選定している。
27回目となる今回は19人の応募から、書類選考(一次審査)を経て11人を選定。各社を訪問しインタビュー調査を行った上で、2月に最終審査会を開催した。
審査員はちばぎん総合研究所の前田栄治社長と千葉県商工労働部産業振興課の新井洋副課長、千葉大学の武居昌宏副学長、千葉県産業振興センターの中村耕太郎理事長、千葉県産業支援技術研究所の西沢和夫プロジェクト推進室長、千葉銀行法人営業部の齊藤成部長、ひまわりベンチャー育成基金の今泉光幸副理事長、千葉産業人クラブの白鳥豊会長が担当した。産学官金それぞれの視点から意見が出され、厳正な審査が行われた。
知事賞に輝いた拓匠開発の工藤社長は、平屋住宅の分譲をメインにした不動産デベロッパー。一般的に住宅の販売は、駅に近いかどうかが重要となる。そのため、狭い土地に二階建て、三階建ての住宅を建てることが多いが、拓匠開発が提案する住宅コンセプトは真逆。駅から遠い場所に、平屋造りの住宅だ。駅からの距離はあるが、閑静であり、広い住宅でゆったりとした暮らしを営める。同コンセプトで作られた平屋住宅は、着々とファンを増やし、今や拓匠開発の確固たるブランドとなった。工藤社長の就任以来、売上高は13期連続の増収。従業員数も増加し続けており、文句なしの知事賞となった。
優秀賞となったA-TRUCK(千葉県船橋市)の守屋慶隆社長は、冷凍トラックのレンタル事業をてがける。ニッチな業態だが、国内トップクラスのシェアを誇り、創業2年目にして売上高6億円、10年目で同50億円を実現するなど成長が著しい。女性活躍に積極的で、女性が働きやすい職場づくりにも力を入れている。
小湊館(千葉県鴨川市)の稲葉靖社長は、同エリアで3件の高級旅館を営む。千葉県の海沿いというと、窓から海が見える客室を想像するが、同社の旅館「緑水亭」は山間部にあり海が見えない。その分、部屋のクオリティーとサービスに力を入れ、リピーターを獲得している。従業員の労働環境改善にも注力し、業界では珍しい定休日も設けている。
ミヤコシは特殊印刷機メーカー。宮腰亨社長は13年に就任して以来、多様な顧客ニーズに対応した印刷機の開発・販売や、ラベル用印刷機械のヨーロッパ市場でのシェア拡大のためスペイン・マドリードに現地合弁会社を設立するなど積極経営を続けている。22年には、印刷オペレーターの経験・技量不足を補うAI(人工知能)搭載型印刷機も開発した。
ひまわりベンチャー育成基金賞を受賞したのは、BEAUTE DE LABO(ボーテデラボ、千葉県香取市)の渡辺政彦社長。同社はエステ業界向けに自社ブランド化粧品を販売している。中小の化粧品会社は企画や販売のみを行う会社が多いが、同社は企画と販売の両方を手がける。年内には香取市内で、最新設備を完備した自社工場も完成する予定だ。
知事賞(最優秀経営者賞)
拓匠開発 代表取締役 工藤 英之氏
-
拓匠開発 代表取締役 工藤 英之氏
社長就任後、13期連続成長
拓匠開発は、千葉県、千葉市を基盤とした不動産デベロッパーだ。集合住宅や店舗はほぼ手がけず、一戸建て、それも平屋造りの戸建住宅に注力している。千葉県で年間100棟の一戸建て住宅を建設しているが、そのうち8割が平屋住宅。静かな環境に建つ広々とした平屋住宅は、拓匠開発の確固たるブランドとなっている。
創業者である工藤社長の父は、宅地開発に関する測量・調査・開発許認可設計から事業をスタートした。その後、宅地造成工事へと事業展開し、工藤社長が社長に就任した09年から新築一戸建て事業に参入した。
平屋の分譲住宅を始めたきっかけは、工藤社長がオーストラリアを訪問した時に、住友林業がメルボルンで手がけていた平屋造りの分譲住宅を見たことだった。駅から近くて狭い敷地に複数階建ての住宅を建てる日本と違い、駅からは遠いものの自然豊かな地に広い住宅を建て、伸び伸びと暮らしていた。これと同じ事は日本でも必要では、と考えた工藤社長は、平屋の住宅分譲を始める。最初はサーファーなど趣味人に評価され、やがて多くの顧客が平屋住宅を求めるようになった。逆張りの経営は奏功し、社長就任以来13年連続で増収が続いている。
同社の住宅事業は、家を売って終わりではない。ポリシーとして「Community&Personality」を掲げ、「家」を買うと「街」が付いてくる、をキーワードに、分譲地のコミュニティースペースづくりにも真剣に取り組む。通常、分譲住宅地は最大限の区画数を取ることで利益率を高めるが、当社は利益につながらないものの住民に必要なスペースを確保する。中には自社でベーカリーを運営する分譲地もある。
特に「椿森コムナ」という飲食兼コミュニティースペースは、千葉公園の隣地という好立地でありながら、ツリーハウスなどを備えた共同空間とし、地域の住環境向上に役立てている。この活動は当社の知名度を高め、結果的に「せっかくなら地元に貢献している拓匠開発に頼みたい」という依頼が増えた。
コーポレート・アイデンティティからセールスマーケティングまで、企画・デザイン部門を内製化しているのも特徴だ。広告のデザイン費を内製化したというだけでなく、経営理念をスムーズにデザインに落とし込むことにもつながっている。デザインにこだわる企業は増えているが、同社のレベルは桁違い。椿森コムナをはじめ、計11プロジェクトでグッドデザイン賞を受賞している。
近年は本社の近くにある「千葉公園」を生かした街づくりのビジョン「ネバーランド構想」を掲げる。千葉駅から遠いが、自然と歴史が豊富な同エリアで、新しいモノ・コトをプロデュース。新たな価値の創造を目指している。