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小型・軽量・省電力化―AGV・ロボ・医療機器で活躍
幅広い用途 高付加価値化進む
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需要が高まる無励磁作動形電磁ブレーキ(三木プーリ提供)
クラッチ・ブレーキは各種産業分野での自動化や、機械産業の工場自動化(FA)によるメカトロニクスの要として、需要が拡大してきた。1990年代以降は乾式単板クラッチ・ブレーキからサーボモーターへの転換が進み、一般産業用の乾式単板クラッチ・ブレーキの需要は縮小傾向にある。一方で、サーボモーターの普及により、国内外の市場では保持用電磁ブレーキの市場拡大が見込まれている。
無励磁作動型電磁ブレーキは電磁力をブレーキの解放に使用し、ブレーキ力はスプリングまたは永久磁石で発生させるタイプのブレーキで、昇降機や機械の暴走防止など、停電時や緊急時にブレーキが必要な場面で多く使用されている。インダクションモーターやサーボモーターに直接組み込むことで、一体化させたブレーキ付きモーターとして市場に展開するため、モーターメーカーからの需要が増えている。
ツースクラッチ・ブレーキは電磁クラッチの中で「かみ合い式」と呼ばれる機構で、のこぎりのような形状の歯をかみ合わせてトルク伝達をおこなう。そのため電磁クラッチ・ブレーキと比較し、①小型で大トルクを伝達できる②連結後の滑りがなく確実なトルク伝達が可能③乾式・湿式使用(オイルミスト環境を含む)が可能―といった特徴から、印刷機械、工作機械やドアなどのロック機構として多く利用されている。
マイクロクラッチは小型モーターと比較して応答性が高く、制御の簡便さや、省電力、安価という特徴により、業務用複合機をはじめとするOA機器の紙送り機構で多く利用され、近年は発展途上国で需要が増加傾向にある。
物流分野 効率化を支える
物流分野ではネット取引の急拡大による人手不足や時間外労働規制などで自動化需要が高まり、AGVの導入が進む。荷物の搬送や、ピッキング作業に用いる棚を運ぶなどの役割を果たし、ロボットアームを搭載したタイプも発売され、工場や倉庫内の業務効率化に貢献している。駆動源には排出ガスや騒音の出ないバッテリー駆動のモーターが使用され、異常時の停止やロボットアームの保持停止、停車時の惰走防止に電磁ブレーキが用いられている。AGV本体が電源オフ時のブレーキ機構を考慮し、スプリング力でブレーキトルクを発生させる無励磁作動型ブレーキが多く採用されている。
協働ロボなど 普及追い風
また、ロボット向け電磁ブレーキの需要も高まっている。経済産業省が2013年に公表した「ロボット産業市場動向調査結果」によると、35年には国内のロボット市場が10兆円規模になると予測されており、製造分野やサービス分野などでさらなる成長が見込まれる。FAや協働ロボットの普及、医療・福祉向けロボットの開発・実用化も追い風となる。
ロボット向け電磁ブレーキはサーボモーター内へ組み込まれたり、減速機と一体になるなど、アクチュエーターとしてロボットの関節部分に搭載され、定位置で軸の保持や、緊急時の動作停止の役割を担っている。安全に動作停止ができるよう応答性が良いブレーキが適しており、スプリング力で急速にトルクを出す構造の無励磁動作型が適用されている。
今後はAGVや協働ロボットなど、人と同じ空間に導入される機器が普及し、安全装置としてブレーキやクラッチは重要性を増す。小型化・軽量化・長寿命化・省電力化といった性能向上とともに、安全性の確保や、予知保全などの高付加価値化が求められる。