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エレクトロニクスと共に進化
国内売上高48%増
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オシロはエレクトロニクス分野の研究開発から生産、保守、学校教育まで幅広く活用される -
オシロは広帯域化や波形の視認性、操作性の向上が図られ、ノイズに埋もれた信号や、たまにしか発生しない間歇(かんけつ)的な信号を捕捉するなど、エレクトロニクス産業の発展と共に進化してきた。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)によると2021年度のオシロの国内売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響による投資抑制の反動と、炭素循環社会に向けた投資の増加で、前年度比48・6%増の97億円となった。
また高効率電源の開発用途や自動車・車載需要、教育機関の研究予算によるオシロ購入量増大もけん引材料とした。
22年度は窒化ガリウム(GaN)パワー半導体需要に加え、次世代通信の第6世代通信(6G)や高速シリアル通信、ミリ波通信の開発需要、自動車やバイクの電動化による開発に伴うプロトコル解析と波形観測ニーズがオシロ需要をけん引すると考えられ、国内売上高は97億円を継続する。
さらにパワーエレクトロニクスで使われる電力変換装置の開発や炭素循環社会の潮流に沿った新技術投資、スマートシティーで使用するセンサーなどの開発を背景に需要は増大が見込まれ、26年度は101億円を予想している。
微細・高速信号細部まで観測 12ビットオシロ
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テクトロニクスは12ビットオシロや新製品のモバイルオシロも提案 -
リゴル・テクノロジーズが中国の大学に納めたオシロを中心としたシステム
オシロはこれまでデジタル信号のプロトコル解析を可能とするミックスド・シグナル・オシロ(MSO)や、高周波(RF)測定機能、信号発生機能の内蔵や独自ASIC(特定用途向けIC)を搭載するなど高機能化したモデルが投入されている。
こうした中、岩崎通信機、米テクトロニクス、独ローデ・シュワルツ、中国リゴル・テクノロジーズの4社が販売する垂直分解能が12ビットのオシロが注目を集めている。12ビットという高分解能化で、より微細な信号変化や高速信号を確実に捕捉し、細部まで観測できる。
これら4社のオシロはチャンネル数や機能、性能、操作性、測定要求などそれぞれ特徴を持つ中、周波数帯域でエントリーのクラスからミドル、ハイエンドまで市場に出そろったことで、ユーザーの選択幅の拡大に加え高分解ニーズの本格的な普及に期待が高まる。
テクトロニクスの8チャンネルで12ビットのオシロはMSOタイプをそろえる。20年9月に発売した高速シリアル通信や電源品質解析に応えたハイエンドの「6シリーズB」と、22年1月に投入した電源回路の信号品質解析や評価に最適な周波数帯域350メガー2ギガヘルツの「5シリーズB」を用意している。
また12ビットではないが、22年6月にタブレット型のMSOを発売。車載の電子制御ユニット(ECU)など半導体を組み込んだ機器が増える中、同社は「実車に搭載して測定やデバッグができる」とし、モバイルオシロという新しいカテゴリーを提案する。
岩崎通信機はパワー半導体の動特性解析に応えるため8チャンネルで12ビットのオシロを20年11月に発売。パワエレ市場をメーンに提案する中、22年は「ユーザーの脱8ビット、12ビットシフトが明確になった」と同社は感じている。炭素循環社会に向けて省エネ開発が加速。エネルギー損失の抑制課題を受けて、同社のオシロ需要は堅調に推移している。
また、インバーターの容量が大きくなるに従い、測定信号の波形に揺らぎが見られるが、同社オシロは安定した信号を観測できることでもユーザーから高い評価を得ている。
23年度は光絶縁プローブの発売を予定しており、自動車・車載、パワー半導体分野に注力する。
ローデ・シュワルツ・ジャパンは、新世代オシロをコンセプトにした12ビットのMSOを22年9月に発売し、好調に推移している。「波形更新速度とスペクトラムアナライザー機能が、ユーザー要求に合致した」と同社は述べる。半導体を組み込んだ機器やIoT機器の開発などの用途に広く提案した。
組み込みなどのデバッグは、時間領域と周波数領域の両方の測定が求められる。自社ASICと低ノイズ設計により、時間領域での測定に加えて、高速のFFT(高速フーリエ変換)処理が可能なスペクトラムアナライザー機能で、低コストでRF信号が容易に観測できる。23年はこのスペアナ機能の強みを生かして、無線関連開発や電磁妨害(EMI)の研究開発に訴求を図りたいとしている。
リゴルジャパンの22年の日本市場売上高は、前年比10%増で推移した。周波数帯域1ギガヘルツと800メガヘルツのミドルクラスのオシロやデジタルマルチメーターなどがけん引した。オシロはエレクトロニクス企業や教育機関の実験や研究向けに需要がみられた。また中国・蘇州の本社はオシロをはじめとするシステムを大学に納入し、実績を伸ばしている。
同社は22年8月に自社開発のASICを搭載したエントリークラスの12ビットオシロを発売した。実機で12ビットと8ビットと波形観測画面を比較し、12ビットオシロの市場認知を広げてきたことで引き合いが増加しているという。同社の本社発表では「これから開発するオシロ設計は12ビットを中心とする」と強調しビジネスチャンスを狙う。
【ドイツ老舗物語】ローデ・シュワルツ 未踏の分野に挑む
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創業時の測定器に手を添えるロタール・ローデ氏(右)とヘルマン・シュワルツ氏 -
世界に先駆けて開発・発売したネットワークアナライザー -
ローデ・シュワルツは毎秒100万回の波形更新速度を実現した「R&S RTOシリーズ」で、オシロ市場に参入した
独ローデ・シュワルツはミュンヘン市に本社を構え、2023年で創業90周年を迎える。産業界と政府機関から信頼できるパートナーとして認知されている。
同社は社名の由来でもある大学時代の友人Dr.ロタール・ローデ氏とDr.ヘルマン・シュワルツ氏が創業した。2人は「高周波(RF)エンジニアリング」という未踏の分野に踏み込み、1930年代に世界初の水晶時計を発表した。
50年代には世界に先駆けてネットワークアナライザーや、電磁妨害(EMI)テストレシーバーなどの各種製品を市場に投入。今では業界スタンダードの地位を確立している。
グローバルテクノロジー企業として①電子計測②テクノロジーシステム③ネットワーク/サイバーセキュリティーの三つの事業部門から常にユーザーの具体的要望に合わせたビジネスを展開している。
同社がオシロスコープ市場に参入したのは2010年6月。先行企業との差別化を図るために数十億円規模の投資でASICを自社開発。当時はクラス最速となる毎秒100万回の波形更新速度を実現した「R&S RTOシリーズ」を発売した。
これまでの13年間で製品ラインアップを拡充し、ミドルクラスの「同RTE/A/Mシリーズ」、そしてエントリークラスの「同RTBシリーズ」や絶縁型ハンドヘルドタイプの「同RTHシリーズ」を継続投入。同時に、各種プローブをそろえユーザーの測定要求に応えている。
さらに周波数帯域16ギガヘルツモデルに加え、新製品の「同MXO4シリーズ」を発売。RF測定器メーカーとして定評のある低ノイズ設計とASICの組み合わせで、高速フーリエ変換(FFT)でノイズ評価にも使用できるオシロに仕上がっている。
同社日本法人のローデ・シュワルツ・ジャパンは23年4月で創立20周年となり、日本国内のモノづくりにこれからも貢献していく。
アメリカ展示会リポート
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APECでパワエレ測定に欠かせないシステムを提案した岩崎通信機ブース
岩崎通信機は米フロリダ州オーランドで3月19-23日に開催された、最先端デバイスを活用したアプリケーションなどを発表する世界的なパワーエレクトロニクス学会「APEC(The Applied Power Electronics Conference)2023」に出展した。
高分解能・広帯域オシロスコープ「DS―8000シリーズ」と、独PMKの新製品で業界トップクラスの周波数帯域となる1・5ギガヘルツを実現した光絶縁プローブ「FF-1500シリーズ」を交え、測定課題解決に向けて訴求した。
窒化ガリウム(GaN)デバイスを搭載した基板で、これまで評価測定が難しかった高電圧のスイッチング動作を実測しながら提案した。
既存の光絶縁プローブよりも小型化しており、ゲート信号を確実に捕捉し観測の容易さを紹介した。これからのパワエレ測定に欠かせないシステムとして、来場者から高い関心と共感を集めた。これからシステム提案を国内外で行うに当たり大きな自信となった。
APECは米国を中心にアジア、欧州の炭化ケイ素(SiC)やGaNデバイス、これらを利用した技術成果が発表されている。当社では海外で短期間に市場開拓と売り上げに貢献できるため重要視している。
また米国向け主力商品に位置付け、ピーク電圧やピーク電流、微少な漏れ電流などを評価する半導体カーブトレーサーも出品した。
【リポーター】岩崎通信機 計測ソリューション営業部 フィールドサポート担当 長浜 竜 氏
電子測定器の長期ガイドライン 4月1日改定
地球環境保全の意識の高まりにより、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の重要性が増している。電子測定器においても「良い製品を長く使う」「適切な手順で再資源化する」の要求が強まっている。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)電子測定器委員会はオシロスコープをはじめ、電圧・電流・電力測定器、スペクトラムアナライザーなどのメーカーを対象に4月1日から「電子測定器の長期ガイドライン」を改定する。
同委員会は電子測定器の長期使用に関して、時間や使用環境による経年劣化を考慮し、長期使用による寿命や予防保全について電子測定器の利用者が正しく理解して安全で適切な利用を促すことを目的に2010年にガイドラインを策定した。
こうした中、①技術進歩による電子測定器に搭載する電子部品の変化②地球環境保全に向けた資源の有効利用やリサイクルの促進③利用者への情報発信を背景に改定を行った。
電子測定器では多くの電子部品が搭載され、消耗品と有寿命部品が含まれる。消耗品は劣化や破損が生じた時に利用者自身で購入し、取扱説明書に示された手順で交換できる。
有寿命部品は電子測定器の使用頻度や使用時間、使用環境(温度・湿度・振動・腐食性ガスの有無など)により、定期的な点検による有寿命部品の交換、有寿命部品を搭載した基板の交換もしくは製品の更新が必要となる。
ガイドラインでは有寿命部品を単体で交換するか、ユニットや基板の単位で交換するか、または測定器を更新するかは電子測定器メーカーが判断し利用者に勧めることを予定している。
電子測定器は精度維持のために定期的な校正(キャリブレーション)が求められる。使用環境や利用者が要求する精度などによって校正周期は異なるため、利用者は校正周期や校正点、判定基準を自ら決める必要がある。
メーカーが推奨する標準的な校正周期、推奨する標準器と校正手順および校正点、推奨する方法で校正を行った時の判定基準などで利用者が適切な判断ができるように可能な範囲で情報発信などの提供をガイドラインでは勧めている。
同委員会はメーカーに対して、このような内容を盛り込んだ改定ガイドラインの理解と、状況に合わせた検討と可能な範囲での対応に期待を高める。
消耗品と有寿命部品一覧など詳細はJEMIMAホームページへ。