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再開発進む大宮 風格で魅せる浦和
さいたま市は浦和、大宮、与野の旧3市が合併して2001年に誕生した。今も大宮と浦和は市の中心を共に形成する。大宮駅東口では再開発事業の象徴となる「大宮門街(かどまち)」が2022年4月に開業した。駅西口でも複数の再開発プロジェクトが進む。一方、浦和駅西口南高砂地区では、超高層マンションと商業施設、公共施設が入る複合ビルが26年に完成予定。市は2月に「浦和駅周辺まちづくりビジョン」も策定した。
大宮駅東西で再開発事業
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昨年4月にJR大宮駅東口に開業した「大宮門街」
2022年4月、JR大宮駅東口に「大宮門街(かどまち)」が開業した。埼玉県を地盤とする大栄不動産と三井不動産が参画。オフィスや商業店舗のほか、公共施設として市民会館おおみや(レイボックホール)も入る複合ビルで、地上18階、地下3階建て、延べ床面積は8万2139平方メートルに及ぶ。この再開発を起爆剤として、駅東口周辺の再開発事業が動きだすことにより、大宮の街づくりに一層の弾みが付くことが期待されている。
具体的には「大宮駅東口大門町3丁目中地区」「大宮駅前大門町1丁目中地区」「大宮駅東口南地区」の合計3地区が、23年度の都市計画決定を目指して準備を進めている。
さいたま市の「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」は駅周辺の街づくり、交通基盤整備、駅機能の高度化を三位一体で進める。これにより東日本の玄関口としての大宮や、さいたま市全体のプレゼンスを高めるのが狙いだ。市が18年に構想を策定して、21年には『大宮GCSプラン2020』が策定された。
さいたま市はGCSの新たな都市戦略として「グリーン・キャピタル・ストラテジー」を打ち出すことを検討する。「国内外に発信するグリーン社会先導都市への挑戦」を進める。大宮には氷川神社や氷川参道、見沼田んぼ、盆栽などがある。例えば開発街区が街づくりを行う際の公共貢献でグリーン・キャピタルへの貢献を求め、それに応じた容積率を付与するなど、街づくり促進とグリーン・キャピタル創造に取り組んでいく。
また、大宮駅西口でも複数の再開発事業が立ち上がっている。「大宮サクラスクエア」は24年7月完成を目指して工事が進められており、「大宮初の住・商複合再開発」として注目されている。事業名は「大宮駅西口第3-B地区第一種市街地再開発事業」で地上28階、地下2階建ての商業施設と高層マンションの複合施設などを建設する。サクラスクエアの西側の「大宮駅西口第3-A・D地区」では、22年3月に再開発事業の組合設立と事業計画認可が出された。
一方、駅西口南側の桜木町1丁目では、23年に二つのオフィスビルが相次いで完成する。5月に完成する「(仮称)大宮桜木町1丁目計画」は13階建て延べ床面積2万682平方メートル。12月に完成する「大宮区桜木町複合施設ビル新築計画」は地上22階建て延べ床面積は4万2690平方メートル。ホテルやオフィスのほか、商業施設などが入る。
さいたま市は駅西口近くにある桜木駐車場用地の活用事業者公募を始めた。面積は約1万8000平方メートル。定期借地権設定契約で基準貸付料は年約1億3500万円。10月に優先交渉権者を決める計画だ。大宮駅周辺の街づくりは、さいたま市にとって重要な政策。清水勇人市長のリーダーシップにより、それぞれの計画をスピード感を持ちながら、着実に推進していく方針を示している。
浦和駅周辺まちづくりビジョン策定
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浦和駅西口南高砂地区再開発事業の完成イメージ
さいたま市は2023年2月、「浦和駅周辺まちづくりビジョン」を策定した。「洗練された伝統と感性豊かな文化が息づく、風格で魅了する都心・浦和」を将来像に掲げた。「浦和のまちの魅力が成長する“リ・デザイン”」と「浦和のひとが成長し続ける“サスティナブル・サイクル”」を街づくりの方針として、3月にはビジョンを紹介するキックオフシンポジウムも開いた。
浦和駅西口では23年1月、「浦和駅西口南高砂地区第一種市街地再開発事業」の新築工事が着工した。完成予定は26年6月で、地上27階、地下2階の超高層複合ビルを建設する。525戸のマンション、店舗・事務所のほか、市民会館うらわと子育て支援センターうらわが機能移転する。
大宮駅 ハブとしての注目度アップ
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JR東日本 執行役員大宮支社長 森 明 氏
さいたま市大宮区にあるJR東日本大宮支社は、埼玉県などを中心とする路線や駅を管轄する。JR大宮駅は東日本の玄関口であるとともに、首都圏と東日本を結ぶ交通結節点でもある。JR東日本の森明執行役員大宮支社長に、大宮駅の役割や駅東西周辺で進んでいる再開発事業、さらに浦和駅や埼京線沿線も含めたさいたま市内での地域活性化策などについて聞いた。
―日本全体や東日本から見た大宮駅の役割は。
「東日本の玄関口であり新幹線が5方面に伸びている。首都圏と東日本を結ぶ交通結節点として重要な役割を担っている。また湘南新宿ラインや上野東京ライン、埼京線や京浜東北線などJR東日本の中でも重要な路線が通っている。東日本各地と首都圏との重要なハブの役割も果たしてきた。2024年には北陸新幹線が敦賀駅まで開業するほか、30年度末には北海道新幹線の新函館北斗駅から札幌駅まで延伸する計画で、ハブとしての注目度がさらに高まると期待している」
―街づくりにどう貢献していきますか。
「大宮駅のあるさいたま市は、首都圏の住みたい街で横浜や吉祥寺に次いで3位。住民が住んで良かった、旅行者が訪れて良かった、働く人が働いて良かったと思える暮らしづくりや街づくりを手伝えればと思う。この考えは、JR東日本グループ経営ビジョン『変革2027』の中でもうたっている」
―大宮駅周辺は複数の再開発事業が進んでいます。
「駅の東口も西口も再開発事業が行われている。切れ目なく再開発が行われているのは、大宮という土地柄ならではで、ポテンシャルが非常に高い。大宮に新しく来る人が、住んだり働いたりして良かったと思える街と駅にしていかなければならない。JR東日本として、駅の中央コンコースを利用したイベントや産直市などにより地域の魅力を発信していく。一方でわれわれの仕事は、鉄道の安全・安定が一番の土台にある。駅のホームドアをさらに整備していくことも併せて進め、安心して魅力ある鉄道施設を構築していく」
―「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」については。
「さいたま市により18年に策定され、21年には『大宮GCSプラン2020』が策定された。大宮駅をより便利で使いやすくするという方向性において一致している。支社でも専門窓口を設けており、将来に向けた勉強会や会議に参加するなど引き続き市に協力していきたい。駅から市街地への回遊性が生まれると、街も元気になって駅を利用する人も増えるという相乗効果につながればと考えている」
―3月16日を「おおみや鉄道の日」と定めました。
「大宮駅開業日である3月16日に毎年『鉄道のまち大宮』の魅力を地域とともに発信するイベントを開催していく。今年はスタートの年として、さいたま市を始め、今後一緒に『鉄道のまち大宮』を盛り上げていく地域代表を招いて『てつまちウェルカムボード』の除幕式を16日に開催した。今後、遠くの地域から大宮へ観光を求めて来る、大宮に食べたいものがあるから来るなど、大宮を目的地として来てもらえるように地域とともに『鉄道のまち大宮』の魅力を掘り起こしていく」
―大宮駅以外のさいたま市内の駅の利用促進や地域活性化は。
「浦和駅周辺は県庁所在地で行政機関もある。駅前の東西に大型の商業施設があり、住んでいる人も良い品に対する購買意欲が高い。駅を利用して普段は食べる機会のないパンを提供できないかという現場で働く社員からの着想で『えきパン』という催事を昨年8月と今年2月に開いた。社員が地元ベーカリーを1軒ずつ回って参加を募り、浦和駅のイベントスペースで販売した。非常に好評でこれまで実施してきた他の催事を上回る収益を上げたほか、『えきパン』で食べたパンがおいしかったので、直接お店に買いに来る人もいたようで、地域の活性化にも貢献出来た」
―埼京線沿線エリアの取り組みは。
「埼京線沿線には、若い子育て世代が多く居住している。沿線の価値向上に向けて駅型保育園などの子育て支援施設の開設や、地域交流に取り組んでいる。沿線活性化イベント『Saikyo Festa(サイキョウ・フェスタ)』では、今年は実施エリアを川越まで拡大するとともに、武蔵浦和駅で『えきパン』を実施した。職場間を横断したイベントで地域と一緒に盛り上げていこうと取り組んでいる」
―大宮支社の23年度の取り組みは。
「新型コロナウイルス感染症の影響から鉄道や駅の利用は、徐々に回復傾向にある。来年度はポストコロナに向けて攻めの姿勢で収益力の向上に取り組む。交通の結節点という利点を生かして首都圏の人に実際に地方に足を運んでもらう。運んでもらうために、地方の魅力を首都圏で紹介する。さらに隠れていた地域の魅力を新たに発掘する。この三つを柱に取り組んでいきたい」