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中小企業にもロボ導入広がる
簡単に設定できるアクチュエーターなど
産業用ロボットの導入は省人化や生産性の向上に不可欠な要素となりつつある。製造業が集積する中部地区では2022年6月に産業ロボと自動化システムの展示会「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2022」が初開催され、自動化に向けた機運が高まっている。さまざまな企業が技術を磨き、自動化やロボのニーズに合わせ新たな製品やサービスを生み出している。
CKD(愛知県小牧市)はステッピングモーターを搭載した電動アクチュエーターと、コントローラー「ESC3」を発売した。アクチュエーターは同社のエア機器と同じボディーを使用し高剛性を実現。ロボハンドなど先端部分のハンドリングや、加工対象物(ワーク)の搬出・多点位置決めなどさまざまな装置のIoT(モノのインターネット)化に貢献する。
二点制御の電動アクチュエーター「Dシリーズ」は、二点間の位置決めに特化したスクリュードライブ方式と、把持用途に特化したスプリングドライブ方式をそろえた。スプリングドライブ方式は駆動機構にバネを内蔵しワークへの衝撃を低減。さらに把持用途の際、動力電源が非通電の状態でも推力が発生するためワークが落下する心配もない。新たに追加したコントローラーESC3と接続が可能だ。配線だけで動作するためプログラムの知識も不要で、停止位置や速度調整もつまみやスイッチから設定できる。「Gシリーズ」は64点の位置決めでき、同社の高機能コントローラー「ECGシリーズ」と接続できる。
運搬作業の自動化進む
多くの人手が必要な運搬・物流を自動化したいというニーズは高い。近藤製作所(愛知県蒲郡市)は、自動車部品などを詰める通い箱のパレットからの積み下ろし作業を自動化する「部品箱用パレタイザーガントリー」を開発、発売した。自動車部品工場などで、通い箱をパレットで輸送するときに作業者のノウハウが必要な工程を自動化した。
異なるサイズの通い箱をパレットからはみ出さないように積むといった作業を自動化する。3次元(3D)カメラで画像認識し、異なるサイズや形状の箱を最適に積み付けできるようにした。併せて、隙間なく積み重なった箱の取り出しや、形状の異なる箱を兼用した際の取り出しに対応したほか、箱の歪みを吸収できるクランプ機構も開発した。
スター精機(愛知県大口町)は、ロボ走行軸ユニット「トラックモーション」を発売した。グループ会社でSIerのスターテクノ(愛知県岩倉市)での実績を生かした製品だ。
レール上をロボが移動し、1台で複数の加工機に対応。工作機械の前後工程、マテハン搬送の効率化を提案し、SIer向けに販売する。最大積載質量260キログラムの「TM10シリーズ」のほか、同480キログラムの「TM20シリーズ」があり、それぞれストローク長1000ミリ-7000ミリメートルを標準で設定。重量物をロングストロークで移送できる。
ナ・デックス(名古屋市中区)は19年からSIerとして、工場や倉庫の入出荷といった一連の業務の自動化を手がける「物流ソリューション」事業に取り組んでいる。主力事業である溶接機器の製造販売で培った溶接工程の自動化のノウハウを生かして始めた新規事業だ。既に10件以上の受注実績がある。
22年4月には新たに協働ロボを活用したパレタイジングシステムをパッケージ化して発売した。設計・製造はグループ会社のシンテック(新潟市北区)が担う。設置面積は1・メートル四方と省スペースで、協働ロボを使用しているため安全柵が不要。ハンドリフトなどで簡単に設備ごと移設できる。
行政ロボ活用支援
このほかにも、静岡県がロボ導入をサポートする補助金や研修を導入。さらにロボ商社のダイドー(名古屋市中村区)が岐阜市に支店を開設するなど中部地区全体で自動化に対する動きが強まっている。
浜松商工会議所などは22年12月に産業用・協働ロボの展示会「ハマロボ展」を初開催し、地元のSIer関連7社が出展。地元の中小モノづくり企業にアピールした。ロボによる生産性向上を狙い、新たなモノづくり振興へのきっかけ作りに弾みをつける。地元からはヤマハ発動機や日本設計工業(浜松市北区)などが出展し、ファナックや安川電機などのロボによるシステムを紹介した。2日間で計約400人が来場。モノづくり現場担当者らが興味深く、質問する姿などが見られた。
日本設計工業はカワダロボティクス(東京都台東区)のロボシステムを展示した。走行台車が低推力で駆動する点などを紹介した。ダイドーもファナックの協働ロボについてSIerの松下工業(静岡県磐田市)と連携し、PRした。デンマークのユニバーサルロボットの日本支社(東京都港区)は得意とする力覚センサーを内蔵し、扱いやすい協働ロボを展示した。
製造業だけでなく、さまざまな産業でロボットの活用が進む。愛知県では19年からサービスロボの実装に向けた実証実験を商業ビルやスタジアム、病院など県内4カ所で実施。22年度は清掃・消毒、運搬や製品のセールスプロモーションなど多彩な業務を担うサービスロボットを試験導入した。サービスロボットは店舗や医療施設、家庭でも需要が見込まれている。
3月20日にはサービスロボの安全性を確保するため、外装カバーのJIS規格が定められた。人との接触を検知し、衝突時には衝撃を吸収する外装カバーは、これまで共通の規格が設けられておらず、メーカーが個々に安全性を定めていた。規格が統一されることでより安全性が向上し、サービスロボの普及にもつながると見られる。
ロボカップジュニア・ジャパンアオープン2023名古屋、開幕
自立移動ロボットの技術競う
持続的に新たな技術や製品を生み出すには、人材の育成が欠かせない。中部地区では次世代を担うエンジニアを育てるため、さまざまなロボット競技会を誘致している。
「ロボカップジュニア・ジャパンオープン2023名古屋」が3月25-26日にポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催される。同大会は自律移動ロボ競技の国際大会「ロボカップ」のジュニア部門で、19歳以下の子どもが参加可能。ロボの設計・製作とプログラミングを通じて次世代のロボカップを担う選手とエンジニアを育てる。日本各地の地区大会を勝ち上がった193チーム477人が三つの競技リーグを通じて技術とプログラミングの腕を競い合う。各競技の上位は、7月に仏ボルドー市で開催される世界大会に出場する。競技は1チーム2台の自律型ロボを用いて得点を競う「サッカーリーグ」、災害救助を模した「レスキューリーグ」、ロボを使ったダンスや演技を披露する「オンステージリーグ」の3種目。
会場では競技会のほかに各競技を専門家が解説するガイドツアーや、三精テクノロジーズが開発した人型と自動車型に変形する大型搭乗ロボ「SR-01」の展示など来場者が参加できる無料イベントも開催する。
名古屋市は1997年にロボカップの第1回世界大会が開かれた都市。競技会と中部地区のロボ産業の活性化のためロボカップジュニア・ジャパンオープンの誘致が三年連続で決まっていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で21年、22年は中止となっていた。