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民間航空機需要復調
「エンジン」業績をけん引
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大手重工が欧エアバスの小型機「A320neo」向けに手掛けるエンジン
川崎重工業は月産レートがそれまでの1―2機から3―4機に増えると予測し、22年の第3四半期(10―12月期)以降に反映されると見通す。円安などを織り込み、23年3月期の航空宇宙システム部門の事業損益を25億円の黒字から60億円の黒字に上方修正した。
三菱重工業は「787」に対し、生産レートが一気に回復はしないと判断。回復のペースは鈍いとみるが、地域内の短距離路線を担うリージョナル旅客機「CRJ」関連事業が伸長するなど民間機事業に明るい兆しが出ている。
また、世界の航空会社は国内線向けに、欧エアバスの「A320neo」、ボーイングの「737MAX」と単通路の小型機の運航を再開している。重工大手はA320neoに搭載するエンジンを中心にスペアパーツの販売を伸ばし、業績にも貢献している。
なかでも、エンジンに特化するIHIは回復が鮮明だ。22年4―9月期の航空・宇宙・防衛部門の営業損益は前年同期が123億円の赤字から188億円の黒字に転換した。
川重もエンジン事業がけん引した。航空宇宙システム部門の事業損益は22年4―6月期に89億円の赤字だったが、同年7―9月期は59億円の黒字に転換。スペアエンジンの販売増が増益につながった。
三菱重工もエンジンのスペアパーツ販売と修理・整備(MRO)が好調。航空機エンジン子会社の長崎市の工場に第2期棟を建て、25―26年に稼働することを決めた。
重工業大手の民間航空機事業が復調し、再び業績のけん引役になってきた。ただ、航空宇宙領域で今後の焦点になるのは、中部地域の航空機産業が主力とする、米ボーイング787向けなど機体製造事業だ。三菱重工の小沢寿人最高財務責任者(CFO)は「ボーイングが出荷待ちの機体を抱えており、当社の生産レートに反映されていない」と明かす。各社の生産が増えるのは23年後半との見方があり、回復途上だ。
回復シナリオ、目標19年実績値
中部地域には日本の航空機・部品生産額の約5割、航空機体部品では約7割を生産し国内航空機産業の一大拠点となっている。三菱重工業や川崎重工業、SUBARU(スバル)など大手機体メーカーが主力工場を置き、中堅・中小企業を含むクラスター(企業群)の厚さは日本最大の規模を誇る。
2011年、同地域を米シアトルやフランス・トゥールーズに肩を並べる航空宇宙産業の世界三大拠点の一つを目指した「アジアNo.1航空宇宙クラスター形成特区」が動きだした。愛知県、岐阜県に加え13年に三重県、14年には長野県と静岡県が特区に加わった。同特区推進協議会の大村秀章会長(愛知県知事)は「素材から部品、組み立てまでフルセットのクラスターとしてさらに厚みが増す」と特区の質向上に期待感を示した。
20年の新型コロナウイルス感染症が拡大するまでは、順調に成長したものの、コロナ禍で航空機需要が大きく減少したことで、中部地域の航空機・部品サプライヤーは大きなダメージを受けた。ここから脱却し回復軌道に乗せるため、25年をめどに中部地域における航空機・部品や航空宇宙産業の生産高など4項目で19年実績値まで回復させる数値目標を設置した。中でも航空機・部品は、21年に4151億円まで落ち込んだ生産高を19年実績値の7796億円まで戻したい考えだ。
しかし、こうした回復シナリオも、三菱重工業が7日に「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を中止し、撤退することを発表したことで、影響を受ける可能性がでてきた。MSJの開発は20年に開発を事実上凍結しており、中部地域の航空機部品各社は冷静に受け止めている。ただ、三菱重工からの受注を見込んで実施した設備投資や確保した人員のやりくりに苦労した企業も少なくない。航空機産業が集積する愛知県の大村秀章知事は同日の会見で「影響を受ける中小企業にきめ細かな支援をしていく」と語った。
世界のジェット旅客機の需要予測では40年までに、民間航空機市場で約3万3000機の新造機需要が見込まれている。中部地域のサプライヤーが強みとしていた機体部品以外に、自動車部品や精密機械製造などで培った高い技術力を武器に、エンジンや装備品分野への事業領域への参入が本格化すれば、さらに伸びしろが期待できる。大村知事も航空機産業が地域のけん引役になるとの認識は変えておらず、支援を継続する考えを示した。
