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次世代を担う みんなと共に
産業界では、次世代の育成や事業承継が度々話題となる。熟練工の退職や、海外製造比率の高さも例外ではない。そのような状況下にあっても、子どもたちの発想の豊かさを大切にしたいと考える社会は意外と身近なところにある。県内の企業や大学などで、子どもたちがモノづくりの楽しさに気付くきっかけを作る取り組みがされている。社会全体でこのような取り組みが増えていくことに期待を込めて、その事例を紹介する。
「神奈川県青少年創意くふう展覧会」毎年開催
ごあいさつ/神奈川県発明協会会長(ニッパツ常務執行役員) 立川 俊洋 氏
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神奈川県発明協会会長(ニッパツ常務執行役員) 立川 俊洋 氏
次代を担う青少年の柔軟な発想や、「なぜ、どうして、不思議」という思いを大切に育てていきたいという思いを持って、本年度も神奈川県青少年創意くふう展覧会を開催いたしました。
本展覧会は、「発明くふうする楽しさと創作する喜びを体得し、創造性豊かな人間形成を目指すことを目的」として毎年開催しており、今回で81回目の開催となりました。長い歴史をもつこのイベントを通じて、多くの子供たちがたくさんの発明品を出展してきました。作品には時代を反映したものもあり、昨今ではプログラミングを活用した作品などが出展されるようになったことも、学校教育をはじめとした教育の変化を感じることができます。また、コロナ禍の影響もあるのか、人のために役立ちたいと考えた作品も増えた印象です。
神奈川の展覧会で優秀な成績を収めた作品は全国大会に出場します。昨年度は全国でも優秀な成績を収めました。こういった先輩に続くように毎年あらたな発明を目にすることは、私たち大人にも創造への意欲と楽しさ、作ることの原点を思い出させてくれるものであります。
今後も、ものづくりに興味を持つ青少年を応援することを続け、青少年の皆さんが日本の豊かさや多様性をさらに発展させていってくれることと期待しています。
豊かな想像力・科学技術への理解 大切に
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第81回神奈川県青少年創意くふう展覧会の審査会
神奈川県発明協会(立川俊洋会長=ニッパツ常務執行役員研究開発本部本部長)は次代を担う子どもたちに、夢を持ってモノづくりに取り組んでもらうため、神奈川県と共催で1942年から「神奈川県青少年創意くふう展覧会」を毎年開催している。2022年10月に開かれた第81回神奈川県青少年創意くふう展覧会(日刊工業新聞社など後援)には県内の小・中・高校生から129点の出品があり、優秀作品37点が選ばれて12月に表彰式が行われた。
同協会は発明の奨励と青少年の創造性開発・育成、知的財産権制度の普及啓発などを通じ、科学技術の振興と地域経済の発展に寄与することを目的に活動している。神奈川県青少年創意くふう展覧会は協会の青少年創造性育成事業として実施され、小学校低学年のときから年中行事のように、工夫を凝らした作品を出してくる“常連さん”も少なくない。
戸田里都子副会長(京三製作所知的財産部部長)は「自分の発明を見学者が見たり触ったりする様子を発明者がうれしそうに眺めていたり、他の発明者の作品を興味深く観察してインスピレーションを受けていたりと、ほほ笑ましい光景をたくさん見てきた」と話す。そして「この展覧会に向け、1年をかけてアイデアを練って完成まで一生懸命取り組む姿から、豊かな想像力と科学技術に対する理解をもった人材に育っていくだろう」と展望する。
こうした子どもたちの作品は全国的に見てもレベルが高く、神奈川県から全国組織の発明協会(内山田竹志会長=トヨタ自動車会長)による「全日本学生児童発明くふう展」に出品された優秀作品は2年連続で2作品が入賞しており、前回は最上位「恩賜記念賞」の栄誉に輝いた。高橋常夫副会長(エヌエフホールディングス会長)は「青少年の輝く未来への夢と発想を期待する」と手応え十分の様子だ。
神奈川県青少年創意くふう展覧会は学校を通じた応募のほか、地域組織の「少年少女発明クラブ」で取りまとめられた出品も多い。少年少女発明クラブは1974年当時の井深大発明協会会長(ソニー創業者)が提唱して全国に広がった活動で、神奈川県内では「横浜中田」「川崎さいわい」「川崎北部」の3クラブが活動中。藤原隆之副会長(アマダ理事)は「少年少女発明クラブの活動をもっと広めて、神奈川県青少年創意くふう展覧会を盛り上げていきたい」と話す。
サポーター フクハラ
コンプレッサー周辺機器メーカーのフクハラ(横浜市瀬谷区)は、2001年に福原廣社長が圧縮空気から生じるドレン水の油水分離装置の技術開発で黄綬褒章を受章したのをきっかけに、神奈川県発明協会へ毎年、寄付を続けている。
“ちいさな発明家”を応援/社長 福原 廣 氏
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社長 福原 廣 氏
「神奈川県青少年創意くふう展覧会」をはじめとする、青少年の創造性開発育成事業の趣旨に賛同してから、気が付けば早20年がたちました。私自身、ものづくり、発明、開発が大好きで、製造・販売しているものは全て自身の開発した特許製品ばかりです。
子ども時代の「なんだろう。どうしてだろう」というわくわくする気持ちを大切にし、モノづくりの楽しさ、おもしろさ、そして時には失敗して、またそこから何かを生み出すという経験をたくさん積んでいってほしいと願っています。
そんな皆さんからの刺激を励みに、私も引き続きモノづくりに取り組んでいきます。そして、ちいさな発明家のみなさんを応援していきたいと思います。
産能大ワークショップ バーチャルギャラリー “動く絵”楽しむ
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産能大が開いたワークショップ「動く未来ワールド」
産業能率大学情報マネジメント学部の北川博美教授のゼミ学生たちは2月下旬、小学生絵画コンクールの入賞者を対象に教育用プログラミングツール「スクラッチ」で作品を“動く絵”にするワークショップ「動く未来ワールド」を開いた。神奈川県在住あるいは在学の小学生による「第27回かながわ夢絵コンテスト」(NPO法人こどもネットミュージアム主催)入賞者のうち39人が参加。入賞作品の夢絵をプログラミングで自在に動かして楽しんだほか、ゼミ生が仮想空間に再現したバーチャルギャラリーで作品を鑑賞した。
北川ゼミは教育用コンテンツ研究の一環として、学生がワークショップなどのイベントを企画・運営している。同コンテストクールの入賞者を対象にしたワークショップは2014年から毎年実施しており、「アナログとデジタルが融合したコンテストに発展」(鈴木晶こどもネットミュージアム代表理事)させた。
今回で10回目の開催になり「新しい取り組みとしてバーチャルギャラリーを企画」(北川教授)。ワークショップを「動く未来ワールド」と銘打った。