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膜分離技術の可能性を広げる 究極のマイクロフィルター
ゼオライト膜 分子ふるいフィルター
まず“分子をふるう”究極のフィルターとも言えるゼオライト膜の応用について紹介する。ゼオライトは固有のマイクロ孔(1ナノメートル以下)を有する結晶である。それをマイクロメートル(10のマイナス6乗メートル)オーダーの孔径を有する多孔質フィルター(支持体)管上に、緻密多結晶体を膜状に合成したものがゼオライト膜であり、図2―1のように1ナノメートル以下の無機分子や有機分子を大きさの差でふるい分けできる。
ところで、膜開発は主にいわゆる「膜屋さん」とも言える大学や素材・装置メーカー(エンジニアリング)が担ってきているが、それを使うユーザー(化学品製造メーカー)が現れず、工業化学製品に直結するような応用は少なかった。
そうした中、炭素数5個の有機化合物(C5炭化水素)関連製品の製造を主力とする日本ゼオンが、ペンタン異性体分離、香料エステルの連続流通合成などに対して膜利用プロセスへの転換を目指して開発研究に参入している。ゼオライト膜による分子の大きさの差で分離しようというもので、実際に直鎖ペンタン(分子径0・43ナノメートル)と分岐鎖ペンタン(0・5ナノメートル)の混合物をシリカライト(孔径0・55ナノメートル)と呼ばれるゼオライト膜によって直鎖ペンタンを選択分離することに成功している。
また、香料エステルの連続合成を、回分式から膜を内蔵する流通式反応器へと転換する高効率生産プロセスの基礎を確立している。ここで使用する膜はチャバザイト(孔径0・38ナノメートル)というゼオライト膜であり、生成物の水が連続的に分離除去されて反応を可及的に進めることができるという仕組みである。
こうしたプロジェクトなどを加速するために、日本ゼオンは2022年、宇都宮大学に共同研究講座(三木英了教授)を設置している。
パラジウム合金膜 “無孔の”フィルター
最近、アンモニアが燃料あるいは水素源として注目されている。水素を得るにはアンモニアを分解する必要があるが、窒素と水素の混合ガスとなることや分解速度が遅いことが問題であった。
そこで産業用ガス、高圧ガス、特殊ガスの供給や環境エネルギー技術に取り組む巴商会は、パラジウム合金箔を焼結多孔質金属管に溶接したものを水素分離膜に使用して触媒層で分解生成する窒素―水素混合物から水素のみを分離する方式で、エネファーム規模の毎分約7リットルの水素供給器とする開発を進めている。
パラジウム合金膜は図2―2のように水素を原子状に解離して取り込む性質があり、他分子は通さない“無孔の”特殊フィルターと言える。なお、水素分離は精製水素を得るだけでなく、分解速度を加速する効果があり、同社は分解温度の低温化にも期待している。
【執筆】宇都宮大学 工学部基盤工学科 特任教授 伊藤直次

