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「新横浜線」18日開業/暮らしの機能一体に “選ばれる沿線”目指す
羽沢横浜国大-新横浜-日吉間/神奈川県央・東京都心、アクセス向上
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18日の開通に先立って行われた相鉄・東急直通線しゅん功開業式典 -
開業を待つ相鉄・東急直通線新横浜駅の北改札口
日本初の鉄道が新橋-横浜間で開業してから2022年10月で150年。その鉄路を引き継いだJR東日本をはじめ、私鉄4社が東京都と神奈川県を結んでいる。JR東は貨物線活用などにより輸送力増強を図り、私鉄各社も踏切を解消する連続立体化工事に併せて複々線化を進めるなど、速達性の改善や乗り入れによる利便性向上に取り組んできた。鉄道網は交流人口を増やし、域内物流の大部分を担う道路網とともに首都圏の動脈となる。
今週末の18日、新たな鉄道が開業する。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が都市鉄道等利便増進法に基づいて建設した連絡線「相鉄・東急直通線」(羽沢横浜国大-日吉)約10キロメートル。相模鉄道が羽沢横浜国大ー新横浜間を「相鉄新横浜線」として、東急電鉄が新横浜-日吉間を「東急新横浜線」として相互直通運転を始める。
相鉄・東急直通線は神奈川県央部および横浜市西部地区と東京都心部とのアクセス向上を目的とした神奈川東部方面線整備事業の一環。19年11月に先行開業している「相鉄・JR直通線」(西谷―羽沢横浜国大)約2・7キロメートルと合わせて、整備完了となる。相鉄本線の海老名から新横浜線経由で主に東急目黒線の目黒、相鉄いずみ野線の湘南台から新横浜線経由で東急東横線の渋谷を結ぶ。
小田急 海老名に“広場”ー職・住・複合商業施設
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“ウェルネス”をテーマにフィットネスやクリニックが入る「ViNA GARDENS PERCH」 -
「ViNA GARDENS」のランドマークとなっている31階建てタワーマンション
私鉄各社は交通アクセス改善に努める傍らで、日々の暮らしに必要な機能を集めた魅力ある街づくりに取り組み、鉄道利用者を確保する“選ばれる沿線”を目指す。
小田急電鉄は2016年から、小田原線海老名駅とJR相模線海老名駅の間に広がる約3万5000平方メートルの駅間地区を「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」とネーミングし、開発を進めている。コンセプトは「憩う・くらす・育む~ViNA GARDENS~」。地区内には居住空間、商業施設、クリニック、オフィスなど人々の生活に欠かせない要素がそろう。海老名市の発展を促すリーディングプロジェクトとして街をつなぎ、街の核となり、街全体を発展させていくための“広場”という位置づけだ。
駅間地区は、両駅間を結ぶ自由通路の両側にオフィスのほか店舗・各種サービス施設が集まる「賑わい創出エリア」と、自由通路に中心部からセントラルプロムナード(遊歩道)でつながる「くらしエリア」に大別される。
小田急側から西口に向かって自由通路右にある「ViNA GARDENS TERRACE(ビナガーデンズ・テラス)」は“ちょっと語りたくなるお店”をコンセプトに、大人も楽しめる飲食を中心とした商業施設。その背後に立つ高層ビル「ViNA GARDENS OFFICE(ビナガーデンズ・オフィス)」は神奈川県央部最大規模で、高スペックの快適なオフィス空間を提供する。
小田急電鉄は2月下旬、ビナガーデンズ・オフィスに海老名本社を設け、東京・西新宿の本社から鉄道事業を担う交通事業サービス本部の全6部と、観光事業開発部および顧客価値創造部、さらに経営企画本部とまちづくり事業本部、財務部、広報・環境部が機能分割して移転し、約450人の社員が就業している。
自由通路を挟んで左奥側に昨春オープンしたのが「ViNA GARDENS PERCH(ビナガーデンズ・パーチ)」。“ウェルネス”をテーマに上層階がフィットネスクラブやクリニックモールなどが、低層階にはこだわりの飲食・物販店が入る。ビナガーデンズの賑わいの中心になるようにと意味を込めて「パーチ(止まり木)」とネーミング。開発担当者は「これまで神奈川県央部にはなかった複合施設」とアピールする。
左手前側に「賑わい創出エリア」の次期開発区画があり、同社が経営理念に掲げる“ゆたかなくらし”を実現する新たな機能が提供されることになりそうだ。
一方、「くらしエリア」にはビナガーデンズのランドマークとなっている31階建てタワーマンション2棟が完成しており、3棟目の建設も検討されている。
小田急電鉄は海老名駅東口からペデストリアンデッキでつながる複合商業施設「ViNAWALK(ビナウォーク)」を02年から運営しており、小田急・相鉄海老名駅を中心とした一体的なエリア形成が進んでいきそうだ。
伊勢原市 持続可能な街づくり推進/小田急と連携、「スマート新駅」
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昨年4月に開通した新東名高速道路の伊勢原大山IC-新秦野IC間
伊勢原市は3月上旬、小田急電鉄による車両の全般検査を行う総合車両所建設に併せて、同社と次世代モビリティーの結節点となる新駅と幹線道路整備を進める「持続可能なまちづくりを推進する連携協定」を締結した。小田急電鉄は伊勢原駅と鶴巻温泉駅のほぼ中間に総合車両所を建設する計画で、33年度の稼働時に新駅併設を検討。同駅を自動運転近距離輸送サービスなどの結節点となる“スマート新駅”と位置付け、両者で持続可能な街づくりを進めていく。
現在、小田急電鉄は相模大野駅に隣接する総合車両所で全般検査を行っているが開設から60年経過して老朽化しており、伊勢原市内の沿線に約15ヘクタールの土地を取得して総合車両所を新設・移転する。総合車両所は大型設備の搬入・搬出を伴うため、市は建設用地北側の都市計画道路を整備する。
小田急電鉄は海老名に20年4月、特急「ロマンスカー」の歴代車両や沿線のジオラマを展示する「ロマンスカーミュージアム」をオープンし、人気を集めている。新設する総合車両所も地域の学校と協力した課外授業や、親子・学生を対象とした体験教室などができる“開かれた施設”として整備し、広く街づくりに携わっていく姿勢だ。
また、新総合車両所は工業団地に近接した立地になり、伊勢原市は27年度の新東名高速道路全線開通に向け、同地区と北側の伊勢原大山インターチェンジを結ぶエリアを「産業都市軸」として整備する方針。両者で実現を目指す次世代モビリティーもインフラに、新たな土地利用による企業集積や既存企業の増強・機能強化の舞台を整え、地域経済活性化につなげていく。