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最優秀賞に佐藤稜さんら
CVG全国大会に出場
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産官から8人の審査委員が集まり、専門家の厳しくも優しい目でプランを評価した -
唯一の高校専攻科生・米沢工業高校は3人グループで臨み、映像をふんだんに盛り込んだプレゼンを展開 -
第18回CVG東北実行委員会 -
第18回CVG東北審査委員会
東北6県の学生によるビジネスプランコンテスト。今回は大学・高専・高校専校科10校から22件のエントリーがあり、うち8校から19プランを受け付けた。書類審査で特に評価された5組が最終審査に進出。審査会当日は各組の代表者やグループが登壇し、7分間のプレゼンテーションと8分間の質疑応答に臨んだ。産官の各業界から集まった審査委員8人がそれぞれのプランを専門家の目で厳しくも温かく評価した。
最優秀賞には岩手大学・佐藤稜さんの「つなぐ!国産ビールプロジェクト」を選出した。岩手県内の遊休農地でビール原料麦芽用二条大麦を作付けし、地元クラフトビールメーカーの協力も得て国産ビールを商品化しようという意欲的な試み。県内の農家の高齢化が進む中、新たな担い手を巻き込むとともに、廃校となった空き校舎を加工施設に転用するなど地域に根ざした事業活動も高く評価された。佐藤さんは2月3日に東京で開催された全国大会にも出場した。
特別賞には東北経済産業局長賞として、東北大学大学院・横浜希さんの「自身を攻略対象とした恋愛シミュレーションゲーム型マッチングアプリ『みん♡らぶ』」、同じく日刊工業新聞社賞として、宮城大学・斎藤愛果さんの「TACHI―NO―VOICE」が選ばれた。さらに最終審査に進んだ弘前大学・佐々木慎一朗さんの「D―mat(でぃーまっと)」、および山形県立米沢工業高校・我妻尚迪さんの「地域をつくる紅花と歴史の里」に奨励賞の授与を決定。全プランが受賞の栄誉に浴した。
ごあいさつ
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CVG東北実行委員会委員長 阿部 聡
CVG東北実行委員会委員長 阿部 聡
第18回目を迎えた本大会には、東北各地の大学、高専・高校専校科から計22件のエントリーがあり、昨年12月開催の最終審査会にて、岩手大学・佐藤稜さんの最優秀賞受賞をはじめ計5件の入賞者が決定しました。心よりお祝いを申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染拡大の影響は3年にも及んでいます。学生の皆さんは生活の大半をコロナ禍の制約下で過ごさなければならず、学業、課外活動、学園祭などの催事、そして家族や友人などをはじめ、大切な人たちとの交流にもさまざまな影響が出ていると思います。
一方、このコロナ禍は首都圏など大都市での過密リスクを顕在化させました。そしてリモートワークの普及などにより多様な働き方が可能となり、暮らしのあり方にも大きな変化をもたらしています。また、国内外の最新の情報がどこでも得られます。こうした流れからは地方創生に向けた一つの転機となる可能性も感じられます。
このような変革期に皆さんは、起業家精神・チャレンジ精神にあふれ、創造性豊かな感性で社会の課題解決に取り組む人材として本大会に挑戦して頂きました。東北地域はもとより日本・世界全体が、オープンイノベーションを通じた新たなステージに向かうにあたって、若い学生の皆さんが自らのアイデアや起業プランを社会に訴え、周囲を巻き込んでいくことの意義は非常に大きいものがあります。
現在、世界の潮流の中でわが国においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などの社会実装が求められ、これらを加速する環境整備も待ったなしとなっております。東北はデジタル技術活用の取り組みが遅れており、またスタートアップやユニコーンといった成長性の高い企業を生み出す起業、そして新規上場も少ないとされています。こうした現状を打破するべく、行政や各経済団体、大学など産官学を挙げた支援事業も積極的に行われております。今回受賞された皆さんには起業家やイノベーターを目指し、東北、そして日本全体をけん引する存在として、飛躍されることを願っております。このたびの受賞、誠におめでとうございます。
最優秀賞 つなぐ!国産ビールプロジェクト
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代表の佐藤さん
岩手大学 佐藤 稜、佐藤 基、坂下 舞桜、後藤 優幹、佐藤 日向子、山端 脩暉
現在、国内では農地の減少が進んでおり、食料自給および経済循環などの観点から問題となっている。農地減少の背景には担い手の不足や高齢化があり、2030年には基幹的農業者数が現在と比較して約50万人(37%)減少するとも言われている。このような状況で農地を維持していくには、1人当たりの管理面積を向上させていく必要がある。それに、相応の需要が見込める作物を普及しなくてはならない。
そこで本事業プランでは、ビールの主原料となる二条大麦の国産化によって、農地保全と農業所得の向上を実現する。また、単純に国産化するだけでなく、地域のブルワリー、農家と連携した組合を形成し、原料生産から商品設計、販売まで一括化することで出口の確保やビールの品質向上、供給量の調整などを図る。
さらに自治体と連携し、空き校舎をビール麦の保管、加工設備として活用し、地域資源を最大限に生かすことを目指す。
特別賞・東北経済産業局長賞 恋愛シミュレーションゲーム型マッチングアプリ「みん♡らぶ」
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代表の横浜さん
東北大学大学院 横浜 希、関西大学 西川 岬希、筑波大学 三宅 健太郎
近年、恋愛マッチングアプリを用いた出会いが一般化している。しかし、従来のマッチングアプリはマッチングする際に、写真・プロフィル文章など、表面上の情報のみが重視されている。そのため、相手に十分に興味が無い状態でマッチングが行われるため、マッチングアプリ疲れを感じる人が多く、その数は利用者の約8割に及ぶという調査結果もある。
そこで、私たちは内面性を重視したマッチングアプリ「みん♡らぶ」を提案する。「みん♡らぶ」とは、実在する人物の人生をゲームという形で追体験させ、疑似恋愛をしてからマッチングをするリアル版恋愛シミュレーションゲームである。
現在は、提案者である横浜希を主人公にした「みん♡らぶ」をプレリリースしている。今後はサービスとしてリリースすることを目標に、開発や市場調査を精力的に進めていく予定だ。
特別賞・日刊工業新聞社賞
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齋藤さん
宮城大学 齋藤 愛果
まちづくりにおける合意形成は潜在的な課題として存在し、それが表面的に表れたのが「東日本大震災」の復興過程である。過去に類を見ない津波を引き起こした大災害であったため、地域住民の反対の声がありながらも防潮堤建設を急ぎ、必要以上の高さの防潮堤を建設してしまった地域もあった。反対に、合意形成に力を入れた地域でも意見をまとめるために何年もの月日を費やした事例がある。
このようなことから、合意形成の必要性と時間的プレッシャーのジレンマを解消するために、まちづくりにおける合意形成サポートシステム「TACHI―NO―VOICE」の開発を行った。「TACHI―NO―VOICE」では、議論を進行するファシリテーターがテーマを設定し、参加者が複数回に渡って意見を提示し、意見の拡散・評価を経て、満足度を踏まえた方向性の決定がなされる。
奨励賞 D‐mat(でぃーまっと)
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代表の佐々木さん
弘前大学 佐々木 慎一朗、下倉 佑太
我々が取り組むテーマは、看護師や介護士などの介護提供者が「患者の転倒に気がつかない」という課題の解消である。これに対し、足底や手のひらの圧によって個人を識別し、患者の行動の予測や転倒・異常行動の早期発見が可能な圧力センサーの開発および普及という事業を考えた。これにより、患者の予測不能事故をゼロにするという社会の実現を目指す。
具体的には①足底のサイズ・形状などにより個人を識別②転倒に結びつく足の滑り・床の離れ方・体重の移動など3軸方向の圧力を正負ともにリアルタイムで検出可能③十分に薄く上下に異素材を挟んでも誤作動が少ない④実用可能な耐久性が十分にある―以上の特性を持つ3軸圧力センサーを活用する。これをマット状にして、患者がよくつかむ手すりや家具などに設置することで、通常と異なる異常な手足の滑り、体重移動を検知し、転倒・転落を迅速に発見できる。
奨励賞 地域をつくる紅花と歴史の里
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代表の我妻さん
我妻 尚迪、石川 翔太、武田 克則
2021年2月、山形県の県花である紅花の世界農業遺産認定申請が農林水産省より承認された。県内各地でその機運を盛り上げようと、産地拡大、イベントが行われている中、米沢市でも作付面積が広がっている。その半面、時代とともにニーズが減り、需要は減ってきている。また米沢市で生産に関わる方の9割以上が高齢者であり、今後、紅花生産に携わる人材不足を要因に収穫量の減少も懸念される。
私たちは紅花を採取する際、畑にこぼれた種子が発芽し、若菜として成長していることに着目した。現在までその若菜は廃棄されていたが、若菜の販売や若菜と種子を使った食品開発に利用することで新たな分野の雇用が生まれ、地域社会活動の一助となり、「農業」「食品」「福祉」を掛け合わせた「循環型地域コミュニティー社会」を創出できると考えている。
審査講評
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CVG東北審査委員会委員長 蛯名 武雄
CVG東北審査委員会委員長 蛯名 武雄
18回目の開催となるCVG東北には、22件の意欲あふれる応募がありました。書面審査を経て選ばれた5件に対し、昨年12月16日、仙台市でプレゼンによる本審査が行われました。前向きかつ創意工夫がみられるものばかりで、興味深く、また楽しんで聞かせてもらいました。候補者の気づきに基づく身の回りの問題や、社会問題を解決したいという思い、挑戦する意志が十分に伝わってきました。
最優秀賞に選ばれた岩手大学の佐藤稜さんのグループの提案は、岩手県のみならず全国的に遊休農地の増加と農家の高齢化が進んでいることから、ビール麦(二条大麦)の国産化を目指すものです。社会課題に真っ向から取り組む挑戦的な姿勢や、ブルワリー、農家との協業体制も構築されていることなどが高く評価されました。
特別賞には東北大学の横浜希さんと宮城大学の齋藤愛果さんの提案が選ばれました。横浜さんは、自身を恋愛ゲームの攻略キャラとするマッチングアプリを開発しました。シナリオプレイの結果をマッチングの評価とすることが特徴で、そのユニークさが審査員から高く評価されました。齋藤さんらはまちづくりにおける合意形成において、少数意見の尊重と可視化を改善できないかとの問題意識から、オリジナリティーの高いファシリテーションサポートシステムを提案しました。
奨励賞には弘前大学の佐々木慎一朗さんと山形県立米沢工業高等学校の我妻尚迪さんの両グループの提案が選ばれました。佐々木さんは、弘前大学で開発された3軸圧力センサーを用いて、高齢者の転倒転落事故を検知し、さらに転倒を未然に防止しようというビジネスを提案しました。我妻さんは山形県の県花である紅花を取り上げ、これまで活用されてこなかった若菜やその種子を使った加工食品(6次産業化)販売を通して、循環型地域コミュニティー社会を創出しようという提案です。
応募されたすべての皆さんに対し、その挑戦に最大のエールを送りたいと思います。さらに最優秀賞、特別賞、優秀賞を受賞した皆さんの晴れの舞台での笑顔を見られることは審査委員全員の喜びでもあります。本当におめでとうございました。