-
業種・地域から探す
街づくり・伴走支援で産業振興 コストアップ・人手不足の課題解決
新型コロナウイルス感染症への対応が続く中、産業界はエネルギー・原材料高、為替の変動に加え、ウクライナ情勢など地政学的リスクへの備えも重要になっている。川口市内の企業もコストアップや人手不足などの課題をどう解決していくかが問われている。川口市の奥ノ木信夫市長は「働きやすい街づくりをさらに進める」、川口商工会議所の細野博隆会頭は「経営課題にワンストップで伴走支援する」と共に産業振興に力を入れる。
原材料高騰で法人支援金50万円
-
川口市長 奥ノ木 信夫氏
―川口市内企業の景況感をどう見ていますか。
「市が市内の事業者3000社を対象に行ったアンケートの結果では、やはり景気は悪くなっていると答える企業が多くなっている。ウクライナ情勢などの影響で、物価の高騰は燃料に始まり、原材料や生活必需品にまで及ぶようになった。先行きとしては、まだ悪化すると思っている製造業者が多いのが今の状況だと思う」
―市はどんな産業支援策に取り組んできましたか。
「燃料や原材料の高騰に対応する支援策として、製造業者、運送業者に対し、法人に50万円、個人に10万円の支援金を支給し、事業者から喜びの声が届いた。アンケートでは、景気が悪くなるという回答が多かったが、私は今年こそは徐々にではあるが、景気は回復するだろうと期待している」
―2023年度予算案を発表しました。新たな経済・産業分野の取り組みは。
「デジタル変革(DX)の推進による人材育成策を進める。eラーニングシステムを活用して幅広い産業分野をバックアップしていきたい」
―働きやすい街づくりを進めています。
「川口は住みやすい街として広く認識されている。住みやすさは子育てがしやすいことや買い物が便利などといった点もあるが、働きやすさも当然住みやすさにつながる。特に川口は中小企業が多いので、働きやすい街づくりを積極的に進めていく」
―具体的には。
「企業の雇用を支援する制度をさらに充実させていく。川口市勤労福祉サービスセンターの福利厚生や退職金制度への加入を企業に促していくほか、技能検定などに合格した従業員が所属する企業への助成金などさまざまな支援策を用意し、若い人が市内企業に勤めたくなるような施策を進めていきたい」
―他の取り組みは。
「市内企業の福利厚生制度や若手社員の声を載せたガイドブックを昨年作成したが、来年度はさらにバージョンアップしたものとする予定である」
―さいたま新産業拠点「SKIPシティ」の今後の計画は。
「市が所有するC街区を整備する。そこには、川口駅前にある川口商工会議所などの産業関連団体の誘致に向け調整を進めるほか、鋳物の歴史や機械の見本などの展示室を設け、川口の産業を知ることができる施設とする。また、商業施設にはヤオコーを誘致する計画。B街区にNHKのスタジオが建設されることから、地域に合った業態で地産地消の食材などを提供してもらう方針だ」
―今年市制施行90周年を迎えます。
「改めて初心に返って川口の元気を創出するために全力を尽くしたい。11月10日の『川口の日』に市制施行90周年の記念式典を行う予定。コロナ禍で多くの人が参加できる機会が減ってしまったので、オーケストラによるコンサートやチャリティコンサートなどのような楽しいイベントを企画できればと考えているが、具体的な内容はこれから検討する」
鳩ケ谷商工会と24年度統合目指す
-
川口商工会議所会頭 細野 博隆氏
―昨年11月に会頭に就任しましたが、抱負は。
「就任最初のあいさつで伝えたのは、改革は前進だということ。ただ、すべて何でも改革するのではなく、改革の前提には歴史を学ぶことがある。歴史を学んで良いものや残さなければいけないものは必ず残していく。だが変更すべきことや今までできなかったことは改革する。そうした思いで進んでいきたい」
―現在の川口商工会議所のテーマは。
「政策提言や中小企業支援、地域振興などさまざまな活動を行っている。特に鳩ケ谷商工会との統合と、商工会議所のSKIPシティ(さいたま新産業拠点)への移転が大きな事業だ。鳩ケ谷商工会とは2024年度の統合を目指している。今の鳩ケ谷の会員が統合してよかったと言ってもらえるような形にしたい。また会議所移転は26年度の予定でSKIPシティの支援施設の中核となるにように現在計画を進めている」
―今年の経済や社会を取り巻く環境をどう見ていますか。
「新型コロナウイルス感染症については専門家によって見通しはさまざまだが、感染に気をつけながら経済活動を再開していこうという流れは、これからも進んでいくのではないか。ウクライナ情勢についても今後の予想は難しいが、個人としては戦争は絶対に反対。早く終結することを心から願っている」
―原材料価格の高騰は川口市内の経済にどう影響していますか。
「川口は鋳物産業で知られているが、鉄は一時3倍近く値上がりしたケースがあり、燃料や電力料金も高騰している。それに加えて慢性的な人手不足が追い打ちをかけている。原材料高と人手不足のダブルパンチで厳しいという声も多い」
―そうした状況の中で川口商工会議所ではどんな支援策に取り組んでいますか。
「川口地域企業支援プラットフォーム『チーム・かわビズ』は、会議所と金融機関、専門家の3者で企業をバックアップしていこうという事業。経営の課題を丸ごとワンストップで伴走型支援を行っている。今年度は昨年10月20日時点で140件の実績があった。また『川口の元気経営大賞』は、地域の経済や産業発展に貢献する企業を表彰する。19年に第1回を開催後、コロナで中断していたが、22年7月に再開して第2回を開催した。職人の繊細で精密な加工技術と管理システムが融合した『デジタル板金』を実現したフジムラ製作所が大賞を受賞した」
―他にもさまざまな表彰事業に取り組んでいます。
「市内の優れた製品や技術を認定する『川口i-mono(いいもの)・川口i-waza(いいわざ)ブランド』では22年度に伊藤超短波のパルス式超音波歯ブラシなど3製品7技術を認定した。また市内で魅力ある店作りを進めて地域に支持されている店舗を表彰する『川口i-mise大賞』も今年度から始めた」
―市内産業の活性化をどう進めますか。
「川口市と川口商工会議所は良好な関係を築いており、政策提言や行政への協力をお互いに密になって取り組んでいる。奥ノ木信夫市長が提唱している『住みやすい街・川口』や『働きやすい街・川口』への取り組みを商工会議所としても積極的に協力して支援していきたい」