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市制90周年 働きやすい街づくり
戦略的産業振興に重点
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JR川口駅前。今年市制90周年を迎える -
市産品フェアを視察する川口市の奥ノ木信夫市長(左)
川口市がまとめた23年度予算案の産業支援分野では、外郭団体統廃合支援事業として新規に770万円を計上した。川口市勤労福祉サービスセンターと川口産業振興公社を25年度までをめどとして統合する計画。市内で活動する企業の経営と雇用支援をワンストップで一元化して取り組む新たな組織にする。実務的な課題整理を主目的とした調査委託を実施する。
市産品フェアは、市内で製造された製品の魅力を市内外の企業や市民、他の自治体に発信して販路拡大を進めるイベント。昨年は過去最大の137社・団体が参加した。今年は産業拠点「SKIPシティ」から川口オートレース場に会場を移して開催する予定。9900万円を計上して、製造業や緑化産業を中心とする製品や多様な業種のサービスを広く周知して地域経済の活性化を進める。
一方、さらなる働きやすい街の拡充を目指して、経営支援課の施策で2558万円を盛り込んだ。地域経済のデジタル人材育成を支援するため、217万円を新規事業に充ててデジタル変革(DX)に関する知識が習得できるeラーニングシステムを提供する。また「働きやすいまちパンフレット」を22年度に作成して市内や近隣の高校などに配布したが、23年度は掲載企業を増やすとともに内容も充実させる。
若者の働きやすさもバックアップする。市内への定住や市内中小企業への就労継続を促すために、独自の家賃補助と奨学金返還支援制度を新設する。どちらも1人当たり年間6万円を上限とする。このほか、女性の創業やネットワーク作りを支えていくため、講座や交流会を継続して実施する。
市は22年3月にゼロカーボンシティを宣言。23年3月には「川口市地球温暖化対策実行計画」を改定する。脱炭素への取り組みを強化して持続可能な社会を目指すことも産業分野に求められている。市では「地球温暖化対策活動支援金」を拡充。公共用電気自動車の充電器を新たに対象に加える。
街づくりの一環として、市は「中距離電車ホーム増設等調査事業」として新規7157万円を計上した。川口駅ホーム増設などの計画案と事業費の積算などをJR東日本に委託するとともに、事業費の妥当性や内容の合理性を検討する。「川口駅周辺まちづくり検討事業」にも1107万円を充て、昨年3月に策定した「川口駅周辺まちづくりビジョン」の実現に向けて、中距離電車の停車の効果を分析する。ビジョンには鉄道輸送力の増強を目的とした『交通拠点のリニューアル』などが盛り込まれており、23年度は各プロジェクトの取り組みを進めていく計画だ。
11月10日 90周年記念式典
11月10日に川口市は川口総合文化センター「リリア」のメインホールで市制施行90周年記念式典を開く。リリア文化事業の一環で、オーケストラによるコンサートやチャリティーコンサートも開催する。このほか、90周年を記念した広報誌や横断幕、懸垂幕を作成して広くアピールする。さらに市産品フェアやSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023、たたら祭りなどでも記念行事を実施する予定にしている。市は周年記念関連事業で4600万円を23年度予算案に新規計上した。
川口市は川口町と横曽根村、青木村、南平柳村の1町3村が合併してできた。埼玉県では1922年12月に、川越市が埼玉県内最初の市として誕生した。昨年、市制施行100周年を迎えている。川口市はこれに次いで県内2番目、熊谷市と同時に33年4月1日に市になった。
その後は目覚ましい発展を遂げる。40年に鳩ケ谷町、芝村、神根村、新郷村と合併するものの、50年には鳩ケ谷町と分離。52年には川口オートレース場が開場、54年に西川口駅が開業した。
63年には県内で初めて人口が20万人を突破した。69年には新郷工業団地の分譲が始まり、73年には武蔵野線が開通して東川口駅が開業する。79年には第1回のたたら祭りが開催された。たたらとは元々、製鉄の時に風を送る「ふいご」の意味だったという。22年には第42回の祭りが催された。
85年には県内で初めて人口40万人を突破、87年には首都高速川口線が開通した。東京外かく環状道路の川口ジャンクションが開通したのが92年。01年には埼玉高速鉄道線が開業した。
03年には、さいたま新産業拠点「SKIPシティ」が街開き。05年には川口駅前の産業会館跡地に「かわぐちキャスティ」が完成した。06年には人口が50万人を突破。さらに11年には鳩ケ谷市と合併、市の面積は約62万平方メートルになった。17年には人口60万人を突破して18年には中核市に移行。20年には川口市役所新庁舎1期棟が完成、現在に至っている。
【川口商工会議所】情報発信強化で会員・組織率増加
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新型コロナウイルス感染症に関する企業向けガイドブック
川口商工会議所は、新型コロナウイルス感染症に対する会員企業への支援で成果を上げている。企業向けのガイドブックを相次いで発行するとともに、全会員にフォロー電話をかけて情報提供を行い、不安を取り除く取り組みを実施した。同時に会員ニーズも調査して事業に反映させることで「無くてはならない商工会議所」の存在意義を示した。
「新型コロナウイルス感染症に関する企業向けガイドブック」はコロナが国内で広がり始めた初期の20年3月13日、5月19日、7月30日に相次いで作成して配布した。さらに会議所会報「MOVE(ムーブ)」の同年11月号は「新型コロナウイルス感染症に関する特別号」として、資金繰りや会員事業者の取り組みなども紹介した。
会員への電話によるフォローコールは20年から始めて21、22年度も続けている。21年度の総稼働は600時間にも及んだ。会員の現状やニーズを調査するとともに、補助金や助成金、給付金などの情報を提供した。20年3月末に会議所に入会したサービス業の事業者は「経営支援・融資でも大変お世話になった。入っておいてよかったと心から感謝」という声も寄せられた。その結果、コロナ禍でも会員数、組織率とも右肩上がりで伸びた。
「SKIPシティ」C街区を整備
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SKIPシティの入り口。左側が行政施設、右側が映像産業拠点施設。中央奥にC街区を整備する
川口商工会議所は現在、JR川口駅前の川口センタービルに事務所を構えるが、さいたま新産業拠点「SKIPシティ」に25年度中に完成予定の産業支援施設に移転する計画になっている。川口市は23年度当初予算に「NHK跡地整備事業」として1億2430万円を計上した。
SKIPシティは2003年、NHK川口ラジオ放送所跡地にオープンした。「SKIP」の名称はサイタマ・カワグチ・インテリジェント・パークのアルファベットの頭文字を取った。現在は行政施設と映像産業拠点施設によって構成されている。行政施設では埼玉県産業技術総合センターや県消費生活支援センターがある。また彩の国くらしプラザ、川口市立科学館(サイエンスワールド)、映像ミュージアム、公開ライブラリーは子どもも楽しく学べる公開施設になっている。
ただ、現在は全15万平方メートルの広大な土地のうち、5万平方メートルのA街区だけが整備されている。川口市はC街区に産業支援施設や商業施設を整備する計画で、川口商工会議所もこの中に事務所を移転する計画。
産業支援施設には事務所やコンベンションホール、産業資料館などが整備される。各種の産業支援をワンストップで受けられるビジネスサポートセンターとしての機能を持たせる。多目的コンベンションホールは市内企業や団体の展示会や商談会が開けるようにする。産業資料館は川口市の産業の成り立ちを次世代の若者にも興味を持ってもらえるように紹介する。