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入賞プラン決定
最優秀賞に井上さん CVG全国大会に出場
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表彰式では鈴木審査委員長(前列右端)らから5組に賞状と賞金目録が授与された -
第18回CVG北海道実行委員会 -
第18回CVG北海道審査委員会
北海道の学生によるビジネスプランコンテストのCVG北海道には今回、大学・高専・専門学校12校から25件のエントリーがあり、うち11校から19プランを受け付けた(1件は道外の大学所属のため対象外に)。予備審査をくぐり抜けた5組の最終審査会では各組の代表者が壇上に立ち、7分間のプレゼンテーションを行った後、審査委員による5分間の質疑に応答。プランの内容や具体性、事業化の可能性、プレゼンでの話術や立ち居振る舞いなどが採点された。
その結果、旭川高専の代表者・井上光貴さんによる「ウォーターパイプまいすたー―上下水道3Dプラットフォーム」が最優秀賞に選出された。審査委員の多くが最高得点を付けるという文句なしの評価。井上さんらは2月3日開催のCVG全国大会に出場する。
優秀賞には北海道科学大学・松本妃菜さんらの「RE:SCHOOL(リスクル)」が選ばれた。プレゼン資料のレベルも高く、予備審査以上の評価を得た。さらに奨励賞に北海道大学・川手紅梨子さんらの「Beeber Global」、努力賞に釧路公立大学・山田栞奈さんらの「廃棄羊毛を用いた新コンクリートによる士別市を元気づけるアイデアの提案」、および北海道情報大学・尾崎令さんの「全世界対応目覚ましアプリ『Wake me up』」が選ばれた。最終審査に進んだ全プランが受賞の栄誉に浴した。
表彰式後には懇談形式の祝賀会を実施。受賞した学生と実行委員、審査委員、協賛企業関係者が一堂に会し、全体の感想を述べたり、起業に向けた次の展開を聞いたり、相互に意見を交換。出席者全員が発言するなど例年とは違った雰囲気で締めくくった。
ごあいさつ
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CVG北海道実行委員会委員長 真弓 明彦
CVG北海道実行委員会委員長 真弓 明彦
キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)北海道において、入賞された皆さま、誠におめでとうございます。
CVG北海道は、北海道の将来を担う若者の起業家精神を養うとともに、創造性・チャレンジ精神に富んだ人材、問題発見・解決型人材の育成を目的に毎年開催しているもので、今回は道内の大学、高専、専門学校から25件の応募をいただきました。
入賞されたプランは、デジタルを活用したインフラ保守・整備、サステナブルなサイト運営、国際交流プラットフォーム、地域資源を生かした製品、スマホ活用の新サービスと、多岐にわたるものです。どのプランも「発想」や「着眼点」に優れ、事業化に結び付けようとする「熱意」や「努力」が感じられる、素晴らしい提案です。
ご承知のとおり、コロナ禍の長期化と急激な物価高騰によって、「食」と「観光」が基幹産業の道内経済は、大変厳しい状況にあります。一方、DX・GX推進、東京一極集中是正、さらにはゼロカーボン北海道、食料・エネルギーの安全保障強化など、北海道にとって変革となり得る動きも生じています。
こうした動きを経済や産業を活性化させていくチャンスと捉え、道内の産学官の力を結集して、チャレンジ人材や企業の集積、脱炭素と経済の好循環に向けた事業化、デジタルを活用した新産業創出や地域づくりなどに取り組んでいるところです。
CVG北海道に応募された学生諸君は、まさに新規事業の実現に挑戦しており、大変心強く感じています。今回の応募で終わりではなく、自身のプランをブラッシュアップされ、ぜひ事業化そして事業の成功に結び付けてください。将来の活躍に大いに期待しています。
最後に、共催の日刊工業新聞社、ご協賛・ご後援いただきました関係者の皆さま、鈴木馨審査委員長をはじめとする審査委員の皆さまに厚く御礼申し上げます。
最優秀賞 ウォーターパイプまいすたー―上下水道3Dプラットフォーム
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旭川工業高等専門学校 井上 光貴(代表者)
旭川工業高等専門学校 井上 光貴(代表者)
現在の上下水道管インフラが抱えている問題点として①耐久年数を超過している②財政難で水道管更新が困難③敷設時期の古い水道管はアナログデータで保管されている④積雪地域では目印を見つけることが困難―の4点が挙げられる。私たちは埋没している上下水道管を3次元(3D)で表示できる「水道管3D可視化システム」をコアに「紙図面からの3D上下水道管の作成機能」「デジタル図面・データからの3D上下水道管の作成機能」を有する「上下水道3Dプラットフォーム」を提案する。
水道管を3D的に表示できるシステムや、実際の現場で使用可能なものはまだ実用化されておらず、私たちが課題解決の先駆者となり、けん引できると考えている。自治体・水道工事業者の利用を想定しており、具体的には、経済産業省・厚生労働省が構築を進める「水道情報活用システム」や自治体所有の「アナログデータをデジタル変換し、3D的に可視化・管理するシステム」として提供していく。
優秀賞 RE:SCHOOL(リスクル)
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北海道科学大学 松本 妃菜(代表者)
北海道科学大学 松本 妃菜(代表者)
私たちが提案する「RE:SCHOOL(リスクル)」は、中古制服の買い取り・販売を行う事業である。既存のサイトやショップでは誰もが閲覧・購入することができる。この場合、購入した商品を悪用される(個人情報の特定・性犯罪など)可能性があり、ユーザーは安心して利用できない。
商品をより安全に取引するために、リスクルでは「生徒またはその親」のみが登録可能な、独自の会員登録システムを設ける。これにより、購入した商品を悪用しようとする人や業者を排除し、本当に必要としている人に確実に届けるような仕組みをつくる。
家庭にかかる隠れ教育費(義務教育で無償とされている、授業料とは別にかかる費用のこと)の負担を軽減し、子供たちにより自由な教育の機会を提供することを目標としている。また、制服の再利用を行うことで資源の有効活用を図り、サステナブルな社会を目指す事業となっている。
奨励賞 Beeber Global
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北海道大学 川手 紅梨子(代表者)
北海道大学 川手 紅梨子(代表者)
Beeber Globalは国際的な「ボランティア」と日本の個人や組織、企業などの「ホスト」をつなぐデジタルプラットフォームである。例えば札幌で英語を教えられる人を探す個人事業主やご家庭がホストとなり、観光ビザや就労ビザを持つ海外からの旅行者が、そのニーズに応える。両者の間に金銭的やりとりはなく、ボランティアがホストの望む手伝いを1日3―5時間行う代わりに、ホストはボランティアに寝場所と食事を提供する。ホストとボランティアは全てのサービスを利用するため登録料を支払う。
Beeber Globalのプラットフォーム(ウェブサイト/アプリケーション)の特徴として、ホストとボランティアが双方よりアプローチできるという点がある。不安を取り除くレイティングシステムやバックグラウンドチェック、誰でも使いやすいユーザーフレンドリーなアプリの運営により、異文化交流・言語的交流を多く生み出し、また、さまざまな人手不足のニーズに応えていく。
努力賞 廃棄羊毛を用いた新コンクリートによる士別市を元気づけるアイデアの提案
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釧路公立大学 山田栞奈(代表者)
釧路公立大学 山田栞奈(代表者)
「廃棄羊毛」と「コンクリート」―。私たちの提案する弾性劣化防止コンクリートとは、そんな交わることのない二つの素材を掛け合わせることで弾性力を向上させ、劣化のスピードを抑えるコンクリートである。
氷に綿を入れることで強度を上げる実験の視聴をきっかけに、會澤コンクリート株式会社様やサフォーク株式会社様と連携を取り、形にした。商品を商品として終わらせるだけでなく、このコンクリートを用いて、地域の公共施設の老朽化問題や廃棄羊毛費用問題の解決のためにも活動している。
私たちはさまざまな大学、専門学校、学部、学科の学生が「自分たちの学んだことを総動員させ、やりたいことを形に」をテーマに動いている。チームの始まりとして誇りを持てるように、チームの看板プロジェクトとなるようプロジェクトの精度を高めていきたい。
努力賞 全世界対応目覚ましアプリ「Wake me up」
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北海道情報大学 尾崎 令
北海道情報大学 尾崎 令
「皆さんは無機質な朝を過ごしていませんか?」。私が提案するこのSNSアプリは、世界中の方々からモーニングボイスが届き、人と人とをつなげる新しい目覚ましアプリである。世界中の知らない人たちからランダムでモーニングボイスが届くほか、逆に自分から世界中に送ることもできる。
このアプリがあれば世界中のお姉様や渋いおじ様などから声が届く。そうすることで目覚めの良い最高の朝を迎えられる。その感想をSNSや職場、学校でシェアすることにより、朝の話題になりアプリの認知度も上がる。
特徴は誰でも気軽に簡単に始められ、顔を出さずに人気クリエイターになれること。また基本的にランダムでの運用が前提のため、世界中の方々と朝を通して気軽につながることができる。
私自身このアプリの製品化を願望しており、協力者を探している。もし少しでも興味を持った方がいれば、CVG北海道実行委員会事務局まで連絡していただきたい。
審査講評
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CVG北海道審査委員会委員長 鈴木 馨
CVG北海道審査委員会委員長 鈴木 馨
今回は、社会課題や身近な課題について専用アプリの開発で解決を目指すという提案がかなりの割合を占めていました。それぞれのアイデアは、時代や世代を反映していて大変興味深いのですが、アイデアの核心の独創性あるいは革新性の面では物足りなさも感じました。
例えば、多くの提案で、ある課題やニーズに対して専用アプリで人と人をつなぐ新たなサービスを提供するということを目指しているのですが、既存のSNS等のサービスでも可能なことを特定のニーズに特化したようなものが多いと感じられました。また、ユーザーとして想定している人々や企業等の真のニーズを十分に反映できているのか、少々疑問を感じる面もありました。また、アイデアを実現して想定した課題解決につなげるためには、社会貢献が目的であっても事業(ビジネス)として成立することが必須ですし、その持続性や発展性も重要になりますが、その点に関する詰めがもっと必要だと思いました。そのためには、多様な人々や企業等の意識や先行技術、類似事業等に関する情報収集、分析、それらに基づいた多角的な視野、俯瞰(ふかん)的な視野での構想のさらなるブラッシュアップが重要だと思います。
一方で、スタートアップの段階で事業構想が完成している必要はないと思いますので、現在の構想を試作、試行し、実現に向けた課題を解決したり方向性を修正したりして多くのユーザーに訴求できるものに改良していくことで、事業として成立させたり、事業を拡大したりするのも大事だと考えています。今回受賞した提案についてはもちろん受賞に至らなかった提案についても、今後のさらなる取り組みによって新たな価値の創造による新たなビジネスの創出が実現することに高い期待感を持っています。