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次代を担う溶接技能者 育成
製造業の持続的成長・技術発展目指して
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「自らの技術に磨きをかけて、会社でその技術を広げてほしい」と森大会会長(前列中央)
佐賀県は19年度から4年間の事業として「SAGAものづくり強靭化プロジェクト事業」に取り組む。県の重要な産業である製造業が持続的に成長し、技術や伝統を将来にわたって発展、継承するのが目的だ。県民が経済的、精神的にモノづくりに誇りを持つことのできる社会の実現を目標に掲げる。
同プロジェクトは、モノづくり産業を対象に、働く人材を増やすこと、生産性を高めること、技術・技能を高めることの三つの柱で構成する。その中で女子溶接技術競技会は、技術や技能の伸長を図る「さがものづくり道場運営事業」の溶接技術向上支援のメニューの一つとして、20年度から競技会や練習会講習を実施してきた。
専門課題 初導入
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新しい課題は立て向きで溶接する。日頃の練習の成果が発揮される -
競技会後に、真剣なまなざしで仕上がりをチェックする
3回目の今回は、参加者の技術レベルが年々向上していることから、基礎課題から専門課題に変更。溶接する板に対して、下向きでする溶接から立て向きでする溶接に変えた。溶けた金属が下に流れて固着する前に、形を整えながら上に向かって溶接を進めなくてはならず、より高度な技術が求められた。
今回は、被覆アーク溶接部門6人、二酸化炭素アーク溶接部門10人の合計16人が技を競った。そのうち高校生が1人、県立の職業訓練学校から3人が参加した。
大会会長の森孝一佐賀県溶接協会理事長(森鉄工社長)は開会式で「若いときに磨いた溶接の技術は将来きっと役に立つ」とエールを送った。
緊張や満足―悔しさをバネに再チャレンジへ
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左から室さん、鈴木さん。常連の2人も今回の課題は「難しかった」と口をそろえる。右は今回唯一の高校生参加者の武富さん -
佐賀県立産業技術学院から参加した3人。希望する将来の進路はさまざま -
緊張の競技会が終わって笑顔が戻る名村造船所の3人
佐賀の溶接女子に競技の感想を聞いた。
自動車整備士を目指す井上智加さん(県立産業技術学院)は「貴重な経験でした」と振り返る。武富あゆなさん(県立嬉野高校)は「溶接の資格試験よりうまくできた」と自信を見せた。
一方、建築技術設計を学ぶ浅田りなさん(県立産業技術学院)は「一層目からミスしてしまった」。将来は大工になりたいという嘉村藍李さん(同)は「練習の方がうまくいきました」と悔しさをにじませた。前田理香さん(勝栄機工)は「出来栄えは50%」という自己評価。片山奈津実さん(同)は「電気を合わせられなくて難しかった」と振り返る。
鈴木葵さん(トヨタ工機吉野ケ里工場)は「練習より難しく思い通りにいかなかった」という。室響さん(戸上電機製作所)は「難しくて緊張した」。田中ひとみさん(ワイビーエム)は「新しい課題に苦戦した」。吉岡理恵子さん(公栄工業)も「電流をどこで合わせるか最後まで決まらなかった。出来栄えは微妙です」と新しい課題に苦戦を強いられたようだ。
川原悠さん(名村造船所)は「練習通り落ち着いてやれた。電流と電圧の調整は次回の課題」と再チャレンジを誓った。井手日向さん(同)は「(溶接の)中身の方が見た目より重視される」と強調。森田恵理さん(同)は「練習と本番は全然違う。緊張した」と振り返った。
バンディワン・メロディ・ポンテイリオさん(澤野建設工業)も「緊張して難しかったです」と話す。高橋霞さん(九州セキスイハイム工業)は「途中で止める作業が難しくて失敗した」と悔しそうだった。中島遥香さん(同)は「継ぎ目をうまくかぶせることができた」と冷静に対処したようだ。