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LIBの生産を支える電池部材メーカー 生産増強
ホンダ 米に電池工場新設 トヨタ 日米7300億円投資
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「Honda Mobile Power Pack e:」(スマートエネルギーWeek2022春)
LIBは安全性や高出力、長寿命など高い性能が要求される。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)などの電動車(xEV)はLIB需要をけん引する市場の一つとして注目されている。さらに2輪車の電動シフトも加速している。
ホンダは韓国の電池大手LGエナジーソリューションと共同で、EV向けのLIB工場を米国に設けると8月29日に発表した。同日、LGエナジーソリューションと合弁会社の設立に合意した。ホンダ、LGエナジーソリューションの両社は約44億ドル(約6100億円)を投じて2023年初頭に工場の建設を始め、25年中の量産を目指す。年間の生産能力は40ギガワットの見込みで、全量を北米地域にあるホンダの工場に供給する。
トヨタ自動車は8月31日に、日本と米国でEV向け電池生産に最大7300億円(約56億ドル)を投資すると発表した。
日本ではトヨタの工場・所有地や電池子会社に合計約4000億円を投じる。米国では25年稼働開始予定の電池子会社に約3250億円(同25億ドル)を投資する。24ー26年に生産を開始し、現状比で最大40メガワット時の生産能力増強を目指す。
2輪車でも電動化加速
4輪車に続き2輪車でも電動化の流れが加速している。ホンダは9月13日、30年に販売台数の約15%に当たる年間350万台レベルの電動2輪車の販売を目指すと発表した。25年までにグローバルで電動2輪車を、合計10モデル以上投入することで、今後5年以内に年間100万台の販売を予定する。
40年代には全ての2輪車製品で、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現を目指す。内燃機関の進化に継続的に取り組むと同時に、環境戦略の主軸として2輪車の電動化を加速する。
またENEOSホールディングスと国内2輪車メーカー4社は、電動2輪車の共通仕様バッテリーのシェアリングサービス提供と、そのためのインフラ整備を目的とする新会社「Gachaco(ガチャコ)」を4月1日、東京都港区に設立した。今秋には電動2輪車の共通仕様に適合したバッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」のシェアリングサービスを、東京などで開始する予定だ。
バッテリー試験装置 引き合い活発化
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スマートエネルギーWeek2022春に出展したクロマジャパン
台湾大手計測器メーカーChromaATEは、日本市場と日本ユーザーの要望を重視した製品開発を行っている。日本法人のクロマジャパンではEVバッテリー評価の試験装置の引き合いが活発化。22年は前年と比べて倍近い問い合わせが届いている。EV向け電池開発が量産を視野に入れたフェースに移行していると分析する。
同社はユーザー要望に対応した大電流、高電圧の試験装置を多彩にそろえる。150アンペアから900アンペアまでの引き合いが高まっているという。3月に東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek2022春」に出展し、試験装置を展示。充電スタンド関連のユーザーからの関心を集めた。
国内生産8倍 経産省が産業戦略
経済産業省は蓄電池産業戦略を8月にまとめた。30年までに蓄電池のサプライチェーン(供給網)全体で3万人の関連人材を育成する目標を設定。車載用や定置用蓄電池の国内生産能力を、同年までに現状比約8倍の計150ギガワット時、グローバル生産能力を同約10倍の計600ギガワット時とする目標も盛り込み、蓄電池生産の拡大に合わせて人材育成を目指す。
環境規制背景に急拡大続くー市場動向 リチウムイオン電池 12兆3315億円規模に(25年予測)
富士経済の「LIBの世界市場」によると、LIBはニッケル水素電池や鉛蓄電池などから需要がシフトしている。EV最大の生産地で消費地でもある中国を中心にxEV用のLIB需要が大きく伸びることから、2021年の市場は前年比57・0%増の10兆5126億円を見込んでいる。25年には12兆3315億円と予想する。
xEV用LIB世界市場
米・テスラなど自動車メーカーのEV生産の拡大、環境規制と導入インセンティブによるEVの販売増加により、21年の世界のxEV用LIB市場は前年比84・2%増を見込んでいる。
中国における補助金政策の延長や、トラック、バス、タクシーなどの公共用のEV導入がけん引。またフードデリバリーサービスで利用される電動バイク/スクーターが急増している中国では、国家標準が改定されバッテリーを含む車両重量が55キログラム以下と定められたことで、鉛蓄電池より重量が軽いLIBに移行している。
EV開発の計画が多く、また自動車メーカーによるEVの販売目標の上方修正がみられることから、今後もLIB市場は拡大して行く。こうしたことから。25年の世界のxEV用LIB市場は20年比2・1倍となる9兆3890億円が予測される。
ESS/UPS/BTS用世界のLIB市場
LIBは競合となる鉛蓄電池と比較すると長寿命であり、また省スペース化が可能である。現時点では、無停電電源装置(UPS)や無線基地局(BTS)では鉛蓄電池が主流であるが、電力貯蔵システム(ESS)では入出力特性に優れるLIBの採用が進んでいる。
太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電の増加により、家庭での発電電力の自家消費、発電事業者による系統安定化など幅広い用途で導入されており、米国と中国、欧州での需要がけん引している。
米国ではカリフォルニア州で新築住宅での太陽光発電システムの設置が義務化されたことや、カリフォルニア州以外でも電力安定化や再エネの変動吸収などを目的とした発電事業者によるESS設置が義務付けられたことから、需要の増加に期待が高まる。
こうしたことからESS/UPS/BTS用のLIBは成長拡大し、25年には1兆円を突破すると予測している。
電池材料 欧州進出加速 62%増 8兆9000億円
LIBは正極材、負極材、セパレーター(絶縁材)、電解液の主要4部材と、正極・負極バインダー、正極・負極集電体、外装材などで構成される。富士経済がまとめた22年のLIB材料の世界市場は、前年比62・2%増の8兆9094億円を見込んでいる。
環境規制対応を背景にしたEV向け、再エネ利用促進によるESS向けのLIB需要の増加により市場は拡大。24年には10兆円を超え、25年には12兆2312億円が予測される。正極活物質などで使用されるコバルト、ニッケル、リチウムといった鉱山資源の調達はLIB需要が大きく増加する中で安定調達の重要性が高まっている。今では自動車メーカーによる調達も進められつつある。
電池材料メーカーによる欧州進出が増えている点が注目される。EVは各地域で生産されるため、EVの普及により北米や欧州などでのLIB需要の増加を予想している。特に中国に次ぐEV需要が期待される欧州では韓国電池メーカーや現地の欧州メーカー、一部中国電池メーカーが生産能力強化を進めており、これに伴う材料メーカーの欧州拠点の新設が検討され、欧州における電池・電池材料の地産地消が進んでいくとみている。
中国・上海蔚来汽車 コト売りビジネス展開
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NIOのEV「ES8」に脚光
東京ビッグサイトで7月に開催された「TECHNO―FRONTIER2022」で、中国EVメーカー上海蔚来汽車(NIO)のEV「ES8」が注目を集めた。
同展主催の日本能率協会によると、NIOは高い自動運転技術や高級モデルをそろえるなどテスラの中国版と呼ばれている。LIB交換のサービスを提供することで、モノ売りだけでなコト売りのビジネス展開が大きな特徴。
ES8(電池未搭載)の現地価格は日本円で約600万円。「NIOパイロット」と呼ぶ自社開発した運転支援機能を搭載し、ファームウェアの無線更新をサポートする。
全長5・022メートル、全幅1・962メートル、ホイールベース3・01メートルで、オールアルミニウムボディー。最高時速は200キロメートルを実現し、最大7人が乗車できる。充電走行距離は最大580キロメートル。LIBは交換式で、交換時間は約15分。同協会によると中国には1011拠点の交換ステーションが設けられ、25年までに4000拠点開設を予定しているという。