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安全機能の強化、自動化モデルの拡充進む
中小もFCフォークを 愛知県普及モデル事業
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簡易型水素充填装置を用いて水素を供給
日本産業車両協会の調べによると、2021年のフォークリフト国内販売台数に占めるバッテリー式の割合は62%。ガソリンエンジン式が16%、ディーゼルエンジン式が22%だった。バッテリー式の比率は1991年が31%、2001年45%、11年56%で、この間、フォークリフトの動力はバッテリー式へのシフト、電動化がトレンドとして続いている。バッテリー式は排ガスが出ず、音も静かで、工場や倉庫、物流施設など建屋内での作業が多い現場で好まれる。
とはいえ、24時間稼働する物流施設などのユーザーにとっては、車両の運用が停止する充電時間はできるだけ短くしたい。そうした声を受け、鉛バッテリーよりも容量の大きいリチウムイオン・バッテリー採用モデルも増えてきている。
リチウムイオン・バッテリーを急速充電下としても、満充電に1時間は必要だ。とにかく少しでも稼働時間を増やしたいヘビーユーザーには、非常に短時間で燃料を充填できる燃料電池(FC)式のフォークリフトのメリットは大きな魅力だ。
FCフォークは走行時にCO2を排出しないといった高い環境性能、通常のバッテリーフォークよりもはるかに長い連続稼働時間、燃料(水素)充填が短時間で可能など、運用面でのメリットが大きい。一方、動力のFCユニットが高価なこと、運用に不可欠な水素充填設備の整備に多額の資金がかかることがFCフォーク導入のハードルを高くしている。
水素利活用拡大に取り組む愛知県はFCフォークの中小企業への普及を図るためのモデル実証事業に取り組んでいる。20年度に始まり、最終年度となる今年の実証事業は7月11日から8月5日までの約1カ月行われた。充填装置の開発は鈴木商館が行った。
20年度は簡易型水素充填装置と充填用水素(19・6メガパスカル水素カードル)を定期的に配送し、FCフォークに水素を充填したが、使用した設備環境ではFCフォーク内に満タン充填することができなかった。
21年度は簡易型水素充填装置と充填用水素(45メガパスカル水素カードル)を定期的に配送。簡易型水素充填装置と充填用水素を別々に配送することで配送コスト増により水素供給価格が高くなるとともに、FCフォークへの水素供給まで時間を要する課題が認識された。
今年度は水素のストック機能と供給機能が一体となった簡易型水素充填装置で充填用水素を定期的に配送し、FCフォークに充填する方式とした。
3カ年にわたる実証によって、可搬型水素充填装置などによる水素配送を行うことで、水素充填施設を所有していない企業でもFCフォークを運用できるモデルを確立できた。ただし、当該モデルの普及にはFCフォーク運用場所の近隣の水素ステーションを活用し、可搬型水素充填装置に水素を充填するなど、さらなる配送コストの低減が必要だ。
事業を担当した愛知県産業科学技術課では「今後、導入課題となっている水素充填に関する問題の解決に取り組むとともに、これまでの実証の結果やFCフォークをはじめとしたFC産業車両についての普及啓発に取り組んでいきたい」としている。
ルール守り作業徹底
フォークリフトは物流施設での荷役作業や工場の受け入れ・出荷に欠かせない産業車両だ。重量物を持ち上げる荷役能力、自由に移動できる機動性がフォークリフトの特徴だが、それはつまり車体と貨物を合計した重量物が人のそばで動いているということでもある。一瞬の不注意、誤った使い方が大きな事故につながりかねない。
21年にはフォークリフトが関係する労働災害で2028人の死傷者が発生し、うち21人が命を落としている。死亡者数は20年の31人からは減少したが、死傷者数は20年の1989人から増加した。
事故原因は運転操作ミスや安全確認不足などとともに、人の昇降やけん引など禁止事項である「用途外使用」による事故が後を絶たない。ユーザーにはよりいっそうの安全意識の向上が求められている。そこで、フォークリフトが動くエリアと人が動くエリアをできる限り分離(車歩分離)して作業をする・させること、フォークリフトが走行する道順や注意ポイントを記した運行マップを作製してルール通りに作業をする・させることが重要となる。
車両メーカーとしても安全機能の強化、安全支援の機器・システムの提供や、講習会開催などを通じて、ユーザーの安全向上を支援している。
また、メーカー団体である日本産業車両協会でも安全啓発への取り組みを強化するため、21年度から全国安全週間である7月第1週を「フォークリフト安全週間」とし、フォークリフトの事故防止、安全作業の徹底について情報発信を実施している。今年は「フォークリフト安全週間」の中核行事「フォークリフト安全の日」を7月4日に開催し、労働災害発生状況の解説や安全向上に向けた取り組み紹介などが行われた。
走行経路を自律生成
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豊田自動織機が開発した、トラック荷役を無人化するAI搭載自動運転フォークリフト
物流の現場では労働力不足が年々深刻化している。その一方でネット通販に象徴されるeコマース市場の拡大による多頻度発送、極端には24時間対応のニーズが高まっており、物流現場の効率化・自動化はこれまで以上に強く迫られている。構内物流の中心的役割を担うフォークリフトについても、自動化・無人化への期待は大きい。
豊田自動織機は人工知能(AI)でトラックや積荷の位置・姿勢を自動で認識し、自律的に走行経路を生成して荷役作業を行う自動運転フォークリフトを開発した。これにより、従来の定位置荷役に加え、トラックの停車位置や積荷の姿勢が一定でない状況下においても、荷役作業の自動化が可能となる。先月開催された国際物流総合展2022で「トラック荷役対応 自動運転フォークリフト」として発表した。
同製品は、トラック位置の検出に、レーザー光を照射して対象物までの距離を正確に測定するセンサー「3DーLiDAR」を使用。また、ガイドレスでの自動運転に加え、画像認識・ディープラーニングを活用してマーカーなどの目印を不要としたパレット位置・姿勢検出技術や、パレットまでのアプローチ走行経路の自動生成方式を採用している。有人作業と比較してこれまで約5倍を要していた作業時間を約2倍にまで短縮できた。
トラックの荷役作業において主に使用されるフォークリフトはカウンタータイプだが、狭小な作業現場への導入ニーズも高いことから、リーチタイプにもトラック荷役機能を付与することで、機種展開の拡大を図る。