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LIBからリチウム回収
住友鉱山・関東電化が技術化
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回収されたネオジム磁石(泰和電気工業提供)
金属リサイクルをめぐっては、前段階での破砕、選別・分別や回収するための製錬工程などが伴う。製錬は熱によって溶融・揮発させたり、水溶液で対象となる金属を溶解し、その溶液から抽出したりする乾式・湿式製錬、比重や磁性の差を利用するものなどの方法があり、目的に応じて各種の手法が組み合わせて行われる。
リサイクルでは特に電気自動車(EV)など電動車の使用済みリチウムイオン電池(LIB)から有用金属を回収する取り組みが進む。
脱炭素社会に向けて、増大するEV需要に応える資源供給へのリスク低減が課題となっているためだ。今後、使用済みLIBの大量廃棄が予想される活用策とも重なる。
住友金属鉱山は1月、関東電化工業との共同開発で使用済みLIBからリチウムを電池材料として再資源化する水平リサイクル技術を確立したと発表した。住友金属鉱山の二次電池リサイクルプロセスで発生するリチウム含有スラグを、関東電化工業が湿式精錬法を使ってLIBに再利用できる高純度リチウム化合物として再資源化する。
両社は2018年から共同開発を開始。関東電化工業の水島工場(岡山県倉敷市)でベンチスケールでの試験を進め、電池材料として再生可能なレベルの高純度リチウム化合物の精製に成功した。リサイクルされた高純度リチウム化合物は、関東電化工業で生産する「六フッ化リン酸リチウム」用途や、住友金属鉱山が生産するLIB用正極材原料の炭酸リチウム、水酸化リチウムに使用する予定。
また、使用済みLIBからのニッケルやコバルトの回収では、酸化や抽出などの方法とは別に、大学研究機関で処理工程を減らして省エネルギー対応の回収方法も進む。
廃製品の解体・選別自動化
レアメタルの国内循環を下支えするには、不要になったパソコンや携帯電話、小型家電などの廃製品からの再利用が指摘されて久しい。これについては金属リサイクルの高度化と省人化を両立する装置開発の取り組みが研究機関や企業が連携して進められている。
リサイクルのコスト高要因でもある、手作業に頼る廃製品の解体、選別などの作業を容易にする自動化技術を開発するもの。自動化により、作業の効率化、処理速度の向上を目指す。廃製品の形状などの特徴を複数の高解像センサーで検知し、製品情報と照合・解析して製品の種類ごとに選別したり、廃製品の筐体だけを破砕したりする機械開発にもあたる。 ただ、こうした技術開発とともに、廃製品を効率的に集める回収方法も必要だ。
東京都は7月、パソコンなどの使用済み小型電子機器の安全性の高いリサイクルを推進する「レアメタル緊急回収プロジェクト促進事業」を公募した。最近の世界情勢からレアメタルの供給不足への懸念も背景にある。特に使用済みパソコン回収を促すのが狙い。
同事業の実施者を近く選定し、具体的に進める。使用済みパソコンの回収促進には、記録された情報流出への懸念かネックとなっている。このため都は、事業の実施者が排出者(事業者対象)の依頼に応じて行うパソコンのデータ消去などの経費を負担する。また、排出者からの依頼に応じてデータ消去、または物理的なパソコン破砕の証明書発行も実施者に定めている。
社会に貢献するレアメタルリサイクル。技術の進展と効率的なシステム構築には、回収にあたる事業者のニーズに沿う国などの施策支援も欠かせない。
国際情勢で価格乱高下
レアメタルはニッケルやクロム、リチウム、コバルト、タングステンなどのほか、レアアース(ネオジム、ジスプロシウムなどの希土類)を含む31鉱種を指す。
ロシアは偏在するレアメタルの主要産出国で、ガソリン車の排ガス浄化装置の触媒などに使われるパラジウムでは、供給量で世界の約4割を占める。ウクライナ侵攻によって、パラジウムのロシアからの供給懸念が強まり、一時的に国際価格が急騰した。
これに影響してニッケルなども高騰したものの、中国での新型コロナウイルスの再拡大と、ゼロコロナ政策に伴う都市封鎖から下落傾向に。需給見通しの難しさから国際価格は乱高下した。