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半導体産業は継続した需要増を背景に、設備投資が活発化
効率運転、エネ消費抑える
クリーンルームは高い清浄度の空間を維持するため、温度・湿度を管理し、不良品の原因となる浮遊微小粒子、分子などを捕獲・除去する。高い清浄空間を継続して維持するために、温度や湿度、清浄度を管理する空調システム、熱源機器、塵やホコリを侵入させないHEPAやULPAフィルターなど多くの設備機器で構成されており、消費エネルギーは大きい。
室内の空気を大量に換気(循環)する過程で、求めるクリーンな空間(エリア)が大きくなれば送風に必要な電力も大きくなるため、汚染物質を効率的に排除しつつエネルギーの消費抑制が求められている。各社は要所要所の制御に工夫を凝らして空調設備の効率的な運転を技術力で支えている。
クラスに合わせ清浄度を工夫
空間の清浄度は国際標準化機構規格(ISO)などでクラス分けされている。ISOではクラス1から9まで分類され、クラス数が小さいほうが清浄度が高い。
研究開発や製造現場では業種や作業の工程ごとに清浄度を満たすように制御する必要があり、やみくもに高度な清浄を求めることはない。汚染物質を排除して規定のレベルの清浄度になるように、効果的な排出とエネルギー消費抑制の両立だけでなく、必要に応じてガスや温度、湿度、室内の圧力、静電気、電磁波、微振動などの各環境条件も制御する。要所要所の制御に工夫を凝らし、空調設備の運転効率化やランニングコスト低減を図っている。
半導体デバイスの工程の場合、ウエハーが大型化するに伴って、製造装置や生産ラインも大型化してきた。ウエハー周辺の環境の粒子やガス汚染に対する清浄度要求が高まる。
ウエハーの搬送容器や移動機周辺については高い清浄度を維持しつつ、クリーンルーム全体の清浄度を緩めることで、清浄度と省エネルギー・低コストの要求に応えている。
一方、クリーンルームが大型化することで稼働エネルギーも増大する。ミニエンバイロメント(ミニエン)方式を活用し、必要とされるスペースだけを高度に清浄化する。
ウエハー大型化→ルームも大型化
また食品や医薬品のクリーンルームでは、生物微粒子や非生物微粒子の量を制御するほか、細菌がほかのものを経由して感染する交差感染(クロスコンタミネーション)などを防止する。
こうした中、岩谷産業は兵庫県尼崎市中央研究所に「再生医療・バイオ研究開発拠点」を開設した。再生医療の製品を製造する施設と同等の清浄度があるクリーンルームで細胞培養・凍結・保管・輸送といった一連の工程を再現し、分析・評価できる。
半導体ニーズ・高水準つ木菟
クリーンルーム市場をけん引する産業の一つである半導体は、デバイスや製造装置など継続して高い水準にある。SEMIによる世界半導体製造装置の2021年販売額は、20年比44.7%増の1030億ドルとなり過去最高を更新した。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)は日本の半導体市場における22年度の製造装置販売額を前年度見込み比34.1%増の1兆1400億円、23年度を1兆5500億円と予想している。
第5世代通信(5G)によるハイエンドスマートフォンの高まり、米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ11」搭載パソコンとゲーミング需要を背景に、中央演算処理装置(CPU)や画像処理プロセッサー(GPU)の高度化、メモリーの高容量化の進展を見込んでいる。
こうした中、ルネサスエレクトロニクスは14年10月に閉鎖した山梨県甲斐市の甲府工場に900億円規模の設備投資を行い、300ミリメートルウエハー対応のパワー半導体生産ラインとして24年に稼働再開させることを目指す。
キオクシアは北上工場(岩手県北上市)で4月に第2製造棟(K2棟)の建設を始めると3月23日に発表した。3次元NANDフラッシュメモリー「BiCS FLASH(ビックスフラッシュ)」の生産を増強する。完成は23年を予定。
K2棟は第1製造棟(K1棟)の東側の土地に建設する。地震の揺れを吸収する免震構造を採用。最新の省エネ製造設備を導入するほか、再生可能エネルギーの利用など環境面も重視する。
また応用電機(京都市左京区)は約10億円を投じ、半導体検査装置を組み立てる新棟を熊本県菊池市の熊本工場に建設する。23年2月の稼働を予定しており、2階建て新棟の延べ床面積は2871平方メートル。1階はクリーンルームとホイスト式クレーンを導入し、大型装置に対応できる体制を構築する。