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サーボモーター用減速機の開発動向
高度な制御に高精度対応
減速機とは、歯車などを組み合わせることでモーターなどから入力される回転速度を減速させる機構を持つ機械である。減速させる対価として、減速比に比例する大きな出力トルクを得ることができる。サーボモーターを筆頭に自在に回転速度を制御できるモーターが普及した今でも、省スペースで安定的に高トルクを得るためには減速機がなくてはならない。
減速機にはさまざまな種類があり、用途に応じて使い分けがされている。そして高度な制御が可能なサーボモーターには、必然的に高精度な減速機が要求される。サーボモーター用減速機として、例えばロボットの主要部品として採用される減速機は主に3種。「遊星歯車減速機」「波動歯車減速機」「内接式遊星歯車減速機」があり、それぞれに適材適所がある。
その中で、波動歯車減速機は非常に薄い歯車を積極的に弾性変形させることで広範囲での歯車のかみ合いを実現、軽薄短小に関わらず高出力を得ることができる。この特徴は垂直多関節ロボットや水平多関節ロボット向けになくてはならない。ただその独特な機構・形状ゆえに製造が難しく、量産供給が可能なメーカーは世界でも限られている。
波動歯車減速機開発に力
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写真1 波動歯車減速機 FLEXWAVE
日本電産シンポは総合減速機メーカーとして、幅広いタイプの高精度減速機を取りそろえている。そして現在、最も注力しているのが前述の波動歯車減速機「FLEXWAVE」(写真1)である。
国内工場(長野県上田市)とフィリピン工場(スービック)2拠点にて、それぞれ同じ製造・検査工程を備える。加えて積極的な設備投資を行うことで、「安定供給」「短納期」、そして「低価格」を実現している。特に「安定供給」に対しては、分散生産が可能な体制を構築することが事業継続計画(BCP)対策としても重要と判断している。
また当社はさまざまな製品分野のグループ会社を持つことも強みである。特に2021年8月以降に仲間入りした減速機用部品の加工になくてはならない工作機械メーカー2社(日本電産マシンツールおよびOKK)とは、品質・性能向上や新製品開発推進のために日々連携を深めている。今後の展開に期待していただきたい。
以下、一部ではあるが現在開発中のFLEXWAVEの新製品を紹介する。
小型多関節ロボ用品揃え
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写真2 FLEXWAVE 大型100枠の歯車(右は小型35枠の歯車) -
写真3 ギアヘッド型FLEXWAVE
産業用ロボットの普及に伴い、ロボットメーカーにはこれまで以上にピンポイントの機能やサイズのラインアップ拡充が求められている。大は小を兼ねるという考えでは市場の細かなニーズを満たさなくなる。
この流れに対応するため、当社は既存ラインアップより波動歯車減速機FLEXWAVEの大型サイズを開発(写真2)、22年度中には量産販売を開始する。これで小型多関節ロボットに要求されるサイズの波動歯車減速機のラインアップがそろうことになる。
当社はサーボモーター用小型精密減速機の最大手メーカーである。その主力製品である「ABLE減速機」(小型遊星歯車減速機)は短納期供給を実現するため、各種寸法のモーターが容易に取り付けられる入力構造を採用、必要部品を在庫している。
この構造・部品をFLEXWAVEへ展開する(写真3)。減速機入力部周辺の専用設計を不要にすることで、ロボット用途に限らず小型で高精度・高減速比な減速機が必要なユーザーの要求に短納期で対応していく。22年夏には量産販売を開始。引き合い状況やさらなるご意見・ご要望をくみ取り、ABLE減速機のような用途に合わせた出力形状の拡充も検討する。
製造業の自動化の流れにけん引され、サーボモーター用減速機の市場は今後も確実に拡大していく。既に多くのロボットや産業機器に採用をいただいている当社減速機ではあるが、たゆまぬ改善と緩めることなき新製品開発への投資により、この市場の発展に貢献し続けることを約束する。
【執筆者】日本電産シンポ 減速機カンパニー開発第二部 重田 洋志