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防災体験学習ツアー体験記 そなエリア東京
「72時間」・・・生存力学ぶ
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小型タブレットを持ってツアーを進む。タブレットに表示される設問は、おおよそ小学4年生以上を想定 -
入り口に集まるツアー参加者。自分の「生存率」を上げるために、災害時の対応力・知識を深めていくのが、ツアーの狙いだ。
東京・有明の「東京臨海広域防災公園」。ここは首都圏での大規模災害発生時に国や自治体などの地震対策本部が設置されるように整備された。その一角にある「そなエリア東京」は、首都直下型地震が発生した時、我々はどう行動し、安全を確保しなければならないかを学べる防災体験学習施設(入館無料)だ。
国や自治体が被害状況を把握し、支援態勢を整え、人命救助を最優先して動くのが地震発生からおよそ72時間。この3日間、命に別状がない被災者は自力で避難し、自分のおかれた状況を正確に把握した上で、困難に対処しながら生き残らなければならない。「そなエリア東京」ではM7・3、最大震度7の首都直下型地震が発生した想定で、地震発生時の行動や避難までの知識・対応力を学ぶ体験学習ツアーを、随時実施している。生き残る力を身につけるために、8月下旬、ツアーに参加した。
ツアー参加者には一人1台、入り口でタブレットが配布される。表示言語や「自宅周辺/勤務地」など被災場所のシチュエーション設定、係員の説明が終わったら、いよいよエレベーターに乗り込む。
季節は冬、日没ごろ。地上10階建てのビルにある映画館で映画を見終わり、帰るためにエレベーターに乗り込んだところで地震が発生したーという想定でツアーはスタートする。
地震発生を知らせるビルアナウンスを聞きながら、ビルを脱出し屋外に出る。停電のために薄暗く、ビルや家屋が倒壊し、火災が発生している街中が精巧に再現されたジオラマが広がる。屋外の大型デジタルサイネージには緊急速報が繰り返し流され、がれきから助けを求める声も聞こえてくる。切れた電線からは、ときおり火花が散る。巨大地震が都市を襲うとはこういうことかーと、あまりの再現性に身がすくんだ。
がれきと化した街中を抜けて避難所に向かう中で、タブレット上にはさまざまな設問やアニメーションが表示される。地面の液状化現象や建物の耐震基準、トイレに関わる設問に答えながら、高い「生存率」を目指していくのがツアーの趣旨だ。
なお、首都南部を震源とした直下型地震が発生した場合、エレベーター内に閉じ込められる人は約1万7400人、重傷者を含む負傷者は約14万7000人、帰宅困難者は約800万人、そして死者数は約2万3000人と想定されている(それぞれ最大想定数)。
自宅でも“その日”に備え
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震災直後の街中が再現されている。倒壊したビル、切れた電線、飛び散ったガラスなど・・・とても危険だ。
今回、勤務地で被災したと想定した上でツアーに参加したが、自宅で被災する可能性もある。特に近年では避難所ではなく、住み慣れた自宅で避難生活を送れるよう、自宅のレジリエンス性能向上を高めるケースも増えている。耐震工事などの大がかりな防災対策ばかりでなく、家具を固定したり、どういった非常食をそろえておくと良いかなど、細かい防災対策も肝心だ。
電気・ガス・上下水道の復旧遅れに対処するために、飲用水を確保するのはもちろん、火や電気を使わずに調理できる食品を常時ストックしておくことも大切だ。かつては非常食と言えば乾パンなどの缶詰食品が主だったが、今はレトルトパウチや缶入りのパン・スイーツなども非常食として流通している。食べ慣れたレトルト食品を災害時も見据えてストックし、日常で使用しながら消費期限を管理していく「ローリングストック」という方法も注目されている。長引く避難生活を乗り切るために非常食はバラエティー豊富に取りそろえたい。
また災害時、ケアが疎かになりがちなのが、口腔(こうくう)内。清潔な水を手に入れにくい避難生活では歯磨きなどへの気配りが手薄になりがちだ。しかし、口腔内の健康は身体の健康にも影響し、インフルエンザや肺炎などの感染症にかかりやすくなる。災害時は免疫力が落ちる上、特に集団生活となる避難所での感染症対策は必須だ。避難持ち出し袋には、歯ブラシや液体ハミガキなども用意しておきたい。
複数のプレートが接する地理的要因のため、地震頻発国である日本。特に世界で発生するM6以上の地震のうち、約2割が日本で発生している。きょうは防災の日。必ずやってくるその日に向けて、準備を整える日としたい。