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新薬を患者のもとへ
注目される医薬品
日本ではがんなど16種類の特定疾病のほかに、指定難病は約333あり、指定外の疾病も数多くある。武田薬品工業の公表データによると、患者数が少なく発症機序などが判明していない希少疾患は約7000種類存在し、患者数は世界全体で3億5000万人と推計されている。希少疾患の95%はいまだ治療薬が存在しない。2015年の難病法による医療費助成制度によって、希少疾患治療薬(オーファンドラッグ)の開発が推進され、製薬企業やバイオベンチャーの多くが開発に注力している。
製薬・バイオVB 開発推進
協和キリンが開発した、遺伝性くる病骨軟化症治療薬「クリースビータ」(一般名ブロスマブ)も希少疾患薬の一つだ。遺伝性骨疾患のX染色体連鎖性低リン血症(XLH)を治療する。XLHは遺伝的な原因で体内のリンが尿中に過剰に排せつされて低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患。小児患者では骨疾患を引き起こし下肢の変形や低身長が多くみられ、成人患者では骨折のリスクが高くなる。
18年に欧州委員会(EC)と米食品医薬品局(FDA)、カナダ保健省に承認され、日本では19年に承認された。20年には米国で腫瘍性骨軟化症(TIO)の追加承認も取得。TIOも骨の軟化や脆弱(ぜいじゃく)化を生じる腫瘍が発症する希少疾患だ。
米国での販売は米バイオ医薬品企業のウルトラジェニクス・ファーマシューティカルが行っているが、23年には協和キリンが引き継ぐ予定で、販売体制の構築を急ぐ。欧州でも発売されているが未発売の国もあり、販売国拡大に取り組んでいる。協和キリンは「アンメットメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)を重視した新薬開発を今後も進めていく」考えだ。
中外製薬の「ヘムライブラ」(一般名エミシズマブ遺伝子組み換え)も希少疾患薬だ。血液凝固第VIII因子に対するインヒビター(中和抗体)保有の血友病A治療薬として、18年に国内承認を取得している。米国では17年、欧州では18年に承認を取得している。
血友病Aは血液凝固第VIII因子の先天的欠損や、機能異常によって重篤な出血をきたす疾患。ヘムライブラの臨床試験段階では、インヒビター(中和抗体)を保有する血友病A患者に対して出血率の低下が認められた。
ヘムライブラが登場するまでは血友病A患者には定期的に第VIII因子製剤を静脈注射で補充して、出血頻度を減らす治療が行われてきた。だが頻回の静注は患者や家族の負担も大きく、一部の患者には中和抗体が生じて、第VIII因子製剤が効かなくなる場合があった。ヘムライブラは週一回の皮下注射で済み、患者や家族が抱える負担などの課題を解決する。
原発不明がん治療 オプジーボ 日本で承認
がんの治療として最近注目されているのが、免疫によってがん細胞を攻撃するがん免疫療法。現在、がん免疫療法で使われる治療薬のうち、効果や安全性が証明され承認されているものは、免疫の働きにブレーキがかかることを防ぐ「免疫チェックポイント阻害薬」が中心となっている。がん細胞からの影響を受けて免疫を抑制する「免疫チェックポイント分子」と結合し、免疫の攻撃力を保つ働きをする。
その代表が2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞テーマとなった、免疫細胞のT細胞上にある免疫チェックポイント分子「PDー1」を標的とする「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)。小野薬品工業がブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)と開発した。PDー1と結合する免疫チェックポイント阻害薬にはMSDの「キイトルーダ」(一般名ペムブロリズマブ)もある。
BMSのヤーボイ(一般名イピリムマブ)はT細胞上の別の免疫チェックポイント分子「CTLAー4」と結合し、免疫のブレーキ作用を弱める。小野薬品とBMSの連携により、オプジーボと一緒に投与する併用療法も進められている。単独では効果が十分でない患者も併用療法では効果がみられる場合がある。
さらに、がん細胞などに発現し、PDー1と複合体を形成する「PDーL1」を標的とする免疫チェックポイント阻害薬もある。中外製薬の「テセントリク」(一般名アテゾリズマブ)やアストラゼネカの「イミフィンジ」(一般名デュルバルマブ)、メルクバイオファーマの「バベンチオ」(一般名アベルマブ)が当てはまる。中外製薬は武田薬品工業と連携し、武田薬品の抗がん剤「カボメティクス」(一般名カボザンチニブリンゴ酸塩)との併用療法の開発を進めている。
がんは最初に発生した原発巣によって性質が異なるため、がん腫ごとに承認が必要だ。例えば「オプジーボ」は皮膚がんの一種の悪性黒色腫からスタートし、非小細胞肺がんや悪性リンパ腫の一種のホジキンリンパ腫、胃がんなどに順次展開してきた。「テセントリク」であれば肺がんや乳がん、肝がんで承認を取得しているといった具合だ。
その中で注目されるのが、21年12月に原発巣の臓器が特定できない「原発不明がん」に対して、「オプジーボ」が他国に先駆けて日本で承認された点だ。大半が性質に特徴がないため治療法の決定が難しかったが、オプジーボの臨床試験で効果が認められた。
