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特別インタビュー「関西の未来を聞く」① 関西経済連合会 会長 松本 正義氏/ロイヤルホテル社長 蔭山 秀一氏
関西経済の未来/関西経済連合会 会長 松本 正義氏
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関西経済連合会 会長 松本 正義氏
関西経済連合会は1946年の設立以降80年近くも財政問題や環境・エネルギー、企業法制、労働・雇用など多方面にわたって政策提言を行ってきた。大阪・関西万博の誘致でも先導的な役割を果たした。関西の抱える課題解決にリーダーシップを発揮している。最近では企業の情報開示のあり方をめぐり四半期開示の義務づけ廃止に向け論陣を張ってきた。松本正義会長に関西経済の現状や将来展望について聞いた。
―関西の景気についてどうみますか。
「為替や原料・資材高など企業を取り巻く環境は厳しいが、あまり悲観はしていない。関西は歴史的に中国との関わりが深く、中国経済の動向にかなり左右される。(会長を務める)住友電気工業では、中国に多数の工場を有するが総じて悪くない。特に中国の自動車生産台数はざっと2600万台で、580万台が電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)。いずれも好調に推移しており、中国市場はポジティブだと判断している。一方、国内は価格転嫁の進展もあり、中小企業にも追い風が吹いている。加えて賃上げ効果やコロナ禍が一段落したことで消費は回復するだろう。少々気が早いが、今年の国内景気は悪くないだろう」
「インバウンド」量より質重視
-関西経済をけん引してきたインバウンド(訪日外国人)観光が回復基調にあります。
「中国から海外への出国規制の緩和などでかつてのすさまじいにぎわいが回復するはずだ。ただオーバーツーリズムには注意せねばならない。これからのインバウンド観光は量を追い求めるだけでなく質を重視すべきだ」
「このタイミングで関西観光本部が“関西ツーリズムグランドデザイン2025”を発表した。コロナ前の19年に関西を訪れた外国人観光客はざっと1300万人で全国の40%にあたる。そして1兆2000億円を消費してくれた。まだピーク時には及ばないが、今年後半にはコロナ前のペースに戻るのではないか。グランドデザインでは“スモールマスマーケット”や“ストーリーマーケティング”といった考え方を打ち出した。関西の魅力を総花的に発信するのではなく、スモールマーケットに向けて的確にアプローチすることを目指す。さらにコロナ後の行動変容を勘案し、満足度の高い関西旅行を構築する、としている」
―関西の観光は大阪・関西万博との連携も欠かせません。
「万博が起爆剤になるのは間違いない。そこで関西2府8県の官民が一体となった事業展開を図るべきだ。海外からの来場者はざっと350万人と見込んでおり、万博会場だけでなく関西一円に送り出す。このような広域観光は万博のレガシーになろう。外国人観光客は“京都”や“大阪”は知っていても“関西”という言葉にはあまりなじみがないようだ。“関西”という広域観光圏をもっと世界に知ってもらいたい」
-そのための推進策や体制は。
「25年までの3年計画で“万博プラス関西観光推進事業”を展開する。そのために『EXPO2025関西観光推進協議会』を立ち上げる。事務局を関西観光本部に置き、2府8県と政令市、企業や団体、関西広域連合や関経連などで構成する。事業費は補助金などを活用し年間1億円以上の事業を実施する計画だ」
「万博まで2年あまりとなったが、経済界としては一層の機運醸成や前売り券の販売に全力を挙げる。これには民間の知恵が生かせるはずだ」
関西の観光・インバウンドの未来/ロイヤルホテル社長 蔭山 秀一氏
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ロイヤルホテル社長 蔭山 秀一氏
ロイヤルホテルは運営するリーガロイヤルホテル大阪(大阪市北区、RRH大阪)の土地と建物を外資系投資企業に売却することを決めた。関西財界とつながりが深い同ホテルのブランド価値を高め立て直しを図る。2025年開催の大阪・関西万博、29年の開業を目指す統合型リゾート(IR)などを通じ、インバウンド(訪日外国人)に加え海外富裕層を取り込む。蔭山秀一社長に関西経済の成長に合わせたホテル事業の戦略を聞いた。
―RRH大阪の売却を決めた理由は。
「RRH大阪は1973年に建て増しし、50年以上が経過している。そのためどこかのタイミングで建て替える必要があった。だがこの規模での建て替えには2000億円程度かかる。巨額投資のため1社では難しく、別の企業と連携するしかない。将来ぎりぎりまで待つのではなく、早く立て直すほうを選んだ」
―現状でのRRH大阪の課題は何でしょう。
「今まで客室に投資できず客室単価が低いため、ブランド力の低下が課題だった。135億円を投資し改装して客室単価を上げ、一流ホテルを目指す。英インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)の最上位ホテルのブランドを導入し、RRH大阪の価値を向上させる。ロイヤルホテルは大阪では知られているが、海外の人には知られていない。IHGという大手ホテルチェーンに入ることで海外の人から認識してもらえるだろう。25年の万博のタイミングで富裕層向けに1000室の部屋を用意したいと考えている。海外ブランドを取り込み、海外富裕層の窓口となるような大阪・中之島(大阪市北区)のホテルとなりたい」
ブランド価値高め立て直し
―RRH大阪の関西での役割はどうなりますか。
「ロイヤルホテルは大阪に国賓級の外国人を迎えるために造れられた経緯がある。RRH大阪は大阪のための一流ホテルであり続けないといけない。RRH大阪は地元から支援を受けてきた。今回の売却ではロイヤルホテルの名前は残してもらうことを条件にしている。関西財界への役割は変わらない」
―インバウンドに関しての見解はいかがでしょうか。
「中国人観光客は23年秋口には国内に戻ってくるのではないか。今後、万博に向け世界中から人が押し寄せる。アジアの人は3-7日間の滞在で帰ってしまうが、富裕層であれば1カ月間くらい滞在する。万博には海外富裕層が来るかもしれないと期待している」
―関西で海外富裕層を呼び込むために必要なことは何でしょう。
「ストレスを与えないことが重要。複雑な鉄道の乗り換えや英語圏の人々への対応の弱さがある。万博開催までの残り2年間が準備期間として重要だ。関西国際空港や大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港の3空港を整備し海外空港網との接続を良くすることも大切だと思う」
―関西の将来像をどう見ていますか。
「インバウンドは観光客が中心だが、万博ではビジネス客が来る。IRにも期待しており、観光客だけでなく、学術やビジネス系のイベントが大々的に開催されるだろう。こうしたイベントへの誘致を通し、関西の潜在能力を高められる。また関西には観光資源が豊富で、外資系ファンドが注目している。関西はまだ富裕層にはそれほど知られておらず、その伸びしろを前向きに捉えている。関西をスタートアップや医療拠点などで盛り上げ、海外との接点にできるのではないか」
