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工作機械のロボット活用
工作機械のロボット活用
中小企業はじめ、大手企業まで多くの製造現場では、少子高齢化に伴う人手不足が深刻化している。高度な技術・技能を持つ熟練者が引退する一方で、若手人材の確保の難しさに加え、従業員の労働時間外の短縮など人の問題がある。さらに製品ライフサイクルの短縮による多品種少量生産要求、加工物の形状複雑化や加工精度の高度化など今まで以上に外部環境の変化が激しさを増している。そのような生産現場において今日、各企業ではIoT(モノのインターネット)活用やデジタル変革(DX)などによる生産改革、働く人のモチベーション向上を含めた労働環境の見直し、そして新しいモノづくりに向けたスマートファクトリー化への志向など、市場競争力を高める努力を継続されている。
自動化における課題
これらの取り組みに対して生産システムに求められるニーズには、工程間移動や段取り作業時間の削減ができる5軸制御マシニングセンター(MC)や複合加工機の活用と、人作業の代替となるロボット活用が求められている。
この中でも人手不足の深刻さを背景に自動化の取り組みを加速せざるを得ないが、経験がないために設備導入まで踏みきれないことが多い。
次に自動化導入における課題の一例を示す。
①工作機械と操作の仕方が異なるロボット人材を確保できない②自動化設備を設置するスペースがない③システムを安定稼働させるノウハウがない④変化する加工物に合わせて柔軟に対応できるか不安である⑤投資対効果が見込めない、回収計画が組めない―など、さまざまな課題や不安の声がある。
使いやすい自動化
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【写真2】移動式協働ロボット -
【写真1】加工セルとコントローラー「smarTwinCELL」 -
図1 働き方に合わせた「ARMROID」の活用 -
図2 セル工程表
前述した課題に応えるため、工作機械と同じ感覚で操作可能であることを特徴にして、ロボットシステムを開発展開している。
開発したロボットシステムはロボットのプログラム言語などの専門知識を必要とせずに、工作機械と同じ操作感覚で操作ができるシステムである。2018年に発表の「ARMROID」はロボットを工作機械に内包した自動化システム。
22年発表の「smarTwinCELL」は、ロボットセルに必要とされる周辺装置をパッケージ化した自動化システムである。また、複数の工作機械の自動化を可能とする「移動式協働ロボット」を開発した。この3製品は第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)に出展した最新自動化製品であり、詳細を紹介する。
【1】ARMROID
「ARMROID」は横型旋盤「LB3000EXⅡ」または複合加工機「MULTUS B250Ⅱ、B300Ⅱ」の機内に自社開発の4軸ロボットを内蔵した自動化システムである。開発コンセプトは、①内蔵ロボットによる加工サポートと搬送による生産性の向上②単体機とロボット自動化セルの自在変化による労働力不足を支援③ロボット操作の革新―である。
そして従来のロボットセルに比べて、セル全体を安全柵で囲む必要がなく、機械前面に加工対象物(ワーク)ストッカーを設置するだけでよいため、所要床面積が約80%削減できる。ワークストッカーは左右スライド機構を採用し、ストッカーを左側に退避させるだけで、機械オペレーターの作業スペースが確保できる。
昼休みや夜間はロボットによる自動生産を行い、昼間は機械オペレーターが特急品への対応や段取り作業を行うといった使い分けが可能で、その日の生産計画に合わせて柔軟に対応できる。自動化プログラムは対話型ロボットプログラミングツール「ROID Navi」の画面案内に従って段取り情報を入力するだけで、誰でも簡単に作成、実行できる。
【2】加工セル用コントローラー「smarTwinCELL」
ロボットや加工セルの操作経験がない機械オペレーターでも簡単にセル生産立ち上げが可能な自社開発の加工セルコントローラー「smarTwinCELL=写真1」を開発した。
干渉検知機能や手動パルスハンドル操作を加工セルの領域まで進化させ、ワーク取り付け、取り外しのほか、品質チェック、ワーク洗浄やワーク計測などロボットセルに必要な機能群を組み合わせ容易な周辺装置としてパッケージ化した。これにより、生産計画に合わせた品目変更を機械オペレーター自身が素早く柔軟に実施可能となる。
従来ロボットシステムインテグレーター(SIer)へ外部委託していた作業を機械オペレーター自身が容易に行えることで、多品種少量生産でも加工セルを止めることなく高い生産性を維持することができる。現在は自社工場「ドリームサイト」に導入して、現場実証、改良を重ね製品化の準備をしている。次に、主な三つの特徴を述べる。
①加工セルの操作性革新
加工セルの動作および動作順をセル工程表画面で見える化し、専門知識がなくても動作確認できる(図2)。予期しないシステム停止発生時も、開始点を指示するだけで即再開できる。運用段階で多くのオペレーターが直面する、システム停止後の復帰作業を支援する機能や、加工機と同じ感覚でロボットを操作できる手動パルスハンドルも備える。
「smarTwinCELL」でも「ARMROID」で使いやすさを追求し高い評価をいただいている「対話型ロボットプログラミングツール(ROID Navi)」を採用しており、ロボット動作の始点と終点を設定するだけで、ロボットプログラムを容易に作成、実行できる。
②デジタルツイン革新
事務所のパソコン上に加工セルを再現するシミュレーションソフトを提供しており、セル工程動作とロボット動作を事前作成できる。ワーク把持位置の調整など試行錯誤が必要な作業もパソコン上で事前に実施できる。
デジタルツイン活用により品目変更時の作業を事前に進められるため、実機での立ち上げ作業期間を大幅に短縮できる。また、実際に加工した結果を次の加工へフィードバックさせ、最適化を可能とすることで、稼働率や生産性の向上に寄与することができる。
③サイバーセキュリティー
IoT活用による生産改善が求められる一方、ネットワーク経由でのサイバー攻撃に対応する必要がある。サイバーレジリエンスを高める脆弱(ぜいじゃく)性対策と、強固なセキュリティー機能が標準搭載されており、機械自身はもちろん、加工プログラムなどの大切なユーザー資産を守り、工場稼働を止めない配慮をしている。
【3】移動式協働ロボットシステム
工場内の機械は生産量により日や週によって稼働状態が異なるため、機械の繁忙状態に応じて個別に自動化を可能とするシステムとして開発した(写真2)。ワークストッカーと協働ロボットから構成されるユニットを機械前に移動し、ケーブル類を接続するだけで設置が完了する。ガイダンスに従って加工ワーク情報を入力すれば自動生産を開始できる。本システム1台に対し最大10台まで接続が可能である。
最後に
ここでは、多品種少量生産でも高い生産性を実現し、かつ機械オペレーターの使いやすさを追求した自動化システムを紹介した。自動化を推進する上で、経時寸法変化の少ない高精度な工作機械は基本となる。
当社は引き続き知能化技術を進化させ、工作機械を含めた長時間安定生産を可能とする自動化システム実現に向けて今後も取り組んでいく。さらなる省人化、無人化技術の開発、強化を進め、製造現場におけるさまざまな課題に応えられる自動化提案の推進に努めていく。
【執筆者】
オークマ ソリューション&システム技術部
部長 金本 克己
