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コネクター(2024年4月)
コネクターは電気信号や電力などを伝送するために用いられる電子部品で、機器と機器、基板(ボード)と基板、基板と電線(ケーブル)、電線と電線の間を結合する。自動車の電動化を背景にコネクターの需要が高まっている。高速で確実に電気信号を伝えるために、コネクターは高い性能と品質に加え、耐環境性能に優れた堅牢(けんろう)性、利便性などが求められている。
車載―過酷な温度環境に対応 ECU 小型・薄型
コネクターはスマートフォンや基地局、パソコン(PC)、サーバーなどの情報通信機器、工場自動化(FA)機器、自動車・車載、鉄道など多彩な産業・分野で利用される。電気信号や光信号、電力を確実に伝える重要な電子部品の一つ。映像や画像などのデータ量は増加傾向にあり、信号品質の劣化やノイズを発生させることなく、高速で信号を伝送する必要がある。
自動車向けのコネクターは幅広い温度と湿度の対応に加え、粉じんや振動の耐性と堅牢性、電磁環境適合性(EMC)など、厳しい環境対応が求められている。コネクターを基板に実装する時に多少のズレが発生しても嵌合(かんごう)し、車両の振動や衝撃をある程度吸収する。
車載用のフローティングコネクターはこうした課題に応え、自動車特有の過酷な温度環境にも対応している。
自動車・車載関連でのカメラやセンサーなどは電子制御ユニット(ECU)を介し電気信号で伝送されるため、コネクターの品質が求められる。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの電動車(xEV)の普及拡大により、燃費や電費向上などでECUは小型・薄型化も求められている。
また、機能群ごとの複数ECUを統合する統合ECUは、自動運転や先進安全システム(ADAS)など自動車の高度化に欠かせないテクノロジーとして注目されている。
2023年度第3四半期(23年4月―12月)の連結業績では、半導体不足の緩和に伴う自動車・車載市場の回復傾向を背景に、関連事業は堅調な推移を見せた。
日本航空電子工業のコネクター事業は、自動車市場において前年同期比17・0%増の740億600万円となった。
イリソ電子工業のオートモーティブ(車載)市場の売上高は、同12・9%増の354億2900万円となった。車載インフォテインメント分野では継続した海外顧客との取引が拡大。
さらに、車載可能な重要保安部品基準をクリアし、作業性・信頼性を大幅に向上させたフローティングコネクター「Z―Move(ジームーブ)」、高速伝送対応の新製品なども寄与した。
車向け24時間 新工場/2系統を一体化、嵌合簡略化
こうした中、日本航空電子工業はPCやスマートフォンといったICT(情報通信技術)機器向けに販売実績があるコネクターを車載向けとして発売した。情報や娯楽を提供するインフォテインメントシステムが車内に普及する中、小型・高速伝送を特徴とするICT機器向けコネクターへの需要が増えることを見据えた。
イリソ電子工業はxEVに使用されるインバーター、コンバーター向けに2種類のフレキシブルプリント基板(FPC)コネクターの新製品を量産開始。スライダーやカバーの開閉動作を排し、挿入と同時にロックする「Auto I―Lock(オートアイロック」構造に、樹脂レバーと2点接点を採用。高耐熱性を向上させた。確実な嵌合が実現するため、ロボットによる自動組み立てが容易。
ドイツの車載規格の一つFAKRA対応や、極数4ピンタイプ、カメラ向けなどのコネクターをそろえるホシデンは、高速信号伝送系統と電源ライン系統を一体化した車載用の同軸と2ピン複合コネクターを開発。
2系統を一つのコネクターに集約することで、基板におけるコネクター専有面積の削減やコネクター嵌合作業の簡略化が可能となる。
毎秒6ギガの高速信号伝送に対応し、優れた高周波特性と高いEMC特性を持つ。次世代の車載用パラレル信号とシリアル信号変換のサーデス(SER/DES)にも対応する。
ケルは毎秒8ギガビット相当の高速シリアル伝送を実現したフローティングコネクターなど多彩なラインアップと技術力、ユーザーからの高い信頼性を生かし、自動車・車載市場を深耕する。
日本端子は自動車向け製品を中心に製品の開発から量産まで一貫して行う24時間稼働の量産工場として、新たに神奈川県南足柄市に新たに設立すると4月に発表した。敷地面積は約41万2000平方メートルで、25年秋の稼働を予定している。
富士キメラが2月に発表した「車載伝送システムの世界市場」によると、自動運転技術やコックピットのデジタル化の進展により、35年には22年比2・4倍となる95兆8888億円と予想する。また、富士経済は3月に国内の普通充電器と急速充電器の充電インフラ需要を予測。充電ステーション拡大により、充電用コネクターは35年には同3・2倍の12万6100個を見込んでいる。
コネクターは自動車や車載に加え、さまざまな産業に欠かせないキーデバイスの一つとして存在感を高めている。自動車の電動化や自動運転など技術革新が加速する中、コネクターメーカー各社は成長製品として、常にユーザー要望に応える技術開発に注力している。
人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA
国内最大級の自動車に関する技術展「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」が、5月22日から24日までの3日間、横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で開催される。
日本航空電子工業やイリソ電子工業、ヒロセ電機、TE Connectivityなどが出展し、自動車・車載に向けて関連コネクターや技術を紹介する。
自動車技術会(JSAE)が主催し、リアル展に先駆けて5月15日から6月5日まで、オンライン展が開催される。
ケルは自動車・車載関連の展示会には初めて出展する。人とくるまのテクノロジー展を通じて、カーナビゲーションやドライブレコーダーなど情報系機器で培った技術力や新製品を、自動車・車載産業に向けて訴求。フローティングコネクターのほか、140度Cの高温と耐振動を両立した開発品など、「高速通信・高耐熱・高振動」を新しいコンセプトに、同社コネクターの採用分野を深掘りする。
このほか日本端子や日本モレックス、本多通信工業、SMKなども出展する。