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気候変動リスクに備え―先進の地域連携BCP
事業継続力強化へガイドライン策定
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川崎市の新庁舎展望台ロビーから臨む川崎市内(多摩川を挟み、対岸は東京都)
事業承継と一体でBCPの作成を支援する川崎市は3月、独自の「地域連携BCPガイドライン」を策定した。温暖化の進行とともに台風や豪雨などの災害はさらに激甚化することが予想され、大規模災害に見舞われれば単独企業の対応には限界がある。そこで、あらかじめ複数の事業者が連携してBCPを策定し、被災した際には復旧などで相互に協力する体制を構築することで事業継続力を強化するのが地域連携BCP。川崎市が取り組むきっかけになったのは、2019年10月の台風19号で深刻な浸水被害を受けた経験だ。
多摩川につながる排水樋管の逆流に端を発した内水氾濫は計約110ヘクタールの浸水被害をもたらした。概算被害額は約285億円。その1カ月前の台風15号を含めると、300以上の事業者がり災。3分の1が製造業だった。
復旧に向けた動きは速かった。地域としての川崎の強みは川崎市、川崎商工会議所、川崎市産業振興財団、川崎信用金庫が事あるごとにタッグを組む4者連携にある。台風19号で被災した際も直後から4者で役割を分担。さらに川崎市は被災経験を教訓として全国に先駆けた防災プラットフォームの構築を推進。そのモデルになったのが、下野毛工業協同組合(川崎市高津区)の取り組みだ。
下野毛工業協同組合 浸水被害教訓に独自サイト開設
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下野毛工業協同組合のBCP対策勉強会。同組合は19年の台風19号で深刻な浸水被害を受けた。この経験を教訓に地域連携BCPに取り組んでいる
浸水被害を受け、復旧に向けてスコップや排水ポンプなどの資材を融通し合った同組合。支え合う大切さを痛感したことで直後から地域連携BCPづくりに着手した。勉強会を重ね、個別の会社で策定した行動計画を持ち寄り、平常時から協力する取り組みと組合の役割を考えた。その一つの手段が、BCP機能を併せ持つように新設した組合のポータルサイトの活用だ。
22年末に完成した同サイトには組合行事など平常時、組合員に向けて発信する機能と並び、防災BCPメニューを設けた。普段から操作に慣れていれば災害時にも戸惑うことなく情報を収集・発信できる。復旧資機材の保有をあらかじめ登録しておく機能も設けた。
平常時からどの会員が復旧資材をどの程度持っているという情報を共有。発災後、被災企業はサイトの安否アンケートに答えて状況と必要な資材を発信。事務局が資材の貸出者と借受者をマッチングする橋渡し役となり、迅速復旧につなげる。
コンクリートで覆われた都市部に豪雨が短時間に降れば、排水機能が追いつかず内水氾濫が起こりやすいとされる。強靱でしなやかな街づくりを目指す川崎市は、同組合の取り組みをモデルの一つとして、他の組合などにも地域連携BCPの導入を呼びかけている。
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