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独自戦略で躍進 化学品商社&物流企業
【執筆】化学産業企画 代表取締役 高橋 英晴 氏
化学産業では化学品の流通を担う化学品商社および物流企業の役割が不可欠なものとなっている。取り扱い品目の多様化やグローバル化に伴い、重要性は一層高まっている。各企業がそれぞれの強みを生かし、独自に打ち出す事業戦略にも注目が集まる。
コラボ開発―化粧品原料
日光ケミカルズはキーコーヒーおよび著名なバリスタでPHILOCOFFEA(フィロコヒア)の粕谷哲代表と連携。機能性オイル「NIKKOL Cafe extract oil UC」と、ナチュラルスクラブ剤「NIKKOL Cafe scrub UC」を発売した。
これら製品は、これまで廃棄されていたコーヒーグラウンズ(抽出後のコーヒー粉)をアップサイクルして化粧品原料として開発された。
「extract oil UC」はコーヒー種子に含まれる油溶性の機能性成分を、オイルで抽出した製品で、美白や抗酸化作用を有する。「scrub UC」はコーヒーグラウンズを、化粧品用スクラブ剤として最適なサイズに解砕した。多孔質構造による臭いの吸着効果を確認しており、洗浄剤に最適。
これらの売り上げの一部は、粕谷代表が長年交流してきたコーヒー生産地や農家への支援活動の活動資金として活用していく。
また、同社は東亞合成と共同開発した水系被膜形成剤「ARON AC―1000」も発売した。化粧品用として最適化されたポリマーエマルションで、耐水性、耐皮脂性、ストレッチ性に優れている。原料モノマーの残存量低減により、基材臭が抑えられている。
メーキャップ製品の耐久性改善や、日焼け止め製品の耐水性向上、化粧水のハリ感の付与などの幅広い用途で提案をしていく。
新規事業を拡大
新ケミカル商事(北九州市小倉区)は2024年8月に設立20周年を迎えるに当たり、本社移転を行った。北九州域内をベースにした新規事業拡大を狙い、新中長期計画策定を計画。社会的な課題の解決を通じて、社会とともに成長し、夢の追求と人生を楽しめる「魅力ある会社(企業集団)」の実現を目指している。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた取り組みの一つとして、もみ殻の有効活用を進めている。この事業は「鉄鋼から農業へ、農業から鉄鋼へ」をスローガンに、生産者が処理に困っている生のもみ殻を農協を通じて焼きもみにして買い取り、鉄の製造工程に活用するというもの。
取引先の日本製鉄では焼きもみを輸入で調達していたが、サプライチェーン(供給網)の混乱などで調達が不安定となっていた。こうした中、新ケミカル商事では日本製鉄から仕入れた硫安を農業で活用し、そこで発生するもみ殻を鉄の製造に役立てる、この循環システムの構築を進めている。
物流拠点に製造機能
安藤パラケミー(東京都中央区)は、25年の創立200周年を目前に事業活動を活発化させている。21年9月、埼玉県行田市に製造と物流の新拠点として行田事業所を開設し、新たな製造関連サービスを本格化させている。
消毒用アルコール(新指定医薬部外品)のОEM(相手先ブランド生産)受託製造をはじめ、溶剤&溶剤、樹脂&溶剤、粉体&溶剤といったブレンドの受託製造、環境対応型溶剤の開発、ハンセン溶解度パラメーター(HSP)値を利用した洗浄剤や樹脂溶剤の選定など関連サービスは多岐にわたる。
行田事業所は安心・安全をモットーに、省人化操業を重視して設計されている。顧客の多様なニーズに応えるための機能を備えている。
溶剤の配合や攪拌に加え、ドラムや缶など容器への自動充填にも対応する。容器サイズは0・5リットル、1リットル、5リットル、18リットルなど幅広く対応している。
今後の計画としては、西日本地区にも行田事業所と同様の製造物流拠点を設立する予定。数年以内には、東日本・西日本に2拠点を持つことで全国を網羅したネットワークを構築し、納入体制の拡充を図っていく。
総合物流ネット構築
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グローバル化で高まる化学品流通の重要性
22年10月1日に社名変更した東京都千代田区のNRS(旧:日陸)は、グループ全体でブランド統一を推進し、成長市場に焦点を合わせた化学品物流事業を拡大する。
同社は化学品物流の総合企業で、各種温度管理倉庫をはじめ、国内・国際輸送、タンクヤード、国際規格「ISO」準拠の容器リース・販売・運用・管理・危険物実入り保管のほか、フォワーディング(利用運送)事業から海上、空輸事業、内航船、鉄道輸送を手がける。
石油化学から精密化学品、医薬品、半導体原材料、ガス、電池まで幅広い領域での事業を展開し、デジタル変革(DX)推進により、内外顧客への高品質な物流サービスを提供する。
23年8月には九州地区における新たな総合物流拠点として「熊本支店」を開設した。需要拡大が見込まれる半導体原材料に関わる温度管理の必要な化学品や高圧ガスを中心に、総合物流サービスを提供し顧客のサプライチェーンの最適化を支援する。
世界中にNRSグループのネットワークを構築する中、台湾やベトナムに続き、米国アリゾナ州でも拠点整備を加速させている。